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「こんな生き方があった」沖縄の海で漁師を目指す

ソデイカを水揚げする内木さん(右)。漁場は沖縄本島のはるか東、大東島近海。漁船で片道1日かかる。時化(しけ)ると大東島の港に避難し何日も過ごすこ
ともあるが、寝泊りはすべて船の上だ

沖縄県与那原町 与那原・西原町漁業協同組合
内木 亨さん

 沖縄本島南部の与那原・西原町漁協は、昭和60年ごろまで糸満に次ぐ規模の大きさを誇ったが、近年後継者不足に悩んでいた。しかし最近、ソデイカ漁で新規就業する若者が増えている。
 内木亨さん(30歳)は昨年9月、研修生としてこの世界に飛び込んだ。秋には船を買って独立する予定。夢に向かって着実に地歩を築いている。

「ザ・漁師」が人生の転機に

与那原・西原町漁協の瀬底さん(中央)。同漁協は今年も漁業就業支援フェアに参加する。内木さん(右)も同行予定で、研修と就業の経験を話し仲間を募る(写真左)
 ソデイカ漁の船が10日ぶりに港に帰ってきた。15kgもあるイカが次々と水揚げされる。回転寿司のネタや刺身用として大阪など大消費地に送られるという。
 2月に研修を終えた内木さんは、この航海でソデイカ漁の船を降り、しばらく与那原名産のヒジキ漁に専念する。
 「秋のソデイカ漁までに船を買うので、乗り子より金になるヒジキ漁でがんばります」と、目を輝かせつつ語る。
 昨年の春まで千葉で自動車整備の仕事をしていた。30歳の節目を機に、ダイビングで通いつめた大好きな沖縄で暮らそうと決意。10年のキャリアがある整備技能で食える自信もあった。
 しかし、沖縄では自動車整備工の給料が安い。船舶整備に切り替えようかと思った矢先、偶然、大日本水産会のパンフ「ザ・漁師」を目にした。「こういう生き方もあるのか」と、昨年8月の漁業就業支援フェアへ。与那原町のブースで話を聞くうち、未来が開けるような気がした。

マンツーマン指導で技術を習得
 同漁協が県外から研修生を受け入れたのは昨年が初めて。5月と8月の2回のフェアで7人を選び、いずれもソデイカ漁の船に乗せた。船長一人に乗り子として研修生一人。マンツーマン指導だ。
 受入先によって異なるが、ここでは住宅と光熱費は漁協が提供、6カ月の研修期間中は月10万円が保障されることになっている。
 「船酔いもせず、苦労といえば方言が聞き取れないことぐらい」と、内木さん。しかし、一度漁に出れば10日は帰れず、時化でも待機を命じられる。休日がまだ1日もなく、ダイビング機材はしまったままだ。それでも「遊びよりまずは生活です」と、自分に厳しい一面を見せる。

ソデイカ漁なら独立できる

ソデイカ漁は15 年ほど前から盛んになった。獲物との駆け引きがなく、腕よりもやる気と根気がものをいう。価格がいいので、運がよければ1 航海で100 万円以上になることもある(写真下)
 「ソデイカ漁はおもしろみがないけれど、漁法が簡単で1年経験すれば独立できるし、価格もいい」と語るのは、漁協職員の瀬底博也さん(27歳)。若い漁師を増やし港に活気を取り戻そうと奔走している。
 新規就業のカギを握るのは船だ。瀬底さんは、高齢の漁師が手放す中古船を有志組合員と共同で買い取り、リースの形で安く提供する仕組みを作った。「面倒見のいい沖縄の気質が就業者を温かく受け入れている」とも語る。
 内木さんは独立後、研修仲間と一緒に船に乗る。「一人だとまだ不安。二人でやっと一人前です」と、笑顔を見せた。
【No.6(2007年初夏号)掲載】
 
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