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「やる気と努力と研究心」目標とされる漁師を目指す
長崎県 野母崎三和漁業協同組合 山本幸徳さん

温暖な気候の野母崎樺島町。天草灘、東シナ海が主な漁場
「漁師は自分がやった分だけ跳ね返ってくるのが魅力」と語る山本さん。
 長崎市街から海岸沿いをバスで揺られること1時間20分。本土最西南・長崎半島の先端に架かる橋を渡ったところに野母崎樺島町はある。この辺りは昔からイワシの巻き網漁が盛んだったが、最近では高級ブランド魚「野母んあじ」の産地として名を馳せている。野母んあじは地元の漁師が一本釣りで釣り上げる全長26cm以上、重さ300〜500gの瀬付きのアジで、こりこりとした食感と脂の乗りの絶妙なバランスが食通をもうならせる。

釣れた魚は野母崎三和漁協活魚センターへ卸し、そこから関東・関西へと出荷されていく
 この野母んあじの一本釣り漁師として、サラリーマンから転身、独立したのが山本幸徳さん(37)。NTTのグループ会社で総務などを担当していたものの、転勤先の東京から戻ってきた頃から自然の中で働ける漁師になりたいとの思いを強くした。
 大日本水産会のホームページで漁師募集フェアを知り参加。研修生に応募するのと、10年以上勤めた会社に希望退職願を出したのがほぼ同時だった。研修先の第一希望として野母崎三和漁協を選んだ理由は、故郷と地理的に近く、単独で漁ができ、研修中のバックアップ体制がしっかりしていたから。意欲を買われ、25人あった応募者の中から第一期生3人に選ばれた。
 漁師なら1人でやれるからという理由で応募してくる人も多いが、漁師にとって一番大切なのは協調性だという。その点、山本さんは研修生の時から地域のイベントや消防団にも積極的に参加した。「漁師になる前に、地元の住民にならなければ」と思ったからだ。研修は、先輩漁師の船に乗り込んで船の操縦や魚の釣り方を教わる。小さい頃から親しんできた釣りだから自信はあったものの、最初の頃は思うように釣れなかった。次々に釣り上げる先輩漁師を見ながら、風の読み方、潮の読み方などを学んでいった。
 一年余りの研修を経て2004年4月に独立。一級小型船舶操縦士の免許は在職中に取得済みで、退職金などを元手に250万円の中古漁船を購入、野母崎三和漁協樺島一本釣振興会の会員としても認められた。
 漁は基本的に明け方に出て夕方に戻ってくる。釣れた魚は野母崎三和漁協活魚センターで水揚げし、買い取ってもらう。

現在研修中の第四期生とともに。後輩の指導にあたっている
 漁師になって一番辛いことはという問い掛けに「時化(しけ)で漁に出られんこと」と答える。漁師にとって「釣れない=無収入」となるだけに、漁に出られるかどうかは最重要事項。だからこそ、冬場には月のうちたった数日しか漁ができないこともある中、人より1匹でも多く釣りたいと、常に釣りのことを考えているという。好きなことだけに、負けたくないという気持ちも強くなる。腕のいい漁師に必要なのは「やる気と努力と研究心」。疑似餌を変えてみるなど思いついたアイデアは早速試してみるが、簡単には収獲増につながらない。
 将来の夢は、新しい漁船を買うことと、今年5月に結婚したばかりの奥さんとともに家庭を作り地元に根差していくこと。現在250万円ほどの年収も、もっとアップさせていきたいと目論む。そして、最終的には他の漁師に目標とされる漁師になりたいという。
 日に焼けた横顔に、漁を終え充実感に満ちた瞳が輝いていた。
【No.1(2006年春号)掲載】
 
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