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酪農ヘルパーで技術を磨く
新規就農の夢を実現した 尾崎 広太郎さん

 酪農ヘルパーを経験し、新規就農の夢を実現した酪農家を訪ねた。
  東京出身の尾崎広太郎さん(39歳)はサラリーマン家庭に育った。自然とかかわりの深い酪農に関心をもち、将来は自分で牧場経営をやりたいとの夢を抱いて北海道大学農学部へ進学。在学中には、夏休みになると道内各地の牧場で実習をした。1990年に卒業を迎え、同級生は行政や大企業等に就職したが、別にうらやましいとも思わなかった。

酪農家への原点は映画と書籍
  尾崎さんが酪農家になりたいとあこがれたのは、山田洋二監督の映画「遙かなる山の呼び声」で酪農家の素朴な姿を見たことと、開拓者の生活記録である坂本直行著「開墾の記」の厳しい自然に翻弄されながらも明るく生き、優しく自然を見つめる心の広さに強烈な印象を受けて感動したからだ。
  これら2つの農家を題材にした作品は尾崎さんの心に深く残り、新規就農の酪農家として悪戦苦闘している時にたびたび思い出されたという。
  大卒後は、入学時に抱いた就農の夢を実現すべく、第一歩として十勝清水の牧場で実習生として働き始めた。十勝清水での牧場実習は2年間だったが、そこでは乳牛の飼養管理の基本的な作業や知識を学び、年間を通じた酪農家の日常作業の流れを体験できた。大型農機の操作や整備、粗飼料の播種、収穫、調製、土壌管理など、牧場の運営技術を学んだことは大きな収穫だった。

さまざまな経営を学ぶためヘルパーに
  その後、新規就農するには、さまざまな酪農経営を見て、技術も習得できる酪農ヘルパーを経験することが最適だと考えた。
  92年に中標津町にある酪農ヘルパー会社の(有)ファム・エイ(臼井勝也代表取締役)に酪農ヘルパーとして就職。
  同社は根釧地域のJA中標津、JA計け根ね別べつ、JA上春別の酪農ヘルパー利用組合からヘルパー業務委託を受けている、全国的にも珍しい会社組織の酪農支援組織だ。酪農ヘルパー事業のほか、生乳検査事業も行っている。現在、利用農家448戸に対し、専任酪農ヘルパー22名で対応している。また、95年には北海道の農業・農村の発展振興に寄与したとして「第2回ホクレン夢大賞(農業応援部門)」を受賞。新規就農に意欲ある酪農ヘルパーに対して積極的に支援することをモットーに、発展を続けている。
  同社がヘルパー事業を開始した89年以降、酪農ヘルパーから新規就農や地域の後継者との結婚等を果たした若者は8名という。
  その新規就農第一号となったのが尾崎さんだ。2年間、同社で酪農ヘルパーを勤めた。

多くの人の応援を受け、パートナーとともに就農
  尾崎さんは、入社当初より新規就農の意志を会社に伝え、農協や役場にも積極的に顔を出して就農情報を集めた。意欲をもってまじめに働く彼の酪農ヘルパーとしての技術と人柄は高く評価され、就農に際し、周りから多くの支援を受けることができた。その一つが、知人に紹介された酪農ヘルパー、孝子さんとの巡り合いだった。
  愛知県出身の孝子さんは置戸町で酪農ヘルパーとして働きながら、いつか自分も酪農家になりたいと数頭の育成牛を預託しており、尾崎さんとの結婚には、雌牛を数頭連れて嫁入りしたという賢夫人。

経営にめどを立て定期的に酪農ヘルパーを利用
  二人は95年度の北海道農業開発公社のリース牧場事業を活用して就農した。就農にあたり、会社や農協、行政等から指導、そして近所の酪農家からは乾草をいただくなど大変お世話になったという。
  入植当時は毎日の仕事に戸惑って、寝る間も惜しんで働いたが、二人は夢を実現させてこそ意味があるとして頑張った。農地は56ha、乳牛は35頭から経営をスタート。畜舎兼住宅は30年以上も経過したコンクリートブロックの古い建物で、牛と同居の生活だった。
  その後、経営のめどが立ち、子どもが5人と大家族となったことから、99年に住宅を新築した。
  入植して12年目の現在、乳牛頭数は45頭に増頭。初産牛では交雑種を生産。5月から10月までは完全放牧で省力化し、冬期間はロールパックサイレージやデントコーンサイレージを給与し、牛に無理をさせない長命連産型の低コスト飼養形態をとっている。1頭当たりの年間平均生乳生産量は6,500リットルと少ないが、経営は順調に推移している。
  今は子育ても楽になり、定期的に酪農ヘルパーを利用しながら、家族で旅行するなど、大いにこの生活を満喫している。(取材 全酪新報 片桐紀生)

 
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【No9(2008年春号)掲載】
 
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