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| 塾生とともに里山を保全する |
| 福岡県黒木町 山村塾 |
体験が家族の絆を深める
福岡県八女郡黒木町は、福岡市中心部から高速を利用して車で約1時間半。清流・矢部川が町の中央を流れ、緑豊かな山々に囲まれている。八女茶やイチゴ「あまおう」の産地としても有名だ。
豊かな自然を残すこの土地に1994年、里山環境を守ることを目的にした山村塾が発足した。荒廃した棚田の復田と環境保全型農業の実践を行う稲作体験コース、風倒木被害地における広葉樹の植林などを行う山林体験コース、この2コースをメインに活動している。
受け入れ農家は、稲作が椿原寿之ファミリー、山林が宮園福夫ファミリーの2軒。会員は家族単位を基本とし、2006年度は104口の家族、個人、団体が登録している。「家族ぐるみで年間を通じて参加する」スタイルを推奨しているのは、自宅に帰ってから家族のコミュニケーションを増やすため。黒木町のお米や野菜を味わいながら、体験したことを分かち合う……それは得難い貴重な時間になると参加家族は語る。
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| 3月4日に開催された山林体験コースの植林イベントでは、1日でクヌギとコナラ1050本を植林した。参加者に里山保全の大切さを話す椿原寿之さん(右上)、山仕事のことを楽しそうに語る宮園福夫さん(左上) |

小森耕太さん・文子さん夫妻 |
移住には準備期間が必要
現在、山村塾で事務局を切り盛りしている小森耕太さん(31歳)は、福岡市内からIターンでこの地に移住して丸7年が経つ。九州芸術工科大学(現・九州大学)で里山保全を研究する重松敏則教授の研究室に入ったことがきっかけで、国際里山・田園保全ワーキングホリデーに参加し、その関連で大学時代に山村塾へ通っていた。卒業後、同塾が事務局スタッフを募集していることを知り、自ら希望したという。
2001年から4年間、椿原家に併設した「四季菜館」に住み込み、行事やイベントの企画や運営、「山村塾通信」という会員誌の作成、広報活動など、あらゆる事務局の仕事をこなした。「条件不利な農地に対して中山間地直接支払助成金が始まったころで、それを利用してスタッフを常駐させるのが椿原さんは初めてだったし、お互いに1年ごとに契約を更新していったんです」と小森さん。
その後、「森を育てる会」というボランティア団体に参加していた文子さんと04年に結婚。福岡市でOLとして働いていた生活から一転しての山村暮らしにとまどいもあったが、「軽い気持ちでボランティアをやっていたのに、いつのまにかこの世界にどっぷり浸かっちゃって」と文子さんは笑う。小森さんが四季菜館で暮らしながら、周囲の人と親しくなり、口コミで空家情報を教えてもらうなど、この地に地盤を築いたおかげで、二人の新居はスムーズに見つかった。
「移住の準備期間は絶対にあったほうがいい。自分が住める場所か、地域の住民が移住者を受け入れられるか、双方で互いを見極める期間は必要。例えばこの黒木町に移住したいなら、山村塾に2年間ほど滞在してみてはどうでしょう」
いきなり住居を探しにくる前に、町村の年中行事に参加する、ワーキングホリデーや市民農園に入会する、農家民宿に泊まる……準備の方法はいろいろある。「気候や風習を知るのも大切だが、足繁く通って住民と仲良くなればなるほど、移住が円滑に進む」と小森さんは説く。
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| 稲作体験コースは5月に稲の種まき、6月に田植えと鴨進水式、7月に草取りを行う。鴨を引き上げる古谷和己さん(左)と小森耕太さん(右) |

稲作体験コースでは、10 月に刈りを行う |
準備進む里山リーダーづくり
発足して13年が経ち、同塾の会員のなかにも10年生のようなベテランが増えてきた。そこで農村と都市の交流をさらに活性化させるため、椿原さんと宮園さんを手伝える「里山リーダー」を認定しようという動きが出ている。経験を積んだ人がリーダー講習を受講し、認定後は同塾の行事をはじめ、里山保全にかかわる農林作業を手伝うというものだ。
小森さんは「このシステムが確立し、経験豊富なリーダーが増えれば、椿原・宮園家以外のどこの農林家の手伝いでもできるようになるはず。大勢の人の力を借りて、自然環境を守っていきたい」と語る。これぞまさに都市と農村の「共存共栄」であり、成功すれば黒木町の農林業を発展させることにつながるだろう。
また、「U・Iターン者が移住の際に役立つ認定制度にすることも、もう一つの目標です」と小森さん。この認定制度が近県にも認知されればと考えている。
会員2年目の古谷和己さん(50歳)は、イベント時に班長を務める里山リーダー候補生。家族を愛知に残し、単身赴任で福岡に来ているが、夏休みなどは家族で同塾のイベントに参加している。「いずれは田舎暮らしをしたい。勉強の意味を兼ねて山村塾に参加しているんです」と古谷さん。こうした人が里山リーダー認定を受け、巣立っていく日がくるのは、そう遠い将来ではないだろう。 |
<山村塾の概要>
所在地:福岡県八女郡黒木町笠原641
TEL:0943(42)2722
メール:sannsonn@f2. dion.ne.jp
URL:http://www.h3.dion.ne.jp/~sannsonn/
●稲作体験コース
棚田6 枚(約20a)を復田し、アイガモを利用した無農薬、無化学肥料による米づくりを年間を通じて体験し、食糧の自給と、棚田の保全を目指す。年会費は合鴨米60kg が特典に付いて43,000 円。
●山林体験コース
台風による風倒木被害地に、多様な生態系の形成を目指してケヤキ、エンジュ、ヤマザクラなど約3,500本を植樹し、定期的に管理。 その他、間伐や炭焼きの体験もできる。年会費は山の幸が特典に付いて
15,000 円。
※稲作・山林両コースにあわせて入ると年会費54,000 円。両コースとも、各行事、収穫祭の参加費は無料。
●農林業体験交流施設「四季菜館」
施設使用料は3,000 円。夕食は1,000 円〜。山村塾会員は割引あり。山村塾の行事以外にも利用でき、中長期の滞在や研修も可能。
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| 【No65(2007年初夏号)掲載】 |
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