
トキワ養鶏の看板の前で─石澤さん |
畜産があって、耕種農業が成り立っていく。これが「有畜複合農業」という考え方です。畜産は、畜産物を生産・供給するだけでなく、いい堆肥をきちっとつくって耕種農業に供給する。耕種農業は、国産のいい飼料穀物を畜産に供給する。このようにすれば、循環型、環境保全型の有畜複合農業が成り立ちます。
これが、日本農業のあるべき姿です。
このように考えれば、農業という仕事は、実に可能性があり、夢もある仕事なのです。
食料、食べ物と環境の問題を、農業の問題とあわせて考えるべきでしょう。
独立した国ならば、食料自給率50%はほしい。日本人がいままでに培ってきた農業技術を考えれば、自給率50%は十分、達成可能な数値です。
日本を含め、高温多湿のアジア・モンスーン型気候である東アジア、東南アジアは、水田農業を基軸に、稲作・水田の文化をつくりあげてきました。

トキワ養鶏5万羽、トキワ農場40万羽の卵を出荷するGP(グレードピッキング)センター |
水田は、水の流れにとって重要な役割を果たしています。降った雨は森林に貯えられ、川に流れ、海に流れる〈山─川─海〉という水の流れがあります。同時に、〈森林─林業─水田─農業─生活〉という産業を通る水の流れがあります。水をきれいに保つためには、汚れたものを水田から川、海に流してはいけないのです。水田は水を貯え、濾過してから川に流します。水田農業は同じ土地で稲をつくり続ける「連作」ができます。しかも連作しながら生産力を高め、水の流れに見られる自然環境の連鎖をつくってきた。
日本の農業は、こうした水田農業を基軸にし、安心して食べ物のことを任せられる産業に、尊敬される産業にならなければいけない。それはアジアの国々に模範を示せる農業でなければなりません。
現在の日本において、卵を生産する採卵養鶏は、困難な状況にあります。
最大の問題は、餌価格の高騰。鳥インフルエンザ問題で採卵鶏を約600万羽淘汰しましたが、その分の飼養羽数が回復し、「卵価安・餌価格高」の状況です。
戦後、日本の養鶏は、餌を外国産のトウモロコシなど飼料穀物の輸入に頼り、海外に依存する形で発展してきました。そのアメリカ産トウモロコシが、原油の高騰、バイオ燃料(エタノール)需要の高まりと、マネーゲームの投機行動によって大幅に値上がりしています。

玄米を餌にした国産卵は黄身が白っぽい(左)。トキワ養鶏の通常の卵(右)は黄色みが強い |
私たちトキワ養鶏は、安全・安心な卵の生産・供給にこだわり、餌のトウモロコシはすべて非遺伝子組換え(non─GMO)で、大豆かす、魚粉などと指定配合にしています。非遺伝子組換えトウモロコシは品薄で、法外な価格になっています。取引先の生協が卵価を引き上げてくれたので、一息ついていますが、卵価は全般的に安すぎます。
日本の養鶏業界を担ってきた第一世代は、第二世代の若い人たちに経営の最前線を譲る時期にきています。第一世代の先輩たちは、「若い人たちはもっと元気を出せ。このままいけば養鶏業界に誰も残る者がいないぞ」と発破をかけています。でも、実は第二世代の養鶏経営者は皆、熱い思いをもち、個々の経営では皆、頑張っているのです。あとは、業界としてどう動くか─個々は小さな力でも、これらを一つにして業界としての大きな力にすれば、養鶏経営者運動を再び盛り上げていけると思います。


系列会社「八峰園」は、リンゴやニンニクなどを生産・販売 |
国に要望・要請を繰り返す農政運動の時代ではないのです。経営者は自ら考え、行動し、個々の力を集める。例えばトキワ養鶏では、餌米(玄米)58%を配合した自給率75%の餌で「玄米玉子」を生産して、生協だけでなく、地元でも販売しています。こうした個々の動きをまとめて、養鶏業界、畜産業界、さらに農業界全体の経営者運動をもう一度つくりだすべきときでしょう。
養鶏業界が抱える問題は3つあり、@前述の餌問題、A鶏ふん問題(有機資源の肥料に変え、自分たちの餌米耕作に利用する)、B卵を産み終わった鶏(年老いた鶏)をどのように大事に食べていくかです。それに対する養鶏業界の役割は、(A)以上のようなことを消費者に正しく伝えていくこと、(B)次世代の子どもたちに鶏や農業のことを伝えていくこと、(C)自分たち鶏卵生産者の卵価を安定させることです。卵価は、生産者手取りで最低1キロ200円を確保したい。
鶏になぜトウモロコシだけ食べさせるのか。餌の自給率を考え、餌そのものを見直さないといけません。そしてもう一つ、アニマル・ウェルフェア(動物の福祉)。これは、すべての環境問題につながることです。小さな国でもキラリと光るためには、自然も環境も、農業も畜産もきれいにしなければいけないでしょう。

アニマル・ウェルフェアを考えて、トキワ養鶏は平飼いを増やしている |
トキワ養鶏は、卵の生産・販売だけでなく、リンゴやニンニクなどの生産、水田農業(稲作)なども手がけています。
養鶏部門の5万羽中、約3万羽は1坪あたり10羽の平飼い。ケージ飼いは1坪20羽。夏場は、放し飼いも試みています。
トリ(3つの)ジェネレーションという省資源・バイオ利用の温室で、トマト栽培の試験を始めました。LPガスを利用して発電し、温室を暖房します。二酸化炭素が発生するので、これを利用して温室内の二酸化炭素濃度を高める試験もあわせて行なっています。行く行くは、鶏ふんからメタンガスを発生させ、LPガスと換えていく計画です。
新規就農を目指す人は、まず、基本的な農業技術を身に付けること。しっかりした技術があってこそ、環境問題にも対応できます。次に、経営感覚をもつこと。理想を追うだけでは、だめなことがあります。農業生産には、太陽光線と水、土が必要不可欠です。水と土を汚してはいけない。水と土を再生・再利用することです。田んぼや畑のなかにも、鶏舎内にも、宝物がいっぱい埋まっています。必ず見つけだすことができるはずです。 |