
「鰺ヶ沢に来てから健康的な生活になりました」と福間さん |
自然の近くで暮らしたい
樹齢200年を越えるブナの原生林がうっそうと茂る深く美しい森に覆われ、「後世に残すべき」と世界が認めた地「白神山地」。この山懐に抱かれた鯵ヶ沢に福間功さん(58歳)がやってきたのは1999年のこと。東京で会社員をしながら、ゆくゆくは趣味の山登りを気軽に楽しめるよう「山の近くに行きたい」と思っていた。
そこで50歳を機に田舎で暮らそうと決心。根気よく仕事を探し、この地の森林組合で森林作業員として働くことに決まり、移住してきた。デスクワークしかしたことがなかったが、やがて仕事にも慣れ、休日は山登りのほか、白神山地の核心部となる散策エリア「ミニ白神」でガイドのボランティアもするようになった。目指したセカンドライフを手に入れることができた。ところが─。

根を守る福間さん製作の橋 |
ボランティアが転じて
実は福間さんは、さまざまな国に何度となく語学留学をしてきた語学の達人だ。「好きなだけです」というが、酪農団体に7年勤めた後、3年近くアメリカに留学。以後、海運会社、厨房メーカー勤務の後、スペイン、フランスに3年、大手運送会社勤務の後、ドイツ、イタリアに2年と続く。
ガイドのボランティアもこの語学力をいかしていたわけだが、あるとき、鯵ヶ沢町役場から打診があった。「常駐でガイドもしながら『ミニ白神』の整備をする仕事をしてくれないか」とのこと。その仕事とは、町の財産である古木の管理や、遊歩道の整備をするという内容。移住してから培った森林作業員としての技術と、移住するまでに身に付けた確かな語学力を買われた形だ。
鯵ヶ沢町観光商工課の齋藤正明さんは「ガイドをやってもらっていたし、福間さんの経歴のことは知っていましたから」と称賛。「ミニ白神」の事務局である「くろもり館」で推挙の理由を話してくれた。
「驚きましたね。とても興味がありました」と、経緯を振り返る福間さんは、かくして「ミニ白神」の守人になった。

風雪に耐えてきた古木の樹肌 |
試行錯誤の毎日が楽しい
福間さんの毎日の仕事は多岐にわたる。朝一番は遊歩道の点検、台風の後には折れた枝を切り落とし、ぬかるんだ土が露出している場所には丸太を並べて通路を製作。急斜面なら直径40センチほどの丸太を斜めにスライスして階段を作る。
「この前は、露出した木の根を守るため橋を作ったんですよ」といって案内してくれた場所には、この森で最も古いブナの大木が、堂々とした姿で構えていた。樹齢は300年を越えるという。手前には根を守るように橋が渡されている。
「訪れた人が思惑どおり橋を渡ってくれるとうれしいですね。でも雨水が流れるせいで地形は常に変わります。構造物がぐらついたら危ないので、安全確保が大変で、試行錯誤の毎日です」といいながらも、ともに森の中を歩きながらいくつもの「作品」の説明をしてくれる福間さんの表情は、室内で話しているときとは比べものにならないほどいきいきとしている。挑戦しがいのある、充実したセカンドライフは始まったばかりだ。
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