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自然相手の仕事をしたい

愛媛県久万高原町 株式会社いぶき
鈴木 藤郎さん

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愛媛県は、全国有数の林業県。久万高原町にある「いぶき」は、1990年に設立された林業初の第3セクター企業。06年度の売上高は3億2千万円に上り、林業の法人としては日本最大級だ。写真は鈴木さん
  (株)いぶきは、林業を主産業とする久万町(現・久万高原町)にて、ふるさと創生事業費の1億円を活用して立ち上げられた。週休2日、年次有給休暇、各種保険完備など雇用条件を整えた、若者が就職しやすい「サラリーマン林業」の先駆けだ。
  [1]過疎化・高齢化で担い手が減少しつつある林業の後継者育成、[2]雇用の場を創設することによる若者の定住促進、[3]地域の活性化、という3つの目標が示すように、同社は地域対策的側面が強い。また、長引く材価低迷にあって、しばらく赤字経営が続くことが当初から予想された。「実際、15年間は単年度赤字で、その分を町が税金で補填してきました」と話すのは、設立からかかわってきた課長の白川哲也さん(48歳)。
  しかし、国を挙げての構造改革により地方財政が切迫し、同社も自立経営を迫られた。現在、売上は国や県が発注する公共事業がほとんど。地元の山主からの依頼は4%にすぎない。本意ではないが、単価のいい仕事をしなければ、地域のための仕事も続けられない。苦渋の選択である。

若い人材が現場で活躍
  だが、17年前に目先の赤字より、地域の将来を見据えて人材に重点を置いた効果が、いま、出始めている。社員の平均年齢は34歳。47人中28人が10年以上のキャリア。若くて経験のある人材が豊富なのだ。
  「定着率は5〜7%程度。それだけ厳しい仕事です。残っている社員は、個性的な人が多い。彼も変わったヤツです」と白川さんが紹介してくれたのは、「緑の研修生」として研修中の鈴木藤郎さん(36歳)。
  鈴木さんは東京生まれで、神奈川県横浜市のイベント企画会社の営業マンだった。
  「30代半ばになったら田舎で、自然相手の仕事をしたいと思っていた」
  各地の「森林の仕事ガイダンス」に参加するなかで、白川さんと出合う。
  「ほかのブースの担当者は、『とりあえず資料を見て』『やめたほうがいい』と消極的だったが、(白川さんは)仕事のきつさや収入の低さ、地元になじむ難しさをきちんと話した上で、『ぜひきてほしい』といってくれた」

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作業には数名単位の班であたる
身にしみた先輩との基礎体力の差
  鈴木さんは昨年会社を辞め、妻子を横浜に残して単身で久万高原町へ。仕事は予想どおり厳しかった。とくにこたえたのが、基礎体力のなさだった。
  「山歩きや木の上を歩くといった、本当に基本的なことで先輩についていけない」
  前職場では、退職1年前から上司に相談し、後輩に引き継ぎを始めた。愛媛に行こうと決めて、「有給休暇を使って、歯を全部治療し、健康状態の再チェックをした。新しい会社で、治療で仕事を休みたくなかったから。でも、体力トレーニングをする時間まではつくれなかった」と笑う。
  今年1月、めでたく正社員に採用されたら、家族を呼ぶ予定だ。「現役の姿を子どもたちに見せたかった。子どもたちが自立するまでの短い間に、自然と触れる環境を与えてあげられれば幸せ」と話す。
  今年度の同社の売上は、昨年度比1億円アップ。いま、林業には追い風が吹いている。白川さんは「林業界は圧倒的に人手不足。うちも100人くらいまで増やしたい。Iターンも大歓迎。山や木が好きでなくても、仕事としてしっかりやれる人、そして地元に定着してくれる人を求めている」と目を輝かせていた。

所属班リーダー・奈良原章悟さん→ 鈴木さんへ
 最初は「使いものにならない」という印象だったが(笑)、ここ2〜3カ月でぐっと変わった。本気になってきた。技術や体力は年月を重ねれば身に付くが、一番大事なまじめさを彼はもっている。林業は毎日が命がけ。信用できない人間とは一緒に仕事ができない。彼は合格かな。
【No.9(2008年春号)掲載】
 
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