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農業OLから肉用牛農家の嫁に
鹿児島県山川町 今村加代子さん

肉用牛農家の今村家(左から義則さん、一也さん、加代子さん)
 「結構高値だったんでほっとしてます」。今村加代子さん(29)の表情が緩んだ。訪問した日の午前中は子牛のセリ。昨日まで家族の一員とも言える子牛を手放す寂しさと、高く売れた喜びが入り交じる。
 加代子さんは2005年9月に鹿児島県山川町の今村一也さん(28)と結婚し、義父・義則さん(60)と3人で肉用牛経営を行っている。砂蒸し温泉で有名な指宿市の隣町で、小高い山の中に50頭まで飼育出来る畜舎がある。

畜産会社のOLに
 宮崎県延岡市のサラリーマン家庭で育った加代子さん。当時流行りだったバイオテクノロジーに興味を持ち宮崎大学農学部畜産学科に進学。大学院を卒業後、鹿児島県の農事組合法人・南州農場に就職した。南州農場は、母豚3200頭、母牛430頭を飼育し、売上高は45億円に上る、鹿児島県はもとより全国でも有数の農業法人だ。
 「畜産に携われる仕事に就きたかった。出来れば生産の現場に」。勤務地は宮崎県か鹿児島県に絞り、インターネットで『畜産』と検索エンジンに入力。真っ先に出てきた南州農場の本田信一代表理事に早速連絡し、採用が決まった。
 南州農場では、豚の個体管理のためのICタグ導入の開発業務を任された。BSE(牛海綿状脳症)で畜産業界に激震が走った時代。生産現場ではトレーサビリティ(生産履歴情報)システムの導入が急がれていた。

畜産業と家事を両立

昨日産まれたばかりという子牛と一緒に
 南州農場で3年半勤めた後、大学の同級生で家業を継いだ一也さんと結婚。業界こそ同じながらもOLから一転、畜産農家の嫁の立場となった。
 「結婚式の翌日から畜舎に顔を出すんでビックリした。作業も勘がいいのかね、何も言うことが無いよ。本当によくやってくれます」と義父・義則さん。
 義母が数年前に他界。慣れない肉牛の世話と家事との両立は簡単ではない。加代子さんの一日は、毎朝日の出前から始まる。家族よりもひと足早く起きて朝食の準備。後片付けの後、自宅から車で数分離れた畜舎へ向かい牛への餌やり、そして糞出しなどの掃除を済ませると自宅へ戻り、今度は昼食の準備。午後は畑へ出て牧草を餌にする作業を済ませると再び畜舎へ。単純といえば単純。だが、「餌のやり方も教科書で学んだ通りにはいかない。牛の状態をみて量を増やしたり減らしたりと。観察力が問われます」。また、これら作業の中で牛のお産があったりもする。産まれた子牛を10か月間育てて肥育農家に売るのが今村家の仕事だ。

就職して学んだ技術を活かしたい
 畜産は休日がとりにくいと一般的に言われる。事実、嫁いで以来、休日はまだ無い。楽しみは、ドライブと旅行。だが、まだ新婚旅行のあても立っていない。今は夫と一緒に出掛ける地元の集まり(酒も出る)が楽しみらしい。
 「かわいい子牛を育てていると、焼き肉なんか食べられないんじゃないの?」と嫌みな質問をぶつけても、「いいえ、かえって残さず美味しく食べてあげないと牛に申し訳無い」と屈託がない。将来は、「自分たちが育てた牛が、どんな肉になってどういった人たちに買われていくのか調べたい」。南州農場で学んだトレーサビリティ技術を活かすときは、もう間もなくだ。
【No.1(2006年春号)掲載】
 
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