
「最初は現場の仕事で精一杯。慣れると鶏の状態を気遣えるようになります」 |
熊本県菊池市の農業生産法人コッコファームは、広大な敷地の中で、約8万羽もの鶏を飼育している。直売所の「ふれあい館」には、新鮮な「朝取りたまご」を求めて、開店前から行列ができる人気ぶり。加工品の販売や、オムライスと親子丼専門店の「健食館」も運営する「卵の総合商社」である。
動物が大好きで農学部へ
寺村奈津子さん(26歳)は、入社4年目。成鶏部門に所属。鶏の飼育と同時に、水や飼料の減り具合、産卵数などの数値をチェックし、成育状況や衛生面のデータを管理するのも日々の仕事だ。
「私が記録したデータを基に、鶏が元気になってくれたり、産卵率が上がったりした時はうれしいですね」

「大切なのは、鶏と話ができることです」と松岡義博社長 |
体の線が細く色白で、物静か─そんな寺村さん。入社当時から鶏と一緒に仕事ができる「現場」を希望していた。
愛媛県松山市生まれ。サラリーマンの家庭に育ち、子どものころから動物が好きだった。「もっといろんな動物と触れ合いたい」と鹿児島大学農学部へ進学。卒業論文のテーマは「鶏と飼料の関係について」。豆腐粕などの食物残渣を飼料化して鶏に与え、その影響を調べるというもので、パソコンを使い、データを記録する方法は、学生時代に身に付けた。
「卒業しても動物のそばで働きたい」
ネットのHPでコッコファームの存在を知ったが、当時の採用枠はなかった。「それなら見学だけでも」と、書きかけの卒論を携えて車で現地を訪れ、松岡義博社長との面接に漕ぎ着けた。当時を振り返り、社長は「決して饒舌なタイプではないけれど、強い思い≠感じた」という。こうして入社が決定した。

「コッコファーム」は、鶏舎、直売所、レストラン、観光バナナ園、展望庵のある、自然循環型テーマパーク |
緻密なデータで産卵率アップ
入社1年目は、生まれたての雛を外部から受け入れて育てる育成舎の仕事をした。当時は現場の仕事をこなすだけで精一杯の日々だった。また、会社としても生産現場に若い女性が入るのは初めてで、ほかの社員は「お互い慣れないこともあって、『これは女性の仕事じゃない』とか、気を使うことが多かったですね」と当時を振り返る。
その後、卵を産む成鶏舎へ。鶏の世話と並行して、温度や湿度、飼料や水の減り具合を調べ、日齢の違う鶏の体重測定などを行った後、パソコンに向かい、数値を打ち込んでいる。
コッコファームでは、かつて現場担当者の「カン」に頼って飼育方針を決める部分が多かった。だが、寺村さんが入ったことで客観的なデータに基づいた飼育計画を立てられるようになり、それが産卵率アップに繋がっている。
自ら400羽の鶏を飼育して会社を起こした松岡社長は、養鶏の仕事は「いかに鶏と話ができるか」が大切と語る。
「鶏と同じ気持ちを共有できれば、上司の指示がなくても動けるようになります」
今年で4年目。最近寺村さんは「今日は蒸し暑いから、産卵率が減るかも」など、予測できるようになってきた。
「5年後、10年後のことはわからないけれど、やっぱり動物と接していたい」
日々のデータをとり続けながら、鶏と「話のできる生産者」を目指している。
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