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漁業を軸に、まちを活気づける

北海道留萌市・小平町 新星マリン漁業協同組合専務理事 小河 守さん

 かつて、海の色が変わるほどニシンの大群が押し寄せていた北海道日本海沿岸・留萌管内。ニシン漁で富を手にした漁業経営者は長者番付にも名を連ねるほどで、海沿いには「ニシン御殿」が建ち並び、出稼ぎも含め大勢の漁師たちであふれかえっていました。
  しかし、地域を潤したニシンは、1954年を最後にぱったりと捕れなくなってしまった。はっきりした原因はわかっていませんが、乱獲や自然環境の変化が影響しているのでしょう。借金を抱えたまま多くの漁業経営者が手を引いていくなかで、希望の光となったのがホタテ養殖です。
  8〜9名の漁師が始めたホタテ養殖は、養殖施設が沖に流されるなど多くの苦労があったようですが、試行錯誤の末、安定的に出荷できるようになり、いまでは北海道のホタテ種苗の生産を代表する地域となっています。「捕る漁業」から「つくり育てる漁業」へ、うまく転換できた結果でしょう。
  世界規模で水産資源の減少が危ぶまれるなか、漁業も「いかに、つくり育てていくか」を考える時代になっていると思います。 


ホタテ稚貝は道内の他の地域に出荷され、成貝になるまで養殖される

 漁業の活力を維持するためには、漁師という職業に魅力がなければならない。収入を増やすことも、その一つです。
  新星マリン漁協では、今年4月から、車で2時間半の距離にある旭川市内のスーパーと契約。漁協所属の刺し網漁船2隻が毎朝水揚げするすべての漁獲物を買い取り、直接販売する取り組みを始めました。
  魚の運搬には、留萌で商品配達した後、旭川に戻るこのスーパーのトラックを活用しています。輸送費節減になるだけでなく、「仲買→小売」という流通ルートで店頭に並ぶまで一日半かかっていた時間を半日にまで短縮できます。運搬用の箱も、使い捨ての発泡スチロールではなくリサイクル容器を使用して、さらなる経費節減と環境保護に。もちろん、漁師の収入アップと安定収入につながります。
  消費者には、水揚げしたばかりの新鮮さに加え、市価2割引きの安さ、それに漁獲量が少なくいままで取り扱えなかった魚種が店頭に並んでいることから、とても喜ばれているようです。
  原油高の影響もあり、船の燃料費や漁獲物の運搬費など、漁業にかかる経費は年々上がってきています。そのような状況のなかで、少しでも経費を抑えて、漁師の収入が増えるように知恵を絞っていかなければなりません。


タコルーレットを使った抽選の様子。水槽の中にセットしたタコ箱の中にタコが入ったら「当たり」

 留萌管内ではホタテ養殖のほかに、ヒラメ、タコ、エビの漁が盛んです。2005年に設置された「留萌管内お魚普及協議会」では、これらの普及・宣伝のための活動をしています。昨年度は、刺身以外で食べることの少ないヒラメを、もっといろんな調理方法で食べてもらおうと、漁協女性部の協力を得て「ひらめ料理レシピ集」を作成し、道外からも好評を博しました。
  今年度は、留萌のタコの知名度アップを目指し、北海道庁留萌支庁との共同で「タコ箱漁オーナー」を募集しました。これは、タコ箱1個を海へ2カ月間設置する権利を5千円で買ってもらい、期間中5回引き揚げたなかで、タコが入っていたら浜ゆでしてオーナーに送るというものです。1箱1回の引き揚げあたりの確率は5〜20%と高くないのですが、50人の募集に対し、なんと全国から2万2千人以上の応募が殺到。急きょ、募集を100人に増やしたものの、220倍と高い競争率になりました。
  抽選は、毎月、漁協主催で行っている産直市「うまいよるもい市」のイベントの一環として、タコルーレットという手法で行ったのですが、話題性もあって全国ネットのテレビでも紹介されました。これで、「留萌のタコ」の知名度も上がったかな。
漁師の収入を確保するためにも、消費拡大と魚価を高める取り組みは欠かせません。


海外からの研修生のもとへ自ら足を運んで耳を傾ける

 全国的に見ると、沿岸漁業ではほかの仕事との兼業も多いようですが、北海道では漁業専業で収入を得る人が多い。その分、規模も大きいんですけどね。しかし、漁師の数は減る一方で、60歳以上が3割超と高齢化が進んでいます。これは、まちの過疎化や高齢化とも重なります。
  我がまちにとって漁業は重要な基盤産業ですし、そこに活力がなくなるとまち全体の活気がなくなってしまいます。ですから、なんとか活気づけていこうと、人材確保にも力を入れています。今春から、沿岸漁業では初めて海外からホタテ養殖の研修生を受け入れています。
  新規就業者については、過去3年間で道外からの1名を含む5名が、漁業の担い手として頑張ってくれていますよ。私たちが来てほしいのは「漁業一本でメシを食っていくんだ」という気構えのある人。その気概に対しては、きちんとフォローアップしていきたい。収入確保に向けた取り組みも、さまざまな角度から行っていくつもりです。


海岸に積んだタコ箱。1本のロープに50個をつなぎ、海中に沈める

 新星マリン漁協は03年4月に留萌市と小平町の2つの漁協が合併して誕生しました。地名の入らない漁協は、全国でも例がないんじゃないかな。
  新たな可能性を見つけ出すためには、範囲を狭く限定しないほうがいいでしょうね。よく官民協同といわれますが、官と民で助け合うだけでなく、漁業と農業、商業といった業界の垣根、ときには地域の垣根も越えた取り組みもおもしろい。漁業がそのリード役になって、地域を照らす「星」になっていきたいですね。

 


「漁師を支えるのは漁協の役割」という強い使命感のもと、 会議や挨拶回りで多忙な日々を送る小河守さん
プロフィール
小河 守(おがわ・まもる)
1950年、北海道小平町生まれ。1974年当時の小平漁協に就職して以降、地域漁業の発展のために尽力、とりわけ漁家経営の効率化に努めてきた。1994年小平漁協参事に就任し、留萌漁協との合併で2003年より新星マリン漁業協同組合専務理事に。「まだ誰もやっていない新しいことにチャレンジしていきたい」といろいろな策を練るアイデアマン。留萌管内お魚普及協議会会長という立場からも、漁業発展に力を注ぐ。
【No7(2007年秋号)掲載】
 
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