
就農希望者長期研修生の皆さん。「同じ志を持った仲間と、互いに刺激し吸収し合えるのがいい」と、みな口々に語る。前列左から佐藤さん、小杉さん夫妻 |
高知県での就農はお任せ
高知県立農業大学校研修課が「窪川あぐり体験塾」を開設したのは2003年。U・Iターン就農の促進と、“開かれた農業大学校”づくりを目標に、現在に至るまで多岐にわたる事業を展開してきた。「高知県は、県全体が一丸となって就農支援に取り組んでいます。窪川アグリ体験塾は、その入り口役を担っています」と、研修課長の川瀬一郎さんは語る。
2つのサポート事業
U・Iターン就農支援事業には、大きく分けて二つある。一つは、インターネットでの通信教育とスクーリングからなる「新いなかビジネススクール」。他産業の仕事につきながら、農業についての予備知識を自宅で学ぶことができるのが特徴だ。さらに希望者は、年に数回開かれる2泊3日のスクーリングに参加し、実際に農業体験や農家訪問研修を受けることも可能。このプロセスを通して、資金面や移住時期などを判断してもらうことも狙いだ。「農業について漠然としたイメージしかない人は、ここから入ることを勧めています」と研修課主任の松下健一さん。
もう一つは、就農の意思が固まった人のための「就農希望者長期研修」。研修を受けながら12カ月以内に県内に就農することを目指す。12カ月は短いように思えるが、「農業はやりながら身に付けていく部分が大きい。また、その土地に合った技術が必要だから、ある程度まで到達したら、早く現場を持ったほうがいい」というのが理由だ。今年度からは、同研修内に熟年コースもできた。

ハウス内の土を、次の作物に向け準備中の小杉さん(右)と野崎義徳さん(38歳)。「サラリーマン時代は休日が恋しかったが、今は明日が待ち遠しい」と話す野崎さんは高知市出身 |
半数以上が県外からの就農希望者
長期研修の第一段階は、作物、土壌・肥料、農作業など全般的な基礎知識や技術を学ぶ。続いて、ミニチュア版で農業経営をシミュレーション。これによって自分の目指す農業を想定し、栽培管理から出荷までを実践する。最終段階は、就農活動。ここで威力を発揮するのが、高知県独自の就農支援ネットワーク。県内23市町村及び関連組織が連携し、より適切な就農地探しをサポートしている。
現在の就農希望者長期研修生(随時受付)は11人で、うち6人が県外出身者だ。小杉正樹さん(35歳)、路津子さん(35歳)夫妻は千葉県松戸市からの移住者。数年前から就農を考えていたところ、「新・農業人フェア」で松下さんと出合い、2年後に高知移住を目指して準備を始めた。「四国のイメージがまったくなかったので、どこかクッションになる施設に入りたかった」という二人。実習してみて、思いのほか農業という仕事が合っていることを確認した正樹さんは、「爪に土が入っているのを見ると、ニタニタしちゃんですよね」と笑う。

キュウリの枝おろしをする小杉さん |
「第二の人生を考えた時、農業が浮かんだ」というのは、佐藤巧さん(56歳)。北海道出身で、東京で小売業の仕事をしていた。高知は「雪のないところがよかった」のだとか。また、妻の実家が土佐清水市だったことも、決断を後押しした。今年のメンバーのなかではリーダー格。「ここは土地も肥料も機械もそろっているし、いろんな人がいろんな作物に挑戦しているから、一人でやるより短期間で効率的に学べる」と、メリットを語る。
施設は食堂や宿泊所のほか、図書室も完備。「主役は研修生、目的は就農」を合い言葉に、皆が自由に学べる環境づくりを大切にしている。「ここにいるうちに、できるだけたくさん失敗しておけっていっているんです」と話す松下さんら職員は、研修生の家庭教師的存在だ。 |