ここから始まるI・J・Uターン

体で覚える森の仕事の第一歩
 「100年先に届ける仕事」。全国森林組合連合会の「緑の雇用」総合ウェブサイトトップにある言葉だ。
 緑の担い手はなり手が少ない。でも、木を植え、森を育て、次の世代に山を残す、大切な仕事だ。環境に貢献し、おいしい水、おいしい空気を作り出す、誇りをもてる仕事だ。
 山で働きたい。森で働きたい。自然の中で働きたい。少しでもそう思ったら、このページを読んでみてほしい。国や県や地域が、緑の担い手を増やすため段階的に、講習や研修を行っている。
緑の仕事を発見する旅
林業見学・交流ツアー
 「林業、森の仕事、緑の担い手?実際どんなことをするんだろう。いきなりできるのかな…」。
林業とひとくちにいっても、具体的にイメージしにくいのが普通だと思う。実際、この仕事は多岐にわたり、一言で説明するのも難しい。
 そこで、百聞は一見にしかず。「自然相手の仕事に興味がある」「森の中で働きたい」「IJUターンを考えている」など、林業に興味を持った人などに向け行われているのが「林業見学・交流ツアー」だ。

全国森林組合連合会「林業見学・交流ツアー」ホームページ
http://www.nw-mori.or.jp/tour/
 林業の現場を実際に見学、体験しながら森の仕事を肌で感じることができるのが魅力のこのツアー、作業が終わった後は、実際に林業に携わっている人との交流会も催される。実はこれがとても重要で、「やっぱ現場のことは現場に聞くのがいちばん」なのだ。貴重な情報を得ることができるだろう。
 例えば、昨年7月に催された茨城県・八郷町森林組合へのツアーは、こんな感じだ。1日目9:00◎東京駅からバスで出発。車中でビデオなどを見ながらガイダンス。11:00◎茨城県八郷町に到着。13:00◎森林作業体験開始。のこぎりで木を切るなど森林業務を手伝う。16:00◎森林組合が運営するオートキャンプ場で宿泊。夕食兼交流会が催される。2日目8:30◎寺子屋(ホール)で森林講義(森林組合長の話)。11:00◎森林組合長が所有する山を見学。16:00◎東京着。
 どうだろう? 林業の一端を垣間見ることができそうじゃないか?
 今年度に行われる最初のツアー(6月3日〜4日)も同じく茨城県・八郷町森林組合。6〜7月にかけては、ほかに宮城県・宮城中央森林組合、山梨県・北都留森林組合、福井県・名田庄森林組合、佐賀県・富士大和森林組合が予定されている。主催は全国森林組合連合会。参加費は食事代を含めて3000円。インターネットから申し込みができる。
【問い合わせ】
全国森林組合連合会
東京都千代田区内神田1―1―12
林業見学・交流ツアー事務局
電話03(3406)7536
林業ビギナーを応援する林業就業支援講習
 「森の仕事がしたい」「自然を相手に仕事がしたい。自分にできる仕事、何かないか?」など、求職中の人を対象に、林業のことをより本格的に学べる場として提供されているのが「林業就業支援講習」だ。
 林業の状況や心構えからチェーンソーで木を切るまで、基本の「キ」を一通り教えるという講習で、個別の相談にも応じてくれる。
 講習は6段階に分かれている。@基本的な知識の講習では、知識だけでなく林業と山村地域の現状や心構えなども受講する。林業は危険をともなう業務なので次に、A安全に関する知識を学ぶとともに、救急訓練が行われる。実地に入る前の機械の扱い方の訓練としてB刈払機・チェーンソー等の作業講習。C林業・木材産業等の施設見学の後は、実際に現場の作業を行うD森林作業の実地講習。ここでは実際に森に入って作業の手伝いをする。そして、最後のE職業相談・生活相談では、林業に就くための様々な相談に応じてくれる。
 期間は集中的に約20日間。受講は無料だ(ただし、食費、講習実施地域までの交通費、現地宿泊費などは自己負担となる)。
 主催は全国森林組合連合会だが、各県の林業労働力確保支援センターなどが実施しており、講習場所は全国にまたがる。希望の地を選ぶこともできるし、住まいから近いところを選ぶのも現実的だろう。
 ちょっと興味が湧いてきただろうか? 募集時期は、基本的に春と秋の年2回。中には3回行う地域もある。
 この講習、自分の適性を知る上でかなり有意義なものとなるはずだ。迷っている暇があるなら、トライしてみよう!
【問い合わせ】
林業労働力確保支援全国センター
(全国森林組合連合会内)
電話03(3294)9713
林業に就いた新人を応援する緑の研修

全国森林組合連合会「緑の雇用プロジェクト」ホームページ
http://www.ringyou.net/
 「林業就業支援講習」は、林業に就く前の人を対象にしているのに対し、実際に林業に就いた人を対象としているのが林野庁の「緑の研修」だ。森林組合など林業の事業体に対し、「緑の雇用担い手対策事業」として支援される。
 「なんだ、個人に直接の恩恵がないじゃないか」と思うかも知れないが、そうでもない。従来の林業は「先輩の仕事を見て覚えろ」的な教え方が多かった。また、現在は機械化が進み高度な機械操作の教育も必要となっている。しかし、きちっと新人教育をやるには、やはりそれなりの費用がかかる。そこで、どの事業体も総合的でレベルの高い新人教育を行えるよう国が支援しようということなのだ。
 研修期間は180日。審査を通った事業体のみが支援を受けられるため、教育プログラムの内容は保証されている。これから林業に就きたいと考えている人にとっては、その事業体が「緑の雇用担い手対策事業」の支援を受けているかどうかということが「しっかりと自分を育ててくれるか」という一つの目安にもなるだろう。
 森の仕事に就くための情報収集は、全国の主要都市で「森林の仕事ガイダンス」という説明会が開催されているので、そういった機会を利用しよう。仕事のことだけでなく生活面の疑問・質問にも応じてくれる。また、各都道府県の林業労働力確保支援センターでも随時、相談を受け付けている。
【問い合わせ】
各都道府県林業労働力確保支援センター


全国森林組合連合会ホームページ
http://www.zenmori.org/index.shtml
 林業について「学ぶ」には、こうした研修などのほかに、インターネットの活用が有効となる。また、もっと本格的に学びたいという人には、例えば農業大学などに造林の学科があるので、オープンキャンパスなどを利用するのも手だろう。このほか岐阜県には「地域の森林を活性化し、森の文明、木の文化の再興に情熱を抱く人であれば、年齢を問わず歓迎する」という岐阜県立森林文化アカデミーなどもある。
 よく、日本は四方を海に囲まれた島国だといわれる。が、陸に目を向ければ平野が少なく、山に抱かれた山国でもある。長い歴史の中で独特の「木の文化」も育まれてきた。にもかかわらず、現在、管理が放置された森林は少なくない。担い手が少なくなってしまったこともその一因だ。だからこそ今、次代を担う人の育成を、国や地域が一体となってしていこうという気運が高まっている。
 「森林、林業のことを学びたい、仕事にしたい」。その意欲さえあれば、将来を切り拓く道はさまざまな形で、いろいろなレベルで用意されている。
林業就業支援講習の内容
林業就業にかかる基本的な知識の講習等
 林業と山村地域の現状
 林業就業にあたっての心構え
 森林と林業の知識
林業労働安全衛生講習
 安全作業と関係法令
 現場における緊急措置(救急訓練)
刈払機・チェーンソー等の作業講習
 刈払機・チェーンソー等の操作、点検整備
安全作業講習
林業・木材産業等の施設見学
林業作業の実地講習
職業相談・生活相談
緑の研修生の次のステップは技術高度化研修
 1年間の研修を修了し、林業事業体に定着している「緑の研修生」を対象に、次のステップとして用意されているのが「技術高度化研修」だ。
 同様に事業体を通じて林野庁が行う支援策。期間100日のうち、80日が「かかり木処理(切った木がうまく倒れず周囲の木に引っ掛かってしまった場合の処理)」等の研修、20日間が「風倒木処理(台風などで折れたりした木の処理)」等の研修という、名の通り技術をさらにアップさせるための実践的な内容となっている。
 森林業務が一通りできるようになるまでには通常4〜5年かかるといわれている。かかり木も、風倒木処理も事故率の高い危険な作業。担い手となる人たちに、安全に働いてもらうためにも現場に慣れてきた2年目くらいでしっかり身に付けさせたいという主旨で行われる研修だ。
【No.2(2006年夏号)掲載】
 
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