ここから始まるI・J・Uターン

家族で満喫する贅沢な毎日

島根県 漁業協同組合JFしまね浦郷支所所属 巻き網船団 一丸
武藤 康弘さん
島で暮らしたい!

本土の境港で水揚げするため、島には自宅用の魚だけで戻ってくる
 島根半島から北東へ約65km、日本海に浮かぶ隠岐諸島の一つ、西ノ島。後醍醐天皇の遠流地だったこの島に渡るには本土からフェリーで2時間以上かかるものの、紺碧の海と独特の景観に魅せられ、夏は多くの観光客で賑わう。漁業と畜産業にも力を入れる人口4000人ほどの島・西ノ島町に、武藤康弘さん(31歳)が家族とともに移り住んだのは2004年11月のこと。島のホームページで見た「巻き網漁船乗組員募集」の広告がきっかけだった。
 マリンレジャーが華やかな神奈川県逗子市に生まれ育った武藤さんだが、とりたてて釣りや海が好きだったわけではない。島への移住を希望したのは世田谷区出身の奥さんからだった。
 「子どもたちを自然のなかでのびのびと育てたい」
 その考えに武藤さんも賛同した。それに故郷をもつことへの憧れもある。
 「よし、島で暮らそう!」
 

「ラグビーで鍛えた身体。体力には自信があります」
夢はにわかに現実味を帯びてきた。
 体を動かしてできる仕事がある島という条件で全国を探したが、家族4人を養える仕事となるとむずかしい。そんなときに見つけたのが前述の募集広告。「固定給21・5万円+別途手当」にひかれ、早速、1週間の体験研修に申込み、家族で島を訪れた。9月の台風シーズンで2回しか体験乗船できなかったものの、船酔いは全くなし。夜の海で格闘しながら魚を捕っている男たちの姿に感動し、漁師という仕事に魅力を感じた。体力には自信がある。「これならやっていける」と思った。島にコンビニが1軒もない環境には驚いたが、保育所や学校、病院と必要なものは揃っている。新しい暮らしに胸を膨らませ、一家は島の住民となった。

夜は漁で、昼は団らん
 巻き網漁は夕方に出航して、朝、港に戻ってくる。日没時間に合わせ夏は19時、冬は17時に船に乗り込む。拘束時間は10時間〜12時間だが、船上で5時間ほど眠るため、実働時間は長くない。むしろ帰宅して睡眠を取る必要がない分、前職の工場警備員に比べて時間を有効に活用できるようになった。子どもたちと一緒に島を探検したり、一面を飛び交うホタルに見とれたり、贅沢な時間を過ごしている。また、この島に来るまであまり食べなかった魚のおいしさに目覚め、自分でさばく方法も身につけた。魚はほぼ100%自給自足。島の人たちはとても温かく、都会ではなかなか味わえなかった近所づき合いも楽しんでいる。
 大変なことは?とたずねたら「店が少ないことと物価が高いこと」と笑うが、必要なものはインターネットショッピングで調達すればとくに不自由はないという。
年に一度逗子市に戻ると、やはり自分の家は西ノ島だと感じる。「ここが我が家」と武藤さん。島で生まれた3人目の子どもも含め家族5人、大自然に包まれた生活を満喫している。

 漁業協同組合JFしまね浦郷支所では、巻き網船団の乗組員確保を目的に1995年から漁業後継者確保対策事業を行っている。現在島では、Iターンで移り住んだ30名が家族とともに暮らしている。
【No.5(2007年春号)掲載】
 
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