
ISO9001の認証を取得した永井農場。企業体としての体制を整え、農業経営の持続と発展を目指す永井進専務 |
私たち(有)永井農場は、地域とともに歩みながら、栽培から加工・販売まで行う新しいカタチのファーム(農場)という自負があります。
酪農プラス水稲作、果樹(ブドウ)、野菜(アスパラ、ニンニク)を主力にした有畜複合経営による有機リサイクル農業を実践しています。
1996年の有限会社設立から10年経ち、役員も含め従業員も10人になりました。そこで、06年に品質管理の国際規格ISO9001の認証を取得しました。
代表取締役社長である父親(永井忠)も、専務取締役である私(永井進)も、一般の企業に勤めた経験がありません。有限会社とはいえ、これまでは家族農業の延長といった面がありました。だから、ISO9001の認証取得の際には、企業体としての体制を整えることを優先させました。経営の主力である稲作の田植えや収穫など作業工程を洗い出し、マニュアルとして文書化しました。また、経営管理の面では、受発注伝票の処理方法や連絡体制などを明確にしました。
ISO(国際標準化機構)の規格認証シリーズは、企業等の環境管理の国際規格であるISO14001が着目されていますが、あえて品質管理の国際規格ISO9001の認証を取得したのは、企業経営を確立するとともに体制を充実させたいという狙いからです。これから農業経営が持続していくためには、企業体としての経営確立が第一と考えたのです。

永井農場の原点は、酪農部門 |
この長野県の東御市一帯は、20アール規模の飯米農家が多い兼業農家地帯です。
そのなかで、祖父の代から牛を飼っていました。1944年生まれの父は、農業基本法の制定(1961年)直後、高校を卒業してすぐに農業に就きました。土地利用集積による土地利用型農業の経営規模拡大がままならない時期でしたので、父は、酪農なら規模拡大ができると、本格的に酪農経営に取り組み、頭数や規模を拡大してきました。
父のそうした姿を見て育ちましたので、私も酪農に夢を抱きました。中学卒業後、北海道に行き、酪農学園大学付属高校で学び、酪農学園短大を卒業。20歳でここ長野に帰って、農業に就いたのです。

田植え作業中の永井忠社長。「地域の稲作作業を受託する地域農業の担い手であり続けたい」 |
私が就農した92年当時、父は酪農経営とともに集落内の兼業農家の水田を預かり、稲作を6ヘクタールほど経営していました。
現在の永井農場の稲作は自家作付面積20ヘクタール(所有地2ヘクタール、借り入れ地18ヘクタール)。稲作の作業受託が、耕起・代かき20ヘクタール、田植え15ヘクタール、刈り取り16ヘクタール、その他作業27ヘクタールです。自家のライスセンターで乾燥・調製34ヘクタール分、籾摺り5500俵(1俵が60キロ)。育苗が苗箱1万枚あります。
父は、83年から特別栽培米に取り組み、私の就農した92年に、その年からスタートした特別栽培米に取り組みました。現在、すべて有機低農薬米(除草剤1回散布のみ)で、内訳は個人消費者への直売が3分の1、米小売店への販売が3分の1、スーパーなどが3分の1。レストランやホテルなどへの直売もしています。米は、原料米の生産履歴、製品精米の製造履歴、発送先をトレースしています。
米以外に経営しているのは、大きく分けて加工品、果樹、野菜、酪農の4種類。
加工品は、杵つき餅の自家加工、せんべい、こだわりみそ、玄米茶などの委託加工・販売がメインです。

永井農場 |
果樹はブドウで、巨峰0・7ヘクタール、醸造用のシャルドネ、メルローなどが2ヘクタール。
野菜は、アスパラ0・6ヘクタール、ニンニク0・2ヘクタールつくっています。
酪農は、経産牛28頭(平均乳量8500g)、育成牛15頭、牧草地6・5ヘクタールで、生乳は農協に出荷しています。
就農したばかりのころは、受託した稲作の作業をしていると、作業を委託した農家のおじいさん、おばあさんから「永井農場のおかげで米づくりが続けられる」といっていただいたことを覚えています。その時、「この人たちと一緒に米づくりをしているんだ」という認識を強めました。

永井農場のオフィス。社員が一丸となって新たな経営スタイル“小さいというスケール・メリットをいかせる経営”を構築しようとしている |
現在では、3集落の60%にあたる120戸分の稲作作業を受託しています。
しかし、時を経て作業の様子を見守ってくださるお年寄りは少なくなりました。今年ほど、米づくりをする人たちが少なくなったと感じて、寂しく思われた年はありません。
これからも水田の借り入れや全面作業受託の面積が増えていくと思います。いっきょに経営規模を拡大することは考えていません。自然増で少しずつ拡大できればいいと思います。「永井農場があることで、この地域の水田の耕作が続いている」といわれるように、 地域農業の担い手であり続けることが私たちの願いです。
ワイン・プロジェクトを06年から始めました。醸造用ブドウ園を拡大し、専属の従業員を置いています。
日本で一番小さなワイナリー≠ナいい。地元で消費する、この地でしか味わえないワインづくり、をコンセプトにワイン醸造に取り組んでいます。
酪農も、少頭数だからできること、小さいスケール・メリット≠ェいかせる経営にしたいと考えています。生乳をフレッシュ・チーズに加工して販売したい。
ワインとチーズ、どちらも地元での消費を考えながらつくっています。国産ブドウのワイン、国産の餌で育てた牛から搾った牛乳でつくったチーズ、といった永井農場ならではの純国産<uランドの再構築を目指していきたいのです。
そのために、多様な人材がほしい。当面は労働力として、行く行くは経営の仲間・パートナーとしての役割を担っていけるような人。そんな人を求めています。
また、将来は独立して農業を自営したいという人も歓迎です。ワインとチーズが製造・販売できるようになったら、この地域でレストランを開きたいという人も迎えたいと考えています。
地域とともに、地域のなかで企業的農業経営を確立する。企業的農業経営を核に、地産地消を基本に地域の発展を図る。そうした地域が増え、互いにネットワークを結べば、日本農業の将来が見えてくると私たちは考えています。 |