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クラインガルテンを移住のステップに
長野県飯田市 小野子クラインガルテン
名古屋から2時間、大阪から3時間車で通って農作業

11月の収穫祭では、住民と利用者が一緒に「かんぱーい!」
 2006年11月25日、長野県飯田市にある「小野子クラインガルテン」で収穫祭が開かれた。コテージの利用者や次年度の利用希望者、地域の住民を交え、自慢の野菜や料理を持ち寄り、餅つきや鍋料理を楽しんだ。
 この農園は、02年10月に設立された。過疎化に悩む住民が地域の将来を模索するなかで、都市の人たちと交流できる施設として発案。5人の住民の共同出資に加え、国及び市の補助で開設された。地元の人たちが利用者と積極的に関わり、運営しているのが大きな特徴である。
 園内には、菜園付の5棟のコテージがある。面積は一戸あたり約200u。それぞれに「一郎」「次郎」……「五郎」と名づけられている。年間の利用料は35万円。初年度に交流費として10万円を支払う。最長5年まで延長可能だ。
 「最初は別荘を探していました」と語るのは、「三郎」を利用している下司孝雄さん(65歳)。名古屋市在住で、毎週車で2時間かけて通っている。別荘や古民家を求めて2年近く探し回ったが、結局「田舎暮らしの拠点は、買うより借りるほうがいい」という結論に達し、クラインガルテンを回るようになった。
 「見晴らしのいい高台にある、このロケーションが気に入りました。周辺にはいろいろ温泉もあるし、大好きな渓流釣りも楽しんでいます」

野菜の交換、漬物伝授…地元の人との交流は欠かせない

「野沢菜の漬け方を覚えました」と大阪から通っている中西さん夫妻
 一方、「五郎」を利用している中西晃さん(53歳)、早苗さん(52歳)夫妻は、開設当初からの利用者。大阪府堺市から3時間以上かけて通っている。コテージ前の菜園には、見事なカブやオレンジ色のカリフラワーが育っていた。
 「週末のリフレッシュには欠かせません。ここへ来て野菜づくりのおもしろさを知りました。定年まであと3年。できれば将来はこっちで暮らしたいですね」と晃さん。早苗さんは、コテージの縁側で、せっせと野沢菜を漬けていた。
 「柿の皮や昆布を入れるやり方を、地元の方に教えていただきました。野沢菜の容器はコテージに置いています。地元の気候でないとおいしく漬かりませんから」
 こんな風に地域の人たちと交流を図りながら週末農業が愉しめるのも、クラインガルテンの魅力だ。 
 ちなみに、利用者の選考基準に、・地域住民との交流会に参加すること、・月に一度は利用すること、・畑に生えた草は取ること、がある。できない場合は、住民に有料で依頼すること(今までに頼んだ人はいない)などの条件がある。地元の人と交流する機会を「利用条件」という形で設けることは、小野子クラインガルテンならでは。これが利用者と住民のコミュニケーションを深める手助けになっているのである。

「ここで暮らしたい」との声に応え、来春5棟増設
 収穫祭では、会場の設営や料理の下準備は全員参加。作業の息もぴったりで、だれが住民で、だれが利用者なのか、一見よくわからないほどだ。
そこがこの農園のいいところだというクラインガルテン事務局の長沼和宏さん。
 「できた野菜を交換したり、栽培のノウハウや漬物の漬け方を教えたり。あくまでも住民は干渉するのではなく、声をかけられたらそれに応える。そんなちょうどいい距離感を心がけているんです」
 この日の参加者のなかには、こんな声もあった。「コテージの抽選に外れたので、今は畑だけを利用しています。地元にアパートを借りて、毎週通っている。来年こそコテージを利用したい」と、名古屋在住の三宅英夫さん(62歳)と八重子さん夫妻。このように距離をいとわず週末農業をしたい人や、予約待ちの人が増えたこともあり、来春までに総工費4千万円をかけて新たにコテージ5棟が新設される。
 週末農業を愉しむにせよ、本格的な移住の足がかりにするにせよ、田舎暮らしには地元の人の協力と交流は欠かせない。いきなり移住するのとは違い、クラインガルテンは“気楽な貸農園感覚で利用するうちに地元に自然にとけ込める”のも魅力。週末の田舎暮らしや移住の第一歩として、とても貴重で有効な場所といえるだろう。
<小野子クラインガルテンの概要>
所在地:長野県飯田市上久堅小野子
TEL : 0265(29)7723
URL : http://www.ne.jp/asahi/onogo/klein/

クラインガルテン とっておきメモ
クラインガルテンとは
 クラインガルテンとは、19世紀初頭からヨーロッパ諸国を中心に広まった農地の貸借制度のこと。ドイツ語で「小さな庭」を意味し、日本では「ラウベ」と呼ばれる小屋(宿泊施設)がついた農園(滞在型市民農園)を指す。近年はこのタイプの農園が全国各地に登場し、新しい田舎暮らしのスタイルとして注目されている。
移住のステップに最適
 農作業の初心者のために農作物の栽培指導を行う指導員を配置するなど、バックアップ体制が整っている農園が多い。このような細かなケアが農作業への不安を取り除き、楽しんで農作業が続けられる要因になっている。
 また、多くのクラインガルテンでは夕涼み会、収穫祭、クリスマス会など、一年をとおして多彩なイベントを催している。そのほか、味噌、こんにゃくなど、昔ながらの加工食品、地場産業品の制作が体験できる和紙・陶芸教室など、さまざまな講習会も行われている。こうした地元の人々とふれあいの場が、移住したいという気持ちを加速させるのだろう。

クラインガルテン(滞在型市民農園)
内容 ・1区画ずつ整備され、それぞれの区画には田畑などの農園と、「ラウベ」と呼ばれる宿泊施設がセットになっている。利用者は制限なくいつでも宿泊できる
・1区画の面積は、約10〜500u。ラウベ1棟の平均建築面積は、約50u
・ラウベの間取りは、木造平屋(一部ロフト付)、テラス・キッチン・バス・水洗トイレ付が標準タイプ。光熱水道が完備され、通常、別途費用がかかる
利用料金(年間) 70,000円〜600,000円
申し込み方法 ・基本的に管理・運営している団体(または市町村の農業課など)に利用申請書を提出する。4月開始のところが多いので、募集は1〜3月ごろ、通常年1回(例外もあり)。随時、見学会や説明会を開催しているところもある
・利用資格を設けているところもある。また、落選してもキャンセル待ちを受け付けている場合がある
・利用期間は1年単位で、契約更新による利用期間は最長5年というところが多い。利用料金の支払方法や契約更新については、各団体によって異なるので、詳細は問い合わせを
市町村外在住者の利用 ほとんどの場合、可能
指導員の設置比率 全体の7割強
全国市民農園リスト http://www.maff.go.jp/nouson/chiiki/simin_noen/risutos.htm
※農林水産省ホームページ参照
【No.5(2007年春号)掲載】
 
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