
急斜面のカンキツ園地で、下草の草勢と樹勢を確かめる越智章太郎さん(右)と研修生の下川正代さん |
有機JAS認証かんきつ農園 有限会社三皿園
愛媛県今治市の(有)三皿園は、かんきつ園全園(6.4ヘクタール)で有機JAS認証を受け、生産・販売を行っている。また、自家でのかんきつ類のジャム(マーマレード)とピールの加工をはじめ、委託加工しているジュースまで、すべて有機JAS認証を受けている。
作付けは、温州みかん2ヘクタール、晩柑類の「はるみ」2ヘクタール、デコポン0.4ヘクタール、伊予柑1.8ヘクタール、その他のかんきつ0.2ヘクタール。すべて有機・無農薬の草生栽培。園地の下草は刈らず、樹下の草だけ生育の邪魔にならないよう管理している。
同園代表の越智章太郎さん(56歳)は、有機・無農薬のかんきつ栽培に転換した理由を次のように話す。
「37歳の時、突然、全身に原因不明のじんましんが出た。この時、無農薬・無化学肥料栽培への転換を考え、1994年にまず30アールの園地を転換。05年に全園を有機・無農薬に転換し終えた」
転換していく考えを両親に相談すると、結論は「やってみい」だった。
越智家は、1902年(明治35年)から100年以上、温州みかん栽培をしている。章太郎さんは、その4代目だ。みかんづくり100年の歴史のなかで、化学合成農薬・化学肥料を使った時期はここ30年間ほど。その前の70年間は、有機・無農薬のみかん栽培だった。「元に戻るだけだ」、そう思ったという。
後継者づくり目指し研修受け入れ
ある日、一人息子の長男が「自分のやりたいことがある」と、農業を継がないことを宣言した。明治の年代からのみかん農家として栄え、67年に法人化し、ここまでやってきた。
越智さんは「一人息子が農業を継がないのなら、ほかの人間を養成しよう。農業研修生を受け入れ、人材を育てよう。幸い、園地に余裕があるから、自立経営農家の立場で、『三皿園』グループとして有機かんきつ経営を協業にしてもらうのはどうか。生果も加工原料果も不足しているのだから、グループとして増産に取り組めないだろうか」と考えた。
農業研修の受け入れを始めたのは、後継ぎの育成のためである。果樹農業は、新規就農者がゼロから農地などの経営資源を取得して農業経営を始めることが困難な経営タイプ。協業のパートナーとして、越智さんが無農薬・無化学肥料栽培を続けてきた園地に新規参入するシステムなら、少しは荷が軽くなる。

「経営に必須のパソコン技術は、若い研修生に教わっている」と越智さん |
受け入れた研修生が自立
農業研修生の一人、吉岡秀樹さん(25歳)が昨年、自立した。園地を借り、グループの一員として、有機・無農薬の草生栽培でかんきつを作っている。
かんきつ経営の場合、農業研修期間は最低3年間必要だと、越智さんはいう。
同園が農業研修生を受け入れていることをホームページなどで知り、10日に一人ほどの割合で問い合わせがあるという。月に一人くらいが10日間の短期研修にやってくる。だが、テレビで見る農業体験と違い、実際は、暑いなかで草を管理するなどの単純労働の積み重ねがメイン。3日で音を上げる人も出てくる。

三皿園のかんきつ・ジャム(マーマレード)は有機JAS認証食品として「安全・安心・健康」と好評 |
農家出身の女性が研修中
下川正代さん(22歳)は、九州東海大学を卒業したばかり。実家は、熊本県玉名市で水田10ヘクタールを経営している。大学の主任教授が越智さんの1年先輩ということもあり、在学中からメールのやりとりをし、昨年夏には同園で短期研修を体験。今年4月から、2年間の予定で長期研修生になった。
ここのかんきつ園は、急な斜面にある。下草をかき分けて上り下りし、かんきつの木の根元の草を管理する。春草は倒すだけ。春草を刈り取ってしまうと、草勢の強い夏草が繁茂してしまうからだ。
有機かんきつ園の夢を実現するために、そうした急斜面での作業研修を、下川さんは黙々とこなしていく。
「大変だけど、がんばっていく。研修を終えたら熊本に帰り、母方の祖父母が経営するみかん園2.3ヘクタールの後継ぎになって有機かんきつ農業をやりたいから」
経営者以上の人材は育たない
越智さんは「一般の会社でも、経営者以上の人材は育たないといわれる。後継者を育てるためには、自分自身を磨いて高めないと。勉強会や研究会といった機会には必ず出かけている」と話す。
また、「パソコンができないと、今の農業経営はできない。パソコンは、若い研修生から教わっている」と笑った。
協業経営を目指して
同園の商品の特徴として、加工している有機JAS認証のピールがある。これはチョコレートの芯やクッキーなどの原材料にする乾燥果皮。生ではなく、乾燥させる果皮を、このように手間をかけて有機農業でつくる人はほとんどいない。それだけに貴重な商品といえる。
「営業はほとんどしない。それでも、ホームページを見て、業者から一般のお客さんまで問い合わせがしきりにくる」
このように、栽培だけでなく、近年は加工業のほうも忙しい三皿園。
「園地・加工所・営業とそれぞれ責任者を配置して、研修修了者の自立も増やし、協業グループ経営を確立することが今後の目標」という越智さん。
自立経営農家のパートナーが増え、協業経営が軌道に乗る日は、そう遠くないかもしれない。
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