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木の魅力を追い求め、木地師の里へ<
長野県南木曽町 木地師の里ヤマイチ
吉田 奈央さん

南木曽ろくろでつくった、吉田さんの作品。「木の魅力を伝えながら、
現代人のライフスタイルに合った器をつくっていきたい」
 長野県木曽郡南木曽町は、山深い木曽谷の南端。町の9割以上が森林で占められており、古くから木工のさかんな「木地師の里」として知られている。東京出身の吉田奈央さん(
28歳)は、ここで古くから「南木曽のろくろ細工」を手がける「木地師の里 ヤマイチ」へ、2006 年4月に入社。一人前の木地師を目指して奮闘中である。

ネットで「木地師」への道を探す
 吉田さんは学生時代、東京の多摩美術大学でガラス工芸を学んでいたが、卒業時点でガラスは一生やる仕事ではないと感じていた。それでも「素材を加工して何かをつくりたい」との思いは強く、卒業後は都内のプラスチック加工会社などでアルバイトに励む。そのうちに思い出
したのは、学生時代に体験した木工の授業だった。

木の性質や硬さを見極めながら、一つひとつ刃物をあて、削り出していく
 「磨けば磨くほど、内側からつやが出てくる。ガラスやプラスチックと違って、呼吸している。一生付き合っていける素材だと思いました」
 木工技術を習得しようと神奈川県平塚市の職業訓練校へ通い、漆器で有名な小田原の工芸センターも訪ねたが、就職先が見つからない。そんなとき、インターネットの画面で「木地師」を検索するとヤマイチのホームページにヒットする。当時は求人を出していなかったが、吉田
さんは単身現地を訪れ、「私は木地師になりたいんです。ここで働かせてください」と頼み込んだ。
 ヤマイチは、昔ながらの茶托やお椀などの身近な食器から、一枚板を使った机、手の込んだ箪笥まで、幅広い木工品を製作。工房には総勢10名の職人がいて、とくに若手は美術工芸を学んだ他府県出身者が多い。熱意が伝わり、吉田さんもその一員に加わることになった。


丸太の製材から、デザイン、製造、販売まで一貫して手がける、ヤマイチの木地師たち
木の器の新しい魅力を伝えたい
 入社後は、先輩たちの作業の手伝いや補助のほか、ケヤキの皮でつくった一輪挿しなど、最初から作品づくりも担当させてもらう。木工は初めてではなかったが、南木曽へ来て初めて漆を扱った。仕上げに塗る作業を担当したところ、入社してまもなく手がかぶれてしまった。
 「もう痒くて、痒くて、手がパンパンに腫れてしまいました。たとえ漆に直接触れてなくとも、ゴム手袋を通してかぶれるからすごい」
 漆にかぶれると、あまりのつらさに夜も眠れなくなるというが、吉田さんの場合腫れは手だけで治まり、弱音を吐かなかったことで、「奈央ちゃんは我慢強い」と、先輩たちを驚かせた。
 トチ、ケヤキ、センノキ……南木曽へ来て、いろいろな木にじかに触れられるようになった。同じサイズの茶托をつくるにしても、木によって見た目や感触、硬さ、出る木目が、まったく異なってくる。木の性質をいかすように、一つひとつつくっていくのがおもしろい。
 ヤマイチの木工は丸太を仕入れるところから始まる。皮や端材も捨てずに活用し、そこから炭をつくる。
 「その炭で火を起こし、鍛冶屋のようにろくろを引く刃物を鍛えるんです。丸太を余すところなく使うのがすごい」
 入社2年目を迎えた今も、覚えることがいっぱいで、まだまだ修業中の身。それでもいつか吉田さんは「木の新しい魅力を伝える器」をつくりたいと語る。そして、「いつか器のデザインと制作、使い方まで、トータルに提案できる。そんな木地師になりたい」と、夢を膨らませている。
【No.6(2007年初夏号)掲載】
 
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