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「ザ・モリト」森を守る仕事
島根県 飯石森林組合 田口豊さん
新川達也さん

加霖部明組合長は、職員時代を含め森林組合40年のキャリアだ
 「下草刈りや枝打ちをすると、散髪したようにスカッとして木たちも気持ち良さそう。仕事しただけ結果が見えるのがいい」「間伐作業も快感。枝が重なって真っ暗だった林が明るくなり、全体がイキイキしてくる。すっと差し込む木漏れ日、あれいいよね」
 田口豊さん(48)と新川達也さん(30)は、顔を輝かせながら林業の魅力を語る。2人は、Iターンで飯石森林組合(本所:島根県雲南市掛合町)に就職したザ・モリトである。ザ・モリトとは、島根県における森林整備従業員の愛称。「森を守る人」という意味が込められている。
 飯石森林組合は、1997年、ザ・モリトの全国募集を始めた。96年時点でザ・モリト数は108人。平均年齢55・2歳と高齢化が進み、定年(65歳)による自然減だけで、2008年には30人になる。管理面積4万5千ヘクタールの森林を手入れするには、60〜70人のザ・モリトを確保する必要がある。しかし、「3K」の職業として若者の林業離れは著しく、地元の雇用だけに頼るのは困難と判断したのだ。応募者は年々増え、現在62人のザ・モリトのうち11人がIターンである。
 98年就業の田口さんは全国募集の第一期生、新川さんは翌99年の就業と、Iターン仲間の中では先輩格だ。2人とも、飯石森林組合に勤務する前は大阪で働いていた。そして、「都会は窮屈。山で働きたくて、ずっと職を探していた」。応募に当たり、既に家族(妻と3人の子供)を抱えていた田口さんは、「交通の便や病院、学校、買い物など生活に必要な条件は事前に調べた」と言う。
 飯石森林組合が管理する森林は、中国山脈の真っただ中。険しい山が多く、作業は決して楽ではない。「ハードだと覚悟はしていたが、夏の暑さは予想以上。血液が沸騰しそうだし、虫との闘いも壮絶(笑)」と田口さんが言えば、「冬もきつい。辺り一面雪で真っ白で、ここは天国かと錯覚するくらい」と新川さん。「でも、そうした季節感を感じられるのがこの仕事の良さ」と言葉を継ぐ。

作業を終え、ほっと一息。「いま僕らが間伐している木は、先代たちが植えたものなんだよね」と二人は感慨深げに語りあう
 安価な輸入材に押され、国内の林業が苦境に追い込まれて久しい。建築様式の変化で、柱など構造用材としての用途そのものも急激に減少している。厳しい状況の中で、飯石森林組合は地元の建材ニーズを掘り起こし、森林管理の他、竹林整備や家屋周辺の草刈りなど、地域の環境整備にも力を入れている。「森林組合の仕事は、木を育てるだけでなく、就労の場を作り、地域に貢献することも重要な役目。U・Iターン雇用も定住が条件で、採用の際には、集落活動にも積極的に参加し、人との輪が保てるかなど人柄を重視した」と加霖部明組合長(66)は言う。
 急斜面に這いつくばり、苗木を植え、草刈りや枝打ち、冬には雪起こしなど四季折々に手を入れ、間伐し、健康な森林づくりを担うザ・モリトは、地球温暖化の救世主としても注目される。加霖部組合長は、「彼らの存在は、地元の若者を刺激し、林業ばかりでなく集落にも活力をもたらしている。林業は何代にもわたる息の長い仕事。若者がここに住み、将来に夢を描けるよう、飯石森林組合も更に支援していきたい」と話している。
島根県が出資する財団法人ふるさと島根定住財団では、U・Iターンと県内定住を支援しており、定住や求人に関する情報の提供、相談を総合的に行っている。林業を始め、農業、漁業、伝統工芸などの産業体験も実施している。
【No.1(2006年春号)掲載】
 
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