ここから始まるI・J・Uターン

森なくしては、暮らせない
NPO法人森林楽校・森んこ
福井県名田庄森林組合 萩原茂男さん

チェーンソーアート講習会
(萩原さん:右から二番目)
ひとつの疑問から
 大阪で、働いているときに、ふと「日本に木が一本もなくなったらどうなるんだろう」という疑問がわいた。35歳のときだった。
 その疑問に導かれるように、森に興味を持った。木や森や環境のことを調べるうちに、森に関わる仕事がしたいと思うようになっていった。
 以前から、何となく田舎暮らしへの憧れもあった。妻に相談すると、意外にもいいでしょうという返事。言い出したら、聞かない私の性格も知ってのことだろう。
 縁とは、不思議なもの。Iターン雑誌で、たまたま、森林組合の現場職員の募集を目にした。月給制だった。ただし、給料は、大阪のときの半分ほど。平成9年4月、名田庄森林組合に就職。37歳。

住宅はキーポイント
 名田庄森林組合では、Iターン者には、村営の一戸建ての借家を、与えていた。家賃は、3万円。組合から1.5万円の住宅手当が出た。大阪では、考えられない、夢のような住まいである。住まいの不安はなかった。
 しかし、転職の不安は、あった。まず、年齢。それに、体力。大阪では、全くのデスクワーク。広告の制作会社で、働いていた。生活は、不規則になりがち。おかげで、机にかじりついて、徹夜の仕事をするという体力は、あった。でも、野外での仕事についていけるか。何かが、好きでないと続かないと思う。
 山仕事への転職は、35歳までが限度。それ以上だと、10年後が相当厳しいと思う。危険は大きい。油断は、死につながる。それに、最近の山仕事は、重機(高性能林業機械)を使う現場が多くなってきた。これから先、林業は、ますます様変わりをしていくと思う。ナタ・斧といった、手仕事をイメージすると、大きなギャップを持つことになる。

人情が豊かな名田庄
 名田庄は、豊な人情が、息づく地域。それは、若狭と京都の、街道筋にあたる歴史を持つからか。他所から来た者も、あたたかく、自然に受け入れる風土がある。ありがたい。
 田舎暮らしを楽しくするには、人と地域の付き合いが、コツ。自然ばかりを意識していると、失敗する。

山村がなくなる
 引っ越して来て、気が付いた。96パーセント、山林に囲まれている名田庄においても、人々の生活に、山や川があることが日常でなくなってきている。人々の心の中に、森が消えかかっているように思う。人の思いが、社会を作るなら、いつしか、里山は、忘れ去られ、山村がなくなり、ついには、森がなくなってしまうのではないか。そんな危機感さえ持つようになってきた。


キャンプで、みんなで作った、竹の小屋で
(萩原さん:右奥)
「森林楽校・森んこ」の活動
 森の魅力をより多くの人に伝えたい。そんな思いが大きくなってきた。それには、まず、私たちが、森の魅力や山村の暮らしをもっと「感じよう・体験しよう・楽しもう」と思った。平成16年に3人で同好会「森んこ」を発足。平成17年9月にNPO法人化して、「森林楽校・森んこ」と改名。現在スタッフは10名。あちこちの団体から、自然体験の企画や指導の依頼が来るようになった。土曜か日曜は、ほとんどが「森んこ」の用事が入るようになってきた。人とのつながりも増えてきた。
 忙しくも、充実した生活をしている。もう二度と、町では暮らせない。森なくしては、暮らせない。
◎名田庄村は、平成18 年3 月に合併して「おおい町」となりました。合併にともない、住宅は、払い下げとなり、持ち家となりました。
◎ NPO 法人 森林楽校・森んこ
URL www.npo-morinko.com
【No.4(2006年冬号)掲載】
 
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