ここから始まるI・J・Uターン

必要なのは先の先を読む眼
山梨県 北都留森林組合 一戸 和仁さん
古田 恒也さん
新婚4カ月VS失うものはなにもない独り身
 

左から、一戸さんと古田さん。今日の作業現場にて
「僕はもともと林業がやりたかったんです」
晩秋の夕暮れどき。日に焼けた顔に照れ笑いを浮かべながら一 戸和仁さん(42歳)が語った「就業の動機」は、ストレートだった。青森生まれの東京育ち。チェーンのピザ屋でピザを作っていた。
 「あるとき、年をとってもピザ作っているのかなと考えたら、ちょっと…って思ったんですよ。そこで就職情報誌の定期購読を始めまして」
 その情報誌で、山梨県で開催された林業就業フェアを知り、北都留森林組合(上野原市)の面接を受けることにした。
 「この組合がいちばんしっかりしていると感じましたね。資料もきちっとしているし、説明も分かりやすかった」

学校の授業や企業研修にも協力をする
 それを「そうだね。僕もそう感じた。ブースのパネルもよかったよね」と、ゆったりとしたソフトな口調であいづちを打つのは、古田恒也さん(40歳)だ。やはり東京出身。会社員が肌に合わないと感じていた。さまざまな職業を探すうちに林業の仕事に就きたいと思うようになった。「僕の場合、独身でしたから、失うものは何もないと思ったのも大きいかな」と、当時の思いを語ってくれた。
 I・J・Uターンは、転職だけでなく移住もともなう。そのため、家族の理解を得られるかどうかが大きい。一戸さんは、山梨に行くことが決まったとき、新婚4カ月だった。反対はなかったのか。
 「実は、結婚前から山に住みたいっていう話をしていたんです。それになんといっても山梨なら東京から近いですから」
 確かにそうだ。車なら、中央高速高井戸インターから上野原インターまで約1時間半。そこから組合までは10分もあれば着く。都心に通う会社員の通勤時間とさして変わらない。首都東京の隣県、山梨の地の利が多くの人をひきつけるのだろう。「彼らのときは30人もの応募があったんですよ」と、現場に案内をしてくれた同組合利用係長の舩木示一さんもいう。

あわやトラック転倒?VSスコップさえ使えない

木材をつかんで運ぶグラップルの操作もいまやお手のもの
 二人ともめでたく採用されたわけだが、林業経験はまるでない。それどころか、工事現場の経験すらない。だから最初は、山ではなく水車小屋を作る仕事に駆り出され、約一月、ひたすら穴を掘る仕事に就かされた。「自分でも驚きましたが、スコップで土をすくって向こうに投げる…という、たったこれだけの作業もうまくできないんですよ!」とは古田さん。「僕はね、すごく大きなユンボを試しに運転してみろといわれまして。やってみたはいいけど、2トントラックをひっくり返しそうになった。恐かったですねえ。トラックが倒れたらこっちに覆いかぶさってくる。そしたら僕はぺっちゃんこです」と、今度は一戸さんが笑いながらいう。
 余裕の笑みでいえるのも、8年を経て自信がついてきた証だろうか。最初は驚いた建設工事の仕事も、今思えば体力を付けるため、そして道具を使って作業をする仕事を覚えるために必要な経験だった。

北都留の山に根ざした組合の多彩な横顔
 舩木さんによると、前述のような建設工事の仕事は、今は、同組合ではほとんど請け負っていない。もっと多角的で、先進的な事業に取り組んでいるからだ。
 その一つが木工の制作販売。例えば、雨で現場に出られないときは、家具などを作っていた職員の指導のもと、椅子や器やコースターなどを皆で作る。アイテムは豊富だ。ふるさと祭りなど地域のイベントに出展すると、いつも完売御礼となる。
 また、本誌第3号でも紹介した全国森林組合連合会の「林業見学・交流ツアー」の受け入れを、この森林組合も行っている。このほか、最近は「企業の森」支援も開始した。これは、企業が、地球温暖化防止などに貢献するため、森を借り上げて社員研修を実施するというものだ。森林組合はこの指導やサポートを行う。

木材をトラックに積み込む集材作業
 就業フェアで「この組合がいちばんしっかりしている」と二人が感じたのは、単なるフィーリングではなく、組合のこうした多角的な取り組みがあらわれていたということだろう。
 東京からやってきて飛び込んだ職人の世界。「70代、80代の職人さんがごろごろいます。この人たちの仕事の指示は本当にすごいですよ。ものすごく先まで読んでいるからこそ出てくる指示です。僕なんてまだまだ」と、だれかを思い浮かべるように一戸さんはいう。「とくに難しい木を切るときだけ来てもらう人もいるんですよ。格好いいですよねえ」と、古田さんも眼を輝かせる。
 憧れだけで終わらせず、まるで経験のない世界に飛び込んだ。その行動力がもたらした対価の大きさが、二人の充実した表情に表れていた。

<北都留森林組合の概要>
所在地:山梨県上野原市上野原5273-2
TEL:0554(62)3330
●18年度のスローガン
森林整備プロ集団としての自覚と実践/販売力強化により攻めの組合経営/多摩川・相模川流域材生産基地の構築/木質エネルギー新規事業の可能性追求
●新規事業
「森林・林業体験教室」の開催/「桂川・相模川流域協議会」の活動/山梨木質バイオマス利用研究会の活動/小菅村「森林再生プロジェクト」の活動
【No.5(2007年春号)掲載】
 
募集・求人情報
 新・農業人フェア
 IJUガイド
農業に就く | 林業に就く
漁業に就く | I・J・Uターン情報
 ジャンル別情報一覧
農業 | 林業 | 漁業
地場産業
農業体験・農的生活
定年帰農・セカンドライフ
田舎暮らし・移住 | メッセージ
トップランナーの視野 | 巻頭言
未来への階段 | 農園歳時記
研修 Style Catalog
 都道府県別情報一覧
 特集一覧
 知っておきたい制度と基礎知識
 保険・税・移住の手続き
 データで見る新規就農
 読者コーナー
 iju infoサポーター・設置場所
ポリシー | iju infoについて
個人情報対応 | メディア情報
トップページへ


web-iju.info内を検索
wwwを検索
 
■PDFファイルについて
 このサイトでは、PDFファイルを使用しております。PDFファイルを表示するにはアドビシステムズ社のアドビリーダーが必要です。アドビリーダーはアドビシステムズ社より無償で提供されています。下のアイコンをクリックすると、ダウンロードすることができます。