ここから始まるI・J・Uターン
気持ちを込めた分だけ
作物は返してくれる


福島県会津美里町 有限会社グリーンサービス
安永 知広さん

グリーンサービス自慢のライスダム。ここで、刈り取った稲を籾のまま乾燥・貯蔵する。右は事務所

 福島県・会津盆地に広がる水田は、1枚1枚がまっすぐな長方形をしている。ほ場整備事業の成果だ。会津産コシヒカリの食味は、魚沼産コシヒカリに匹敵する「特A」にランク付けされるという。

小学5年生
農家になろうと決めた

  「母の故郷で米づくりがしたい」と、安永知広さん(29歳)は2001年、福島県会津美里町にある(有)グリーンサービスの門を叩いた。勤続7年目。水稲作、農作業受託を中心に、同社が生産・販売している菊(切花)、長ネギ、葉もの野菜のなかで、主に稲作部門を担当している。
  安永さんが農業を職業として意識し始めたのは11歳の時。小学5年生になると社会科で日本の農業について学ぶ時間がある。もともと生き物、とくに植物に関心があり、庭に花や野菜の種をまいては、生育状態を観察するのが好きだった。また、夏休みなどに何度も母親の実家がある会津を訪れていたため、東京出身者でも農村や農家の風景に愛着をもっていた。そんな時、授業で「農業は後継者不足」と聞く。教科書に載っている農家の写真も、心に焼き付いた会津の風景に重なった。「農家になろう」と決めた瞬間だった。


新國文英代表

農業法人の研修生としてスタート
  それから先は、農業への道まっしぐら。両親の希望もあり高校は普通科に進んだが、その後、茨城県にある日本農業実践学園に進学。専攻はコメを選んだ。2年間の助手時代も含め、4年間稲作を学ぶ。
  就農活動の一環で参加した新・農業人フェアでは、迷わず福島県のブースへ。稲作希望ということで紹介されたグリーンサービスに、その場で公衆電話から電話する。翌日には、同社の面接を受けに会津を訪れた。速攻だった。
  グリーンサービスは新國文英さんを中心に、先進的農家が集まって86年に設立した農業生産法人(当時は農事組合法人桧の目新田生産組合)。現在は代表取締役の新國文英さんと取締役1名ほか、正社員5名、嘱託社員1名で運営している。雇用していた男性が1人辞めたところに安永さんが面接に現れた。タイミングはよかったが、「いずれ独立を前提に」と考える安永さんの雇用については、工夫も必要だった。
  「最初は1年間の研修生ということで始めたが、彼はまじめだし、技術もあったので、途中で正式雇用に切り替えた。その翌年、できたばかりの『一般農業法人雇用研修活動支援事業』という国の制度を利用して、外部の研修にも参加できるようにした」と新國さん。自営で農業をしていくのなら、いろいろな人や経営方法を見てほしいと思ったからだ。


刈払機であぜ草刈りをする安永さん

米農家への道を模索中
  安永さんは、「作物は気持ちを込めた分だけ返してくれる」「農作業の一つひとつが好き」と農業の魅力を語る。だが、このところ将来への不安も感じている。
  稲作を巡る環境は厳しさを増している。そのうえ独立を目指すとなると、農地や機械、販路の確保など、難しい問題が山積みだ。これらをどうクリアし、幼少からの夢を実現するか、模索中である。
  困難を実感しつつも、あくまで日本の主食であるコメにこだわりたいという安永さん。これから農業を志す人へのアドバイスはとたずねると、「職業として考えるなら、自分がつくりたいのはなにか、どんな農業をしたいのかを明確に持ってほしい。そして、私は食べものをつくる農業という職業に誇りを持っています」と姿勢を正して答えてくれた。

【No.7(2007年秋号)掲載】
 
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