
浜中町就農者研修牧場で研修中の黒木さん(中央)、新さん(左)、菅田さん(右)の家族 |
酪農の町・浜中町に、浜中町就農者研修牧場がある。新規就農希望者のための酪農家養成トレーニング施設だ。1991年に浜中町と浜中町農協が設立、2004年に有限会社に組織替えした。
この町の人口は7200人。酪農家210戸が乳牛2万3000頭を飼い、生乳9万3000tを生産する一大酪農地帯だ。ここの牛乳はハーゲンダッツ・アイスクリームの原料となるなど高品質。近代化、規模拡大が進んだが、高齢化や後継者不足などから、酪農家戸数が減少している。そこで人材の確保と育成のために、研修牧場が設立された。

搾乳作業中の黒木智子さん(右)と新郁子さん |
酪農に新規参入24組
酪農には、83年から新規参入者の就農が始まった。82年度から始まった北海道農業開発公社の牧場リース事業を利用した新規参入者の就農である。都市出身の新規参入者が多いため、就農前に酪農経営を基礎から学び、技術や知識・経験を蓄積して経営をスムーズに始めるための研修牧場がつくられた。
その結果、新規参入の酪農家は、町の酪農家戸数の1割を超すほど増加している。
2〜3年間、夫婦で研修
05年6月に研修を始めた黒木圭太さん(32歳)と奥さんの智子さんは、この10月に研修を終え、11月に入植する。離農跡の牧場を引き継ぎ、搾乳牛44頭、牧草地70haでスタートする。浜中町酪農への新規参入24組目、研修牧場修了者としては12組目となる。
「しっかりと指導が受けられ、2年ほどで基本的な技術が身に付いた。後は自分で実践する段階を迎えた」と黒木さん。
黒木さんは大阪出身。大学卒業後、建築関係の会社に勤めていたが、学生時代にバイクでツーリングした北海道移住の夢が忘れられなかった。智子さんと娘3人と一緒に北海道への移住を決意した。
「研修中も生活費はかかる。決まった給与があり、生活の心配がなかったから浜中を選んだ」と黒木さん。
浜中町の研修牧場では、研修生は従業員扱い。夫婦二人で月額25万円(年間300万円)支給される。
「やはり『人間関係がわずらわしいから田舎に』というのは考え違い。周囲の人との付き合いは濃い。経営を軌道に乗せるにも、暮らすにも周囲の応援は欠かせない」というのが実感。
地域の人や関係機関との関係を研修牧場がつないでくれた。
新一郎さん(39歳)は、奥さんの郁子さんと研修を受け、現在1年目。若いころから農業に興味があったが、資金面であきらめていた。しかし、06年夏の「新・農業人フェア」で浜中町の話を聞き、就農を決意した。子ども2人が心配だったが、「牧場もサポートしてくれたし、子どもたちは浜中での生活にすぐ慣れた」と笑う。黒木さんも同じ意見だ。

「子どもたちのことを考えると、子牛の哺育も優しくなり、うまくなった」と黒木圭太さん |
菅田実津留さん(24歳)も同じく、「新・農業人フェア」がきっかけで、大学卒業後、結婚と同時に06年4月から浜中町へ移住。研修2年目だ。本格的な酪農経営を目指して研修に入った。子どもが生まれ、家族づくりと酪農経営、二つの夢に向かって奮闘中である。
酪農をする体力、冬の寒さについては「最初はきついが、1年過ごせば慣れる」と黒木さんと菅田さんはいう。
この9月には石川出身の夫婦が研修に加わり、就農を目指す。
やる気・根気・元気
「研修生に必要なのは、やる気・根気・元気」というのが浜中のモットー。
研修牧場の有限会社化によって、離農する牧場の早期再編、農地利用集積ができるようになった。現在は、本場で研修生3組が学んでいるほか、離農跡牧場3つを分場にして、研修生夫婦3組が実践研修を行っている。 |