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互いに学び
かけがえのないものを得る
山形県高畠町 たかはた共生塾「まほろばの里農学校」


ゆうきの里さんさんの宿泊コテージ(手前)と和田民俗資料館(一番奥)
まほろばの里の農学校
  たかはた共生塾(以下、共生塾)(中川信行塾長)のモットーは「共に学び、共に育つ」。有機農業運動をつうじて、国内外の人たちと交流を続けている。
  共生塾の「まほろばの里農学校(以下、農学校)」は、前期(6月)と後期(9月)に分け、生徒に農村体験の機会を提供するとともに、農作業を教えている。今年で開校16年目を数える。
  今回は前・後期とも全国各地と海外(アメリカ在住の日本人やメキシコなど)から20名が参加した。前期は水田の除草やブドウ園の管理、後期は稲刈りやそば打ち体験など、内容は盛りだくさん。なかでも夕食時の交流会は、農作業体験の楽しさの余韻もあり、あちこちで話が弾む。
  農学校の卒業生は、累計で380人ほど。農業体験をした後、有機農家で実習や手伝いを2、3度経験すると、「たかはた病」になるという。「高畠に来ないではいられない」という意味だ。最終的には、高畠に移住する人も少なくない。
共生塾の遠藤周次事務局長は、「高畠町に新規参入して農業を始めた人は、ざっと数えただけでも80人は超える。そのうち、農学校の卒業生は家族も入れると30人近い」と話す。

一楽照雄さんの碑の前で、中川信行塾長(手前)と遠藤周次事務局長
  「まほろばの里」とは、周囲が山々に囲まれ里山の景観、美しい風景をもった、収穫物が多い豊かな土地、住んでいる人々の心が豊かな地域のことを指す。
  そうした豊かな「まほろばの里」で、有機農業をテーマに自分の暮らし方、生き方を見直すと、「生命の連鎖」を考えさせられることになる。生命を大事にして、自然環境を守りながら、この豊かな営みができる地域(むら)を次世代につないでいきたい。そうした願いや思いで地域に生き、地域づくりに自分も参加したい──「そんな思いが生まれ、それが高畠へ移住したい気持ちにつながるのかもしれない」と遠藤事務局長はいう。


「まほろばの里農学校」は有機農業をつうじて暮らし方を問い直す(去年の研修生たち)
高畠町の有機農業運動

  共生塾は、そもそも有機農業運動のなかで生まれた。高畠町の農業青年たちが有機農業に出合ったのは、1973年3月の国内農業研修旅行の時だった。「これからは『生命の時代』がくる。有機農業を実践していこう」と、町の青年たちが立ち上がった。そして同年9月、高畠町有機農業研究会(以下、研究会)が、星寛治さんたちによって組織された。
  有機農業運動に最初からかかわってきた遠藤事務局長はいう。
  「有機農業について考えれば考えるほど、自分たちが勉強不足なことを思い知った。『生命の時代』というキーワードを掲げて運動し、その仲間とともに学習する場として研究会を設けた。有機農業運動は、農業者として当たり前の暮らしができる村づくりをしていく運動。一人ひとりの暮らし方を変えていかなければいけない。自分の暮らしを成り立たせるのと同時に、周りの人たちの面倒を見ながら、自立、共生していくことが重要だ」
  研究会は、90年に共生塾に発展した。92年からは有機農業運動の推進組織として農学校を開校し、94年からは連続講座を年2回開講。講座のテーマは、05年度が「食と農の復興と地域づくり」、06年度が「暮らしからみつめる『いのち』」だ。

6月の農学校の目玉はブドウの管理作業。収穫の秋が楽しみだ
  また、共生塾は有機農家への研修生の受け入れや、修学旅行生、大学のゼミ生の受け入れなどを、年間1千人以上引き受けている。「私たちが行っている有機農業をつうじた農村と都市の交流によって、農村の生活者も、都市の生活者も、お互いに学び、かけがえのないものを得ているはず」と遠藤事務局長は話す。
  さらに中川塾長は、「共生塾は、都市と農村の交流をとおして、新しい地域づくりを目指してきた。生産者と消費者が、一緒に食べ物をつくり、食べていく。この行為が、暮らしの在り方をお互いに見直す機会となり、正しい生活に導かれていくことにつながる。ひいては、こうした運動をつうじて、地域は豊かになっていく」と断言する。
  共生塾が活動する和田地区に、76年には米沢市内の旧家を移築して和田民俗資料館(楽習館・研修棟)が誕生した。その後、体験交流施設、宿泊施設(コテージ)を整備して「ゆうきの里さんさん」もオープン。これらの施設を拠点に、都市と農村の交流が深められている。


稲刈りの収穫体験は楽しい

農学校卒業生が高畠に移住
  吉田繁夫さん(54歳)も、「たかはた病」にかかった一人。92年に開催された農学校の第1回卒業生だ。7月末に1週間の農学校が終わると、9月には高畠のブドウ農家を家族と一緒に訪ねた。農村に住んで農業をやりたいという気持ちも以前からあった。なので、これをきっかけに翌年4月、高畠町に移住した。
  移住当初から、吉田さんの生活は「半農半SE」。午前中は東京で経営していたパソコンのソフトウェア制作会社の仕事をこなし、午後は農業に精を出す。現在の経営農地面積は4.5ヘクタール。そのうち水稲作が3.5ヘクタールだが、内訳は0.6ヘクタールが有機無農薬栽培、残り2.9ヘクタールは除草剤1回散布だけの減農薬栽培である。有機無農薬・減農薬米の生産農家約60戸でつくる上和田有機米生産組合で役員(会計担当)を務め、認定農業者でもある。
  吉田さんは、「サラリーマンだと、家族とのコミュニケーションがない。でも、いまは農作業を一緒にやっているので、家族と会話する時間がもてる。それが本当にうれしい」と笑う。そして、上和田有機米生産組合の会員紹介のパンフレットは夫婦の写真を載せた。夫婦で一緒につくっているのだからと、吉田さんがパソコン技術を駆使して作成したのだ。
  写真に写る二人の穏やかな笑顔は、農学校に参加したことをきっかけとし、高畠に移住して得た現在の暮らしが幸せだということを物語っている。


高畠に移住した吉田繁夫さん夫妻。有機無農薬米の水田の前で

民俗資料館の中で座学も行う
【No8(2007年冬号)掲載】
 
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