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私は土日は自分の山で山仕事をしています。山の作業をしていると「いま作業班はこんな仕事をする時期だな」とか「ちょっと蒸し暑くなってきたな」といったことを、肌で感じます。すると、どういったことに注意を払って作業しなければならないか具体的なことを指示できるわけです。
林業は危険が伴いますから、経営を担う側はこのことを常に意識し、安全管理を徹底しなければならないでしょう。
なぜ、はじめからこのようなことをお話しするかというと、実は理由がありまして、大変残念なことに、今年の6月、作業班の一人を仕事中に失ってしまいました。有望な人材をなくしたことは私にとってもまさに断腸の思いでした。
毎日毎日、皆が無事帰ってくることが私の第一の願いです。ですからどんなに作業場が遠くても朝礼は欠かしません。全員を組合に集め「気を抜かず、安全に」ということを伝えてから送り出しています。
皆にもう一つ、よくいっていることがあります。それは「若いうちにどんどん資格を取れ」ということです。山の仕事というのは目標を設定しにくく、ベテランになるには時間がかかります。
勉強し、試験に合格したら自信が付くし、ほめられたらだれだってうれしい。もっと頑張ろうという気になるでしょう。資格取得は、技術や知識を習得できるだけでなく、モチベーションを保つ効果もあります。安全面においてもそれは大切です。
もちろん、その努力を強いるからには、組合も彼らに報いるために経営努力をしていかなければならないでしょう。例えば、給料面。作業班は日給月給制ですが、将来的には、月給制で雇用できるようにしたいと考えています。

年輪が浮き上がり、美しい光沢を放つよう加工したトレー(右)と材料の杉板(左) |
組合長になったのは2年前です。当時、製材加工所は赤字で、木材価格が上がる見込みもなく「どうしたものか」と考えました。しかし、いままでと同じことをやっていたのではなにも変わりません。
そこで大きな柱として立てたのが、経営の多角化と林産事業の充実です。なかでも林産事業はダイレクトに「川下」に働きかけるという策に打って出ました。
「川下」というのは、この業界の専門用語で、木材利用側のことです。「川上」が木材供給側。昔から木材は、山から川を利用して川下にある町に運ばれていたのでこのような言葉ができたんでしょう。
ともかく最も川上にいる森林組合から、最も川下にいる施主に直接木材を届けることができないかと考えました。そうすれば材木市場の価格に左右されずに済む。これは大きな魅力です。
最初は、あらゆるつながりを利用していろいろな人や団体に「安心できる地元の木材を使った家を建てませんか」と、熱心に説明して回りました。誠心誠意、丁寧に、熱意をもち、対応は迅速に…。ただし価格は下げません。値引きは誠意とはいわない、ビジネスとして成り立たせることこそ誠意。そう思って営業に力を入れました。
やがて、一人また一人と賛同者が現れ、ついにある大手住宅メーカーの関連会社と「佐賀県内の新築住宅建築の際は富士大和の木を使う」という確約を得ることができました。いまも佐賀市内で富士大和の木を使った家を建てているところです。いい家ですよ。

富士大和の地を流れる嘉瀬川。白鷺が舞い、川魚が泳ぐ |
我が組合の方針とまではいきませんが、元手をかけずにお金に変えられるものは、なんでもお金にしてしまおうと思って運営しています。
いまもちかけられている話もちょっとおもしろいですよ。おがくずを高温高圧処理してカップ麺などの食器をつくるという技術をもった会社が、おがくずを卸してくれないかというのです。コストがどのくらいかかるか試算中ですが、ゴミとして処理していたものが利益を生むこともあるわけですね。
また、去年は間伐材を利用した木材加工販売所の「こだまの里」をオープンさせました。商品開発にあたっては品質が高く、個性的な製品づくりを目指しています。品質が低く、どこにでもあるようなものでは、たとえ安くてもほかと勝負できないでしょう?
もちろん、品質にこだわるあまりつくり込み過ぎても売れません。実際やってみてわかってきたことですが「こだまの里」で人気なのは、一見なんの特徴もないように見えて、実はきちんと手をかけてある商品です。
例えば樹皮が付いたままの丸太のイス。見た目はただの切り株です。しかし地面に接する面と座る面はきちんと水平に切ってあります。この「水平」というのがポイントで、工場でないとできません。また、年輪を模様としていかしたトレーも人気があります。年輪の美しさを出そうと思いましてね。でもそのこだわりを実現するのは本当に難しかしくて…いったい何枚試作品を作ったかな。結局は特殊な加工を施せる設備を工場に導入しました。年輪がつやつやして浮き上がって見えるでしょう? でも素朴な風合いも失っていない。それが受ける。
ほかと同じことをしていては生き残れない。このことは木材を売るにしても、加工品を売るにしても同じです。それを私は楽しんでやりたいと思っています。常に「次はどんな新しいことをやろう」と考えるのが好きですね。

木の自然なカーブを利用してつくるアルプホルン。3パーツからなり、長さは3m。2oの厚さになるまで丁寧にくりぬく |
アルプホルンの大会もそうした考えの延長で実現したことです。アルプホルンとは、スイスなどの山岳地帯で演奏されてきた木製楽器のこと。なんとなくご存知でしょう?
たまたま県西部にある嬉野市の市長や福祉授産施設の西部コロニーの理事長とともに森林資源を活用した町づくりについて話をしていた時でした。
「森林資源の活用といったって楽しくないといけない。それはやはり遊びに関するものだろう。例えば森林資源活用の先進地域であるヨーロッパでは…スイスでは…」というような会話となり、アルプホルンにたどりつきました。そして「日本でも間伐材を利用してアルプホルンがつくれるのではないか。よし、どうせならイベントにしよう。そうだ、手づくりアルプホルン教室にしよう」と、どんどんアイデアが膨らんでいったのです。

「第1回全国アルプホルン大会IN佐賀嬉野 手づくりアルプホルン教室」では、アルプホルン奏者が佐賀に結集した |
それが2007年9月、「全国アルプホルン大会IN佐賀嬉野 手づくりアルプホルン大会」として実現しました。うれしかったですねえ。全国アルプホルン連盟会長の中川重年さんや元NHK交響楽団・フレンチホルン奏者の大野良雄さんなど多くの方に協力いただきまして、玉川アルプホルンクラブや韓国ヨーデル協会のメンバーがカラフルな衣装を着て佐賀の地でホルンを奏でたんですよ。
アルプホルン教室のほうで使った間伐材はもちろん佐賀の木です。しかもアルプホルンをつくるにはただの間伐材ではなく根曲がり、根元が曲がっている木を利用します。根曲がりは建築材としての価値は低い。けれどもアルプホルンの材料には不可欠です。おもしろいでしょう。
一つ夢がありましてね。いま、富士大和では上流で嘉瀬川ダムを建築中で、2011年に完成する予定です。その完成式典にアルプホルンをずらりと並べる。そして地元材で作ったアルプホルンの音色を真新しいダムに向かって響かせるんです。どうですか、ちょっと壮観だと思いませんか? |