
チェーンソーで間伐材を倒す。「一本一本倒れる方向を考えながら作業するのが楽しい」 |
以前は山とかけ離れた生活
「20代のころは今と正反対の生活をしてました。フリーターをして、遊ぶのもクラブに行ったりとか…」と語る須田勝久さん(31歳)。政令指定都市・仙台を拠点とする宮城中央森林組合で働き始めて2年ほどになる。
須田さんが林業への夢を抱くようになったのは20代後半のこと。何度か就職もしたが、一生をかける仕事ではないという気持ちがいつもあった。真剣にやりたい仕事を探して各地を転々とし、幼いころ暮らしていた仙台に戻ったとき、ふと「林業」の2文字が浮かんだ。聞けば「じいちゃんが国有林の伐採に携わっていた。もしかすると血筋の影響もあるのかもしれない」という。
意気込んだ須田さんは、体当たりで複数の森林組合に電話をかける。現在所属する宮城中央森林組合にも問い合わせたのだが、いずれの組合からも「今、求人はしていないんですよ」という答えが返ってきた。
1年以上ふんばって林業へ就業
インターネットや職業安定所などで情報収集をするなかで、石巻の森林組合から好感触を得たり、富良野で林業に従事する親類から「こっちに来てもいいよ」という誘いも受けた。だが冷静になると「完全に都会から離れた場所に住むのもいいけど、若いうちだとそのうち飽きちゃうんじゃないかな」と感じた。なにより、当時付き合っていた仙台在住の奥さんを結婚前から現地に連れていくという無理はできなかった。
そこで仙台近辺に候補地を絞り、林業労働力確保支援センターに登録。チェーンソーと刈払機の安全教育の資格を取り、職業安定所に通うかたわら、アルバイトで食いつないだ。ほどなく、厚生労働省の施策「緊急地域雇用創出特別対策推進事業」による林業の短期間の仕事を発見。それが終わるとまたアルバイトに戻り、再び情報を収集して、今度は1年間の実地研修を行う「緑の雇用担い手対策事業」の「緑の研修生」に。研修後に面接を受け、ようやく組合作業班員として採用された。夢を追い始めてから1年以上が経っていた。同組合の業務課長・上野正宏さんは「仕事ぶりもまじめで、『山で仕事していきたい』という意思を表わしていました。ほかにも同じような気持ちの人はいましたが、素直に見えましたね」と採用の決め手を話してくれた。

山・海・街のいずれも揃う仙台での就業は、安定感も刺激もある。まだ30代の須田さん夫婦にとって理想的な環境のよう |
毎日、違う仕事をするのが楽しい
現在須田さんは、森林の過密化を防ぐために間引かれる間伐材の伐採を中心に行っている。ベテランの班長と1年先輩のいる作業班で、間伐から集材までを一貫して行う。また、電線にかかった木を取り払ったり、街中の雑草を刈る作業をすることもある。最初は現場の山に登りきるまでにばてることもあった。「緑の雇用事業」で入った仲間が去っていく場面を何度も見てきた。だが、須田さん自身は辞めたいと思ったことはない。
「体力と金銭面で悩む人が多いのかなと思いますけど、僕らは生活できる分はきちんともらっています」
淡々と語るなかにも「それに、やっぱり本当にやりたいと思った仕事だから」と、一瞬真剣な表情をのぞかせた。
ライフスタイルにも変化が
仕事を始めてから生活習慣は一変した。朝9時ごろに山に入り、夕方4時半には仕事を終える規則正しい生活。早起きが苦手だったはずが今では6時には目が覚める。最近では、人工の壁を身体のみを使ってよじ登るインドアフリークライミングが趣味になった。休みの日には奥さんと2人で手をまめだらけにしながら汗を流している。
「興味を持ち始めたのも、林業に就いたおかげ。今は遊びも、昼間じゃないとできないことが楽しくて。まだみんなに追いつかない感じはありますけど、でも少しは体力がついてきたのかなって実感はあります」
日々の充実感に輝く顔がまぶしかった。
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