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| 「木は切って慣れろ」の一言を胸に |
| 大館北秋田森林組合 鈴木信行さん |

「料理? 子供に作ったりしますよ」と、鈴木さん(左)。先輩の辻さん(右)と |
常に「一歩先」を歩んできた組合
大館能代空港を降り立つと、敷地脇に道があるのか、風を受けてシャツを膨らませた少年が自転車を駆っていた。丘の向こうは何もない。大地から地平線が見えるのだ。北秋田は空が広い。
森林組合というと「山の中」というイメージがあるが、大館北秋田森林組合は、この空港から車で20分ほどの場所にある。
さらに想像と違っていたのは、組合本所の建物両脇に、天井の高い立派な製材所があったことだ。
聞けば、製材所を建てる際、建築家に「製材所の機械類は必ず入れ替えるときがやってくるから、後々のことを考えて天井は高くしておいたほうがいい」と、アドバイスを受けたのだという。
「お陰さまで、機械を入れ替えるとき、『持ち上げて』入れ替えることができて楽ですね」と、総務課の畠山さんはいう。
アドバイスを受けたといっても、費用などとの兼ね合いから、なかなか踏み切れないものではないだろうか…… と、思ったが、この疑問は、その後、話を聞くうちに徐々に納得へと変わっていった。
同組合は、市町村合併にともない、2005年4月に発足したばかりだ。だが、旧組合時代から先進的なことに取り組む風土が存在したのだ。そのよい例が、木材の育成・販売といった本業以外の事業に表れている。
「以前はログハウスの販売をやっていたんですよ。最近はまあ、不況でさっぱりですが。ブームも去ってしまいましたしね。今は木工家具などをネットで販売しています。なかでも『二人掛けブランコ』は、頑丈で安心と好評なんですよ」
ホームページを見ると、山菜や味噌なども扱っている。「好評」というブランコはデザインもなかなかのものだ。
さらに、今後、力を入れていく事業として、大学や行政とともに木製の堰せきなどの建材作りにも取り組み始めた。
「コンクリートの堰より、木の堰のほうが景観に優れているでしょう。でも、木は水に浮いてしまう。そこで、流されないようにする特別な工法を考えた先生がいるんです。木自体も重さを与えるなど、いろいろな加工を施します」
環境や景観に配慮した独自の木材加工品を作る森林組合として、森林ビジネスの可能性を追求しているのだ。製材所の高い天井も、納得がいくというものではないだろうか。
北の「ふるさと」は実り多き地
畠山さんに代わり、取材する若者が働く事業所に案内してくれたのは、阿あ仁に森吉もりよし事業所の西根さんだ。
「秋田は初めてですか」と、聞かれたので「申しわけない」と答えると、「もう1週間後なら、それこそ採れたての新米が食べられたんですが…」と、知らされた。車窓を黄金色の海が流れていく。背景の山の緑と相まって実に美しい眺めである。この地への移住者はどのくらい、いるのだろう?
「北の地への移住者は、そう多くはありません。豊かな自然の恵みがたくさんあるんですが…」と、教えてくれた。
事業所の中でもとりわけ若い職員の多い阿仁森吉事業所。それを束ねる旧・阿仁森吉森林組合の長は、車中、ふるさとや移住、森林組合の人材教育などさまざまなことを語ってくれた。
紙幅があるのでここでは割愛させていただくが、先ほどの畠山さんも「西根さんはすばらしい人」と、信頼を寄せていたことを、話を聞きながら思い出した。
約30分後、現場に到着。山の中はいつものことながら、ほの暗く静かである。
実家が民宿。だから調理師になったが
鈴木信行さん(33歳)は、地元、秋田から大阪に出た後に戻ってきたUターン者。
「実家が民宿なんです。だから、料理の勉強をするために大阪に出ました」
主に和食を学び、調理学校卒業後は、割烹の店に勤めたという。
「ただ大阪にはそんなに長くいなかったんですよ。こっちに帰ってからは、十和田プリンスホテルに勤めたり、家業の民宿をやったりいろいろです」
夏場は民宿家業、冬場は造り酒屋で働くという二重生活も5年ほど続けた。が、生活の安定という意味で不安があったという。森林組合に入るきっかけとなったのは、結婚し、子供ができたからだ。
調理師から森の仕事への転身。体力的にはどうだったのだろう。
「最初のうちはまあ、大変でしたが、やる気さえあれば何とかなるんじゃないでしょうか。現場まで1時間半歩くこともありますから、仕事をしているうちに自然と体力がついてくるんです」と、淡々とした語り口調で語ってくれ、森の仕事だからといって特別、体力的にきついわけではないとクールだ。
「体力の話でいえば、冬場の『雪投げ』のほうがよっぽど大変です。秋田は雪が多いから」
「雪投げ」とは、雪かき、雪下ろしのことだ。なるほど、降ろしても降ろしても「投げ」なければならない、相当にきつい雪国の務めである。
そう、北国の山で仕事に就くということは、あらゆる面で「自然」とは切り離せない環境下で暮らしていく覚悟が必要なのだ。だからからか、「自然相手の仕事は大変ですが、やっただけきれいに整ってくる」と、言った言葉が、より深度を増して聞こえた。
一対一で教わった1年間の指導

本所に隣接した製材所で木製の堰のパーツを製作 |
その「自然相手の仕事」も今年で4年。だいぶ慣れてきたという。
「組合に入って3〜4カ月でもう木を切り始めていました。もちろん最初は恐かったですよー。木を切るのが。どちらに倒れるか想像がつかないんです。自分では『こっちに倒れるだろう』と思って切っていると、まったく逆のほうに倒れたりして……。何でだろう? って、よく思いました」
「でも、そんなとき、自分の教育係として就いてくれていた鈴木さんから、『木は切って慣れろ』っていわれました。すごく印象に残っている言葉です」
阿仁森吉事業所では、新人には最初の1年間、マンツーマンで指導者が就く。鈴木さんの指導者は、現在は定年で引退した鈴木進さんだった。この人のお陰で今の自分があるという。
「もう、思った方向に木を倒すことができるようになりましたよ。誤差はほとんどありません……」と、仕事への手応えを感じている表情をにじませた。師匠がいう「木に慣れて」きたということなのだろう。 |
<大館北秋田森林組合の概要>
所在地:北秋田市脇神字佐助岱27-2
TEL : 0186(62)1664
組合員数: 7,015人(平成18年4月現在)
従業員数: 104人(平成18年4月現在) |
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| 【No.4(2006年冬号)掲載】 |
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