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生産者としての自信をもち
安全・安心な食材の提供を


富山県魚津市 魚津漁業協同組合
参事 浜住 博之さん

集魚灯に頼るイカ釣り漁業は燃料高の影響も大きい

 「担い手不足」「燃料高」「魚価安」。全国的に見ても、漁業が置かれている状況は極めて厳しいといわざるを得ません。燃料高にしても魚価安にしても、改善の見通しが立たないなかで利益を確保していくには、どうしたらいいのか…。

 魚津漁協所属の漁船は、この10年間で50隻ほど減りました。組合員の平均年齢も62.8歳と、確実に高齢化が進んでいます。
  昔は、乗組員が必要なら親戚か知り合いのツテで探すのが当たり前でした。しかし、1990年代初めごろ、あちこちの船主から「人手が足りないのでどうにかしてほしい」という要望を受け、職業安定所で漁業者を募集。人数は集まったものの、ほとんどが定着しませんでした。いま思えば、とにかく誰でもいいからと漁業者への本気度を見極めないまま受け入れてしまったことと、人材のあっせんのみでフォローが足りなかったことに原因があったのかな。その後、試行錯誤を経て、現在、県外出身者を含め30名以上の新規漁業就業者が新たな担い手として活躍しています。今年からは、漁業施設の一部をリフォームし、研修生のための宿泊所を設けたんですよ。
  地元に根付いてもらうには、地域になじんでもらわなければなりません。裏を返せば「よそ者意識との闘い」といえるかも知れませんね。残念な話ですが、漁業版いじめの実態もあるようです。いじめているほうからすれば、「新人を試してやれ」という軽い気持ちなんでしょうが、それが原因で辞められるとせっかくのチャンスを失うことになる。もはや、地元だけで人材を確保できないことは明らかです。出身地は違っても、同じ海の上で働く仲間として心を開くことが求められているのではないでしょうか。


「魚津おさかなランド」内部。施設外を遮断するドックシェルター、施設内の各ゾーンを仕切るシートシャッターなど、衛生管理のための工夫がいっぱい
 皆さんは「漁協」に対してどんなイメージをもっていますか? 意外かもしれませんが、私たちは漁協に対して世間は良いイメージなどもっていないだろうと思い込んでいました。ところが、実際の声を聞いてみると「漁協の名前が入っていると安心!」「漁協から直接買えば間違いない!」と返ってきた。これにはかなり驚きました。自分たちが思っている以上に、漁協を評価してくれていたのです。
  どうしていままでこんなこともわからなかったのかというと、消費者との距離があまりにも遠かったから。漁業者は魚を捕ったら終わり、漁協は市場で受け渡したら終わり、その後は仲買人に任せっきりでした。だから、消費者がなにを求めているのか具体的な顔が見えてこなかった。
  魚津漁協では、6年前から郵便局のふるさと小包やデパートのお中元・お歳暮などで産直販売をしていますが、ルート開拓のために出向いた地で消費者の声を聞き、漁協が信頼のブランドであることに気付かされました。
  産地偽証の問題などもあって、消費者の産地に対する見方は変化しています。安全・安心な食への意識の高まりは、きちんと衛生管理した漁獲物を提供している漁協からすれば追い風。自信をもって自分たちの生産物をお勧めするチャンスなのです。


蜃気楼で知られる富山湾に面して立つ魚津漁協の市場「魚津おさかなランド」。延べ床面積5612.8m2
 4年前に新設した「魚津おさかなランド」は、高度に衛生管理された密閉型の市場です。漁獲物を取り扱う競り場ゾーンは、サニタリー室でエアシャワーを浴び、身体や長靴を洗浄しないと入場不可。出口から競り場ゾーンへの戻り防止のため、ドアにはノブを付けず一方通行とするなど、構造的に衛生管理できるようにしているんですよ。
  反面、新しい市場はこれまで以上に維持・管理費がかかります。漁業者が減り、漁協の収入が減り続けるなかで、この費用を工面しなければならない。単純に考えれば、漁業者への負担を増やすことになるのでしょうが、苦しい現状を知っているだけに、それは避けたかった。そこで目を付けたのが、流通の過程でかかってくるマージンです。
  水産物は一般的に、漁業者→産地市場→産地仲買人→消費地市場→消費地仲買人→小売店という流通経路を取っています。しかし、この過程を経ると、その分、産地価格に跳ね返ってきます。例えば、漁師が1匹100円で売った魚が、食卓に上るときには1匹1000円にもなる。この生産者価格と消費者末端価格との差を縮めるために考えたのが中抜きをした産直販売です。漁協が販売をすることに対して、最初は仲買人の方からの反発も大きかった。そりゃ、当然ですよ。でも、何度も話し合いを重ね、少しずつ理解を得て、今では良いパートナー関係を築いています。

 産直販売に加えて、委託加工販売も手がけています。昨年からは、漁協と水産加工業者4社が協同で加工場を設け、地元大学の技術協力を得ています。
  全国展開している大手スーパーに納品した「ボイルホタルイカと海藻セット」約5万パックは、デリカ部門でトップ10入りするほどの人気商品になったんですよ。風味を損なわない状態で発送したのが、受けたのでしょうね。
  食品流通は、消費者のニーズの変化により大きく様変わりしています。消費者が求める商品を提供できるよう、漁協として柔軟に対応できる環境を整えておくことも、厳しい時代を生き抜くには必要かもしれません。
  「漁業者からの収入だけに頼る漁協から脱皮して、自ら主体的に利益追求できる漁協へ」。漁業の活力を失わないためにも、漁協として、地元漁業界のけん引役を果たしていきたいですね。


「販路拡大のため自らも各地へ出向く」という浜住さん
プロフィール
浜住 博之(はまずみ・ひろゆき)
1956年、富山県魚津市生まれ。国立富山商船高等専門学校卒業後、商船会社に入社、北米航路の船員として木材の輸送などに携わる。1979年、結婚を機に陸上での仕事を希望し、魚津漁業協同組合の職員として採用される。モットーは「消費者から信頼される食料産業」。趣味は釣り、ゴルフ、テニス。好きな魚介類は?の問いには「すべて好きですが、とくにとなればイカ類かな」。
【No8(2007年秋号)掲載】
 
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