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有機農業 第2ステージへ
日本農業に新たな展望を開く
埼玉県小川町 霜里農場 金子 美登さん |
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「有機のイチゴはそれはおいしいですよ」と、有機農業35 年の金子美登さん(埼玉県小川町の霜里農場で) |
農林省の農業者大学校(東京・多摩市、現・独立行政法人農業者大学校)の一期生として1971年に卒業し、ここ埼玉県比企郡小川町で「生態系的農業」を始めました。
「生態系的農業」とは、有機農業のことです。私が始めたときには、言葉がなかったので、「生態系的農業」と呼びました。一楽照雄さんが多肥・多薬の無機的農業を大きく有機に揺り戻そうと「有機農業」という言葉に決め、その一楽さんたちが提唱して、日本有機農業研究会がその年(71年)10月に発足しました。私は、研究会の発足と同時に入会して、以来35年間、
有機農業を実践してきました。

トラクターの燃料は廃食用油から精製したバイオディーゼル燃料を使っている。「天ぷらのにおいがするでしょう」 |
私の「霜里農場」は、水田1.5ヘクタール、畑1.5ヘクタール、合計3ヘクタールです。ほかに乳牛3頭、地飼いのニワトリ200羽、水田除草を兼ねてアイガモ100羽がいます。畑では年間約60品目(季節ごとに約20品目ずつ)の野菜をつくり、現在、約40軒の消費者と提携して、顔の見える関係のなかで生産者・消費者の提携をしています。
70年代では、有機農産物は市場で認めてもらえず、買いたたかれました。そこで、75年、米を基本にして消費者10軒と提携して、自給農場づくりを会費制(のちにお礼制)で始めました。81年からは消費者30軒を加え、米プラス野菜・卵を中心に、一袋野菜として月3〜4回提供するかたちになりました。
こうして日本の有機農業は、生産者と消費者の提携運動として発展しました。
水田は米が1ヘクタール、集落内のブロックローテーションの転作大豆・小麦が0.5ヘクタールです。20年前から地場の造り酒屋と提携して有機米の「おがわの自然酒」づくりを始めました。現在、地場のとうふ屋2軒、しょうゆ醸造会社1軒などに転作の大豆、小麦を提供しています。

地飼いのニワトリは200 羽。有機農業は有畜農業でなければならない |
有機農業推進法が06年12月、超党派の議員立法で成立、施行されました。これは、100年に一度の文字どおり「農政の大転換」といえます。国と自治体に、農業者と消費者の協力を得ながら、有機農業を推進する責務を課した画期的な法律です。
超党派で結成された有機農業推進議員連盟は、会長・谷津義男衆議員(自民)、事務局長=ツルネン・マルティ参議員(民主)、事務局次長=段本幸男参議員(自民)ですが、丸2年で10数回の勉強会と現地調査を重ねてきました。有機農業団体も一本化して事にあたるため、全国有機農業団体協議会を結成し、私が代表を務めてきました。これまでの政策の積み重ねでは越えられなかった壁を越え、人類と地球の行く末を考えた国会議員の先生方の見識と事の重要性とによって、ダイナミックな転換が図られたのです。
これまでの35年間が第1ステージとするなら、これで日本の有機農業は新たな時代、第2ステージに入りました。

いま提携する消費者は40 軒。野菜などのセットをとりにきた消費者の一人と談笑する金子さん |
私たち地域の有機農業は、造り酒屋、とうふ屋、しょうゆ屋、納豆、ソーセージ、ニンジン・トマトジュース、きな粉、麦茶と地場の食品産業と結びついています。
96年に始まった小川町自然エネルギー研究会は、02年にNPO法人小川町風土活用センター(NPOふうど)に発展しました。消費者世帯から生ゴミを分別回収し、畜ふん尿と合わせてバイオガスを発生させ燃料として利用。その後、液肥として利用するプラントをつくっています。92年に有機農家にバイオ1号機が導入され、私のところには94年に7号機を導入しました。町の環境基本計画に続いて小川町地域新エネルギービジョンに盛り込まれ、06年に500世帯用のバイオプラント1号機が事業費800万円で導入され、稼働しています。同計画では、1000世帯用3基、500世帯用8基が各地区に設置される予定です。
私たちの地域では、ようやく集落全体の転換が手に届くようになりました。
農場では有機農業に取り組む仲間を育てるため、研修生を79年から受け入れています。当初は年1人ずつでしたが、現在は年10人ずつを受け入れています。
研修生は10歳代後半から50歳代後半まで幅広い年齢層ですが、全国各地で活躍しています。
有機農業運動が第2ステージに入り、集落・地域ぐるみの取り組み、転換が進むなかで、これを引き継いで広げてくれる人たちを育てなければならないと考えています。各地に入った研修生も地域ごとに根づいて地域を変える原動力となってきており、これをさらに広げていくことが、これからの課題です。 |
プロフィール
金子美登(かねこ・よしのり)
1948年埼玉県小川町の300年続く農家に生まれる。「霜里農場」代表。58歳。71年、農林省・農業者大学校を卒業と同時に「生態系的農業」(後の有機農業)を始める。同年10月、日本有機農業研究会の発足と同時に、入会。75年、米を基本に消費者10軒と会費制(後にお礼制)で提携し始める。81年、プラス野菜・卵の一袋野菜で消費者30軒と提携。95年、仲間14人と小川町有機農業生産グループ結成。97年から就農準備校有機農業専門コース(小川教室)開校。02年「NPOふうど」発足。06年、町環境基本計画によるバイオガス新プラント1号機稼働。 |
| 【No65(2007年初夏号)掲載】 |
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