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日田杉で栄える林業の地へ
大分県日田市 日田郡森林組合
国分 正庸さん
青木 広行さん


伐木が前の木に引っ掛かった。先輩の大塚さんと一緒に木を倒す
人の縁に助けられた移住と転職

  営業マンから転身、2007年4月に「緑の研修生」となった国分正庸さん(42歳)。「日田杉」の産地・大分県日田市にある日田郡森林組合に勤務している。きっかけは、同年2月に福岡市で開催された「森林の仕事ガイダンス(就業フェア)」だった。
  山の仕事を知ったのは、1年前、体調をくずして会社を辞め、就職活動をしていた時。就職情報誌にガイダンス開催の広告を発見。高校卒業から20代半ばまで野菜の出荷などを手伝う農業ボランティアにかかわっていたこともあり、昔から第一次産業は気になる存在だった。いつか豊かな自然のなかで仕事をしたい、子どもを育てたいと思っていた気持ちが一気に「林業」の道へとつながっていったという。
  ガイダンスでほとんどの県のブースを回り、候補地に挙げたのは、奥さんが知り合いに合うために毎年訪れていた大分県日田地域。移住先に決めると同時にさっそく家探しも開始した。
  「移住について役所に相談したところ、芝生付きの一戸建て住宅を紹介してくれました。家族も喜んで、今では家の周りで息子が昆虫を捕ったりしています」
  間もなく決まった同森林組合への就職も、(財)大分県森林整備センターの木下友介さんが何度も相談に乗ってくれた。「田舎は、外部の人間を受け入れるのに慎重です。でも僕の場合は『人の縁』に恵まれましたね」と、国分さんは望みを実現させた経緯を語った。


終始、和やかな雰囲気で取材に応じてくれた青木さん
環境への貢献が仕事の原動力
  下草刈りから植林・伐木と、先輩の後に付いてさまざまな仕事を教わる毎日。祭りに飾る竹灯籠のための竹切りも行った。自然に囲まれ、自分のペースで仕事をする。昼には四季の山々を眺めながら弁当をほおばる。食後はビニールシートの上で昼寝。昼食の時間などほとんどとれなかった営業マン時代とは比べものにならない豊かな時間だ。
  とはいえ山の仕事は体力が要るし、命の危険もある。10月半ばには他の作業員の事故も目撃。伐採した木が跳ね返り、その作業員は頬を強打、脳しんとうを起こして唇二針を縫うケガを負った。翌日には仕事に復帰できる程度で済んだが、森林作業は危険なものだと改めて認識させられた。給料が以前より下がったことを考えると、甘い見通しは立てられない。
  「でも山が荒れていく現状で、木を切り、植えるこの仕事が少しでも環境の役に立つと思うから頑張れています。先のことはわからないけれど、技術を磨き、年をとって第一線を退いても、指導する立場に立てるようがんばりたい」
  自分が春に植林した苗木も次の世代が切ってくれる─それを信じて、今日も山へ入る。


日田郡森林組合で販売している、チェンソーアートのフクロウ。心が和む表情
林業情報は少なかったが…
  日田郡森林組合には、国分さんのほかにも移住してきた人たちがいる。東京都出身の青木広行さん(52歳)は、94年に林業に就業した。Iターン歴14年のベテランだ。
  前職は、パラオでのダイビングインストラクター。しかし「潮の流れが特殊で、ときどき亡くなる人もでる危険な場所」だったため、今度は日本の「山」へ行くことにした。
  「当時は林業の求人情報はほとんどなく、ハローワークにも、林業雑誌を頼りに訪問したいくつかの森林組合にも、相手にしてもらえませんでした」
  それでも就職活動を続けたのは「山仕事をしている方は、年をとっていてもしゃんとして美しい。身にまとう雰囲気がとてもいい」と感じたからという。
  まずは「期間限定でのアルバイト」と、条件を提示してくれた日田郡森林組合に妻と4歳だった長男を連れ、飛び込んだ。


作業班の皆と一緒に。「本当に皆さん優しい。自然相手に仕事をしていると優しくなるんじゃないかな」と国分さん(前列)
休日は自然塾のボランティア
  最初は作業班に配属。工場の荷物整理から作業道づくりまで、周辺作業を含めて一とおりの仕事を覚えたころ、組合から「職員に」との声が。一転、事務職に異動。今は事業部の購買担当や現場監督など、責任のある仕事を任されている。
  休日には子どもたちに植物の名前を教える自然塾のボランティアや山登りをして過ごすなど、充実した毎日を送っている。
  「とても暮らしやすい」が、田舎暮らしが続かない人も少なくないという。理由はさまざまだが、「子どもの教育費」がネックになることが多い。
  「近くに学校がないため、子どもは高校から寮に入るか下宿で一人暮らし。子どもが二人以上いる家庭は、結局田舎を出てしまいますね」
  しかし「そこをクリアできれば、なんとか生活できると思う」と青木さん。穏やかな表情のなかに、淡々と生活している様子がうかがえた。

「住めば都」と思うこと
幼いころから父の仕事の都合で何度も転居を経験し、いろいろな地域に住みました。それで思うのは「住めば都」ということ。どの地域でも、良いところもあれば悪いところもあります。
それから、田舎暮らしは一人ではなにもできません。家を決めるにも紹介がないと借りられないことがあります。移住は誰かの協力があってこそできるものです。(国分さん)
田舎では
「くっつきすぎず、離れない」
田舎は小さな社会なので、わずかなことでよくトラブルになります。自分が知らないうちに相手が怒っていたことがありました。おすそ分け(うちでは漬けた梅干し)を持って一言挨拶にいったら丸く収まりましたが、普段の良好な人間関係がなければ、謝りにいくだけでは難しいでしょう。
地域に溶け込むために頑張りすぎる必要はありませんが、全く付き合わないのも問題。助け合わないと生きていけませんから。(青木さん)
【No9(2008年春号)掲載】
 
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