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私鉄の車掌から離島の漁師へ
「今、毎日が充実しています!」

「漁師になって腕が太くなりましたよ」と笑う鈴木聡太さん

長崎県五島市(久賀島) 五島ふくえ漁業協同組合所属
マルセイ水産 鈴木聡太さん

網上げって、こんなに重いんだ
 早朝6時、蕨港。出航を告げる汽笛が鳴り響く。まだ暗い沖に向かって走り出すマルセイ水産の久賀丸(19トン)。乗組員8名のなかで舵を任されている漁師4年目の鈴木聡太さん(31歳)が、3m の高波を乗り越える。20分ほどで漁場に着くと、すぐに網上げの準備。漁労長の指示に従い、全員が持ち場についてきびきびと仕事をこなす。仕掛けておいた定置網を少しずつ絞りながら引上げていくと、銀の鱗を光らせたアジやイワシが勢いよく飛び跳ねる。
 「網上げって想像以上に力がいるんですよ。ブリの大物だと1本15sもありますからね。初めて網上げしたときは、あまりの重さに激しい筋肉痛になって眠れなかったほどです」

人生を一変させた漁業就業支援フェア
 鈴木さんは横浜市出身で元私鉄の車掌。
 「でも、人ごみが大の苦手だったんです。田舎暮らしに憧れ、情報を集めるうちに、漁師になりたいと思うようになりました」
 その希望をかなえたのは、2003 年8月に参加した漁業就業支援フェア。「あまり遠くへ出ない漁業」という条件でブースをまわるうちに、五島ふくえ漁協の定置網を知った。「五島は捕れる」という噂を聞いていたし、定置網への興味もある。「第一希望はここだ!」鈴木さんの熱意が伝わって、五島市久賀島にあるマルセイ水産の研修生となった。
 島の土を踏んだのは9月中旬。台風あけだったため、最初の洋上研修では、避難させていた網を再び設置する作業を体験すること

「今日はブリが入っていないなぁ」。定置網をうまく引上げるには、網の構造を頭に描くことも必要
に。
 「波は高いし、いきなりハードな仕事だし、体がボロボロになって死ぬかと思いました(笑)。でも、絶対漁師になると覚悟を決めていたから、投げ出すわけにいかなかった」
 3カ月の研修で、一とおりの仕事を教えてもらうなかで、鈴木さんはベテランでも難しいといわれる網縫いを短期間でマスターしている。そのやる気は社長の折り紙付きだ。

自然のなかで働くって気持ちいい

口は悪いが人情味のある先輩漁師とのチームワークもバッチリ
 会社が用意してくれた一軒家で一人暮らしをしながら、漁師として経験を重ねてきた鈴木さん。初めは方言が分からず周囲と意思疎通ができなかったり、漁師仲間の言葉の荒さに「ついていけない…」と悩んだこともあったが、今では島の生活を楽しんでいる。
 「晴れた日にはきれいな水平線が見えて、心から気持ちいいなぁって感じるんです」と自然のなかで働く満足感を語る。「五島は捕れる」という期待どおりではなかったが、それでもブリが一度に数千本という大漁を経験し、漁師のおもしろさも知った。
 「漁師の仕事は、肉体的にも精神的にも慣れるまでが、かなりつらい。でも、それを乗り越えれば、新しい喜びが待っています」というその言葉から、日々の充実ぶりが伝わってきた。
【No.6(2007年初夏号)掲載】
 
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