
200筆にも分かれる畑の場所を覚えるのも今の大事な仕事 |
なかなか踏み出せなかった
「あと1歩」
廣瀬将考さん(28歳)は、4月に茨城県東海村の農業生産法人・(株)照沼勝一商店に就職したばかり。農業に関心を抱いてから、実際土に手を触れて働き始めるまで、10年以上かかった。「あと一歩がなかなか踏み出せなかった」と語る。
千葉市稲毛区で育ち、周辺には田んぼも畑もなく、農業とは無縁だった。高校生のとき、電車で青年海外協力隊の広告に目をひかれた。「こういう世界や生き方があるのか。日本では食べられて当たり前なのに」と衝撃を受けたという。農への関心が芽生えたきっかけだった。
大学では環境保全について学び、「さて就職」という段で迷った。「青年海外協力隊のパンフは取り寄せたものの、一歩を踏み出せなかった」と話す。「食と農をつなぐ仕事をしよう」と大手外食産業への就職を選んだ。
しかし、マネジメントなどの仕事をこなすうちに「食の提供の基本はやはり作ることだ」と、農業への思いが強まり、3年半で退職することにした。

中国からの研修生を指導。責任はあるが学びも大きい |
きっかけは
全国新規就農相談センター
会社は辞めたものの、具体策に迷って悶々とする日々を送った。道を拓くきっかけになったのは、全国新規就農相談センターを訪ねたことだ。
「いきなり法人就職、という道もあったのですが、農業のことを何も知らないのが不安で、ためらいがあった」
「それなら」と同センターが紹介してくれたのが、水戸市にある日本農業実践学園。1年間、幅広く農業の基礎を学ぶことができると聞いて、ようやく一歩が踏み出せた。
「学園では毎日が実践で、勉強になった。土いじりが単純に楽しく、夏の暑さや冬の寒さも苦にならなかった」
単に基礎知識を得ただけでなく、農業でやっていく決心ができたことも大きな収穫だったと語る。
修了後に法人就職を選んだのは、慎重な廣瀬さんらしく「働きながら技術や農業経営のノウハウを学びたい」と考えたから。
照沼勝一商店は学園からの紹介だったが、さらに「新・農業人フェア」で照沼勝浩社長(44歳)と話し、「目指す道が似ている」と感じて、就職を決めた。
「段階を踏み、回り道をして、いろいろ体験したからこそ最後の一歩を踏み切れた」

広い農場でトラクターを繰るのは初めて |
企業の経営感覚と都会の
スピード感に寄せられた期待
一方、社長はその「回り道」を評価して廣瀬さんを採用した。「外食産業で培った企業の経営感覚と、都会のスピード感は得がたい」と語り、会社の中心的役割を担ってほしいと、将来に期待をかける。
同社は50ヘクタールのサツマイモ栽培と干し芋加工を中心に経営してきたが、5年ほど前からエコファーマー認定を受け、独自農法を導入するなど、経営改善を進めている。
廣瀬さんは現在、昨年導入された加工用トマトの栽培を担当。病害虫などの対応と判断に悩みつつも「毎日の農作業は楽しくておもしろい」と充実した笑顔を見せる。
「今はできるだけ多くを吸収したい。将来は農業に対する世間のマイナスイメージを変えるような仕事をしたい」
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