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ココロのゆとりを楽しむ「農業」の暮らし
千葉県山武市 江口憲一さん
俊子さん

自慢の青ネギを前に、江口憲一さん・俊子さん夫妻
 江口憲一さん(58歳)は、元・映画カメラマン。現在は、千葉県山武市横田で畑15アールを耕し、野菜20種以上を無農薬・無化学肥料の有機農業で栽培する農業者である。
 江口さんが「農業を始めたい」と千葉県農業会議へ相談に訪れたのは5年前、53歳のとき。農業会議からの紹介先、有機農業グループ有限会社デコポン連合のメンバー、斎藤完一さん(山武市)の農場で2年間農業研修をした後、斎藤さんから畑15アールを借り、2004年4月から有機野菜栽培を始めた。

自分で計画できる仕事
 江口憲一さんは約30年間、映画カメラマンを務めた。復活ゴジラシリーズなど、特殊撮影で一時代を築いた。ゴジラシリーズが終わることになり、江口さんに転機が訪れた。
 映画の仕事は、大人数のスタッフが共同で作品を作り上げる。カメラマンは、ただ撮影するだけでなく、それぞれ職人である集団の人たちをまとめながら、作品を仕上げていく「段取り屋」的な仕事。何日間で撮影終了という時間の制約も厳しい。映画もフィルム撮影からデジタル撮影に変わり、合成もデジタル化。撮影助手なども作品ごとに外部から集めるようになった。ある程度の年齢になったらできない仕事。「潮どき」だった。
 今度は、自分ひとりでできる仕事。自分で計画し、自分で時間を作りながらできる仕事。農業は、自分ひとりで計画し、栽培、収穫、販売ができる。―江口さんが、第二の人生に「農業」を選んだ理由である。
 「いま思えば、農業だって、自分ひとりでなく、いろいろな人たちの助けがあって成りたっている」と江口さんは笑う。だが、「農業は、自分で時間を作り、精神的ゆとりを楽しめる」。

こだわりの青ネギ、三豊ナス

農作業も自然に体が動くようになった
 江口さんは、無農薬・無化学肥料、有機農業にこだわる。野菜20種以上の栽培だが、「ここらの関東にない関西系統の品種が中心」。周年栽培・周年出荷のネギは、関西系・九条ネギ系統の青ネギ。夏は、加茂ナス系統の三豊ナス。「関西で栽培されている野菜」が中心だが、「でも、千葉だから、夏には落花生も…」。
 品種を選ぶのは、奥さん、俊子さんの注文。東京・世田谷区での生活が長く、「消費者としての長年の経験」をいかして、消費者として食べてみたい野菜を注文する。
 販売は、直売だけ。地元農家の野菜直売所とJAの農産物直売所で販売するほか、関西系の野菜ということで料理屋・料理人への直接販売もある。
 俊子さんは美術大学卒。絵を描く。引っ越し当初は、花や野菜の絵だったが、地域に触れ合うなかで村祭りなどの生活の絵も多くなった。直売所では、野菜の絵にレシピを書いて販売する。宅配も、絵を通して知り合った人など、引っ越してからの知り合いが多い。
 江口憲一さんは、「少量だけど、確実にいいものを作っていれば、広がっていく」という。

自分たちの時間が流れる
 就農希望者に一言とたずねると、「若い人は、外での仕事を経験してからのほうが、農業の魅力が分かる」「ある程度の資金を持って就農するほうがいいが、都会生活での自分の価値観は切り捨てるべき。経済効率でなく、生活のうるおいに価値観を求めるほうがいい」。
 ここには、ゆったり流れる自分たちの時間を楽しむ夫婦がいる。
千葉県は、今後定年退職を迎える団塊の世代など、定年帰農しようとする人達の支援を目的とし、就農モデルの提案、就農講座・研修会の開催、生産技術の相談等を行ういきいき帰農者等支援事業を2006年度から開始する。
【No.2(2006年夏号)掲載】
 
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