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| “いかに捕るか”から“いかに継いでいくか”へ |
| 千葉県 鴨川市漁業協同組合定置部漁労長 坂本 年壱さん |
プロフィール
坂本年壱(さかもと・としかず)
1967年、千葉県鴨川市生まれ。高校卒業後、鴨川市漁業協同組合に就職。1986年より4年間、定置網の製造メーカー(株)ホクモウに出向し、実験漁場で定置網漁師としての経験を積む。1994年、27歳のときに、船団で漁獲作業の指揮や監督にあたる漁労長となり現在に至る。 |

威勢のいい海の男たちを掛け声一つでまとめる坂本漁労長 |
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多くの漁業現場では、いま、高齢化や後継者不足に頭を悩ませています。私自身、親父が漁師でしたが跡を継ぐ気はもともとなかった。いろいろあって結果的にこの道を選びましたが、子どもに跡継ぎを期待すること自体、むずかしい時代。少子化の問題もありますし、漁村の過疎化も考えると後継者不足はかなり深刻な問題です。
その一方、漁師に憧れをもって転職してくる新規漁業就業者も少なからずいるのは期待がもてるところです。ただし、一人前になる前に辞めてしまう人が多いという話も聞きます。漁師の道をリタイアするかしないかの鍵を握るのは、漁師という仕事に魅力を見出せるかどうか。
私が所属する鴨川市漁業協同組合定置部は房総沖で定置網漁を行っており、乗組員は平均年齢41歳。20代が3割以上とかなり若いチームです。鴨川はサーフィンのメッカですから、サーフィンをきっかけに漁師を目指して船に乗り込んでくる若者もいますが、私は彼らに海で楽しめるものはもっとたくさんあるということを教えたい。だから、暇をみては釣りや潜りに連れていって、海のおもしろさを体験させるようにしています。春はワカメ、夏はアワビ、と漁業権を取って四季折々の楽しみ方を知ると、みんな夢中になって潜りにいくようになりますよ。
サーフィンにしても「なぜ、この浜はいい波が立つのか分かる?」というところから説明してあげると、広い視野で海というものをとらえられるようになる。そうすると、漁師の仕事自体もおもしろくなって、辞めなくなるんじゃないでしょうか。
成長の仕方は人それぞれ。当然、仕事の能力についても個人差があります。だから、私はできる人とできない人に同じことはさせません。それは差別ではなく、できる人たちがしっかりすることによってできない人たちの指導もできるようになり、チームワークがうまく機能していくからです。これは、仕事上での競争心にもつながります。馴れ合いで仕事をすると、失敗やぶつかりが少なくなる分、覚えることも少なくなって成長が遅くなりますからね。いい意味でライバル心を持つことは、お互いの能力を高めていくためにも欠かせません。

鴨川市漁業協同組合定置部の皆さん。若い力と熟練の技とのコラボレーションが相乗効果を生み出す |
次世代育成と同時に課題となるのが、次の時代に残せる漁場づくりです。
例えば、今年はサバが20年ぶりの大豊漁となっていますが、単純に喜ぶわけにはいきません。どこかでサバが根こそぎ捕られれば、サバが回らなくなるだけでなく、それを追いかけている魚もいなくなってしまう。さまざまな技術を駆使すれば漁獲量を増やすことは可能でしょうが、捕る量を調整しながら、うまく魚を回していくことも考えなければならない。網の形や大きさを変えて、小魚は逃がして大きな魚だけ捕るようにするなど、生態系を崩さないように、魚をうまく管理することが漁業界に求められています。
自分たちさえよければいいという考えだと、必ず終わりが来ます。山や川も含めて漁場を取り巻く環境と向き合いながら、後世に残せる環境をつくっていかなければならない。一本釣りで生計を立てられるくらい豊かな海に戻すのが、理想でしょうけどね。
そうなると漁獲量に左右されない収入の確保も必要となってきます。これはなかなかむずかしいですが、同じ種類、同じ量の魚でも、自分たちで付加価値を高める努力をすることで実現可能ではないでしょうか。漁獲量を上げるよりも魚価を上げる。漁具や魚の保存に使う氷、活魚の運搬方法など工夫次第で品質は高めることができます。質が上がれば自ずと魚価も上がってくる。
衛生管理一つを取ってもそうです。きちんと衛生管理したものを提供するのが生産者として最低限の務め。必要な設備があれば漁協に導入してくれるよう、私は現場の責任者としてお願いしています。「そんなもの入れたって、本当に魚価につながるのか?」といわれたりしますが、一度でも消費者に何かがあれば、魚価はすぐ半値以下になり、自分たちの生活を直撃しますからね。そう考えると、先の見えない投資が必要なときもある。
漁師の仕事は、魚を捕って売ることだけではありません。魚をとおして、人とつながっていくことも漁師の仕事です。よく、漁で余った魚を乗組員同士で分けるのですが、家にもって帰らないと私は怒りますね。「近所の人にあげれば、喜ばれるじゃないか」と。
それに、漁師自身が魚を食べる楽しみをもつのも大事なことです。魚を捕りながら「これは脂がのっておいしそうだ」と思えるようになるには、舌が肥えていなければならない。おいしい魚が見分けられれば、料理人にも自信をもって勧められる。料理人の信頼が得られれば、そこでまた人のつながりが広がっていく。どんな職業でも、技術を磨くのは当然のことです。そこからさらに、人との絆がつながっていく職業であればもっと楽しくなる。
これからの漁業を担う若い人たちには、人とのつながりを大事にしながら、自分たちが捕っている魚に対しても、職業に対しても、もっと自信をもってもらいたい。漁師という仕事にやりがいを感じ、自然の中で心豊かにいきいきと暮らす若い人たちが増えれば、先輩漁師にとってもいい刺激になります。 |
| 【No.5(2007年春号)掲載】 |
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