
豊田市の山間部は、紅葉のメッカでもある |
豊田市は、2005年4月に、周辺の町村と合併したんですよ。豊田森林組合は、生まれ変わった市のまちづくりと密接にかかわっています。森林組合の取り組みの前に、地域の事情を説明しましょう。
もともと森林組合は行政と深いかかわり合いをもった組織で、市町村が合併すれば、通常、森林組合も合併します。旧豊田市と藤岡町、足助町、旭町、稲武町、小原村、下山村の1市4町2村が合併して誕生した豊田市と同じく、豊田森林組合も広大な市域の森林管理を担うようになりました。
森林組合が市の掲げるまちづくりと密接にかかわっているのは、「森林管理」に関する課題が、この市町村合併の大きな理由になったからなんです。
この地域は、トヨタ自動車の本社が立地することもあって関連する企業が集中する「都市(旧豊田市)」と、4町2村で構成されていた「田舎」の、二つの顔をもっています。合併の話がもち上がった当初、「都市」の側は、過疎化、高齢化した財政赤字の「田舎」を背負いたくないと考える人が大勢いました。ではなぜ合併できたのか。理由は二つあります。
「都市」に勤めるサラリーマンの何割かは「田舎」に実家や親戚があります。両者の関係は、裏を返せば「親子」という関係でもあった。真っ向から対立しなくてもいい関係。そして、子が親の面倒をみるのは、いわば当たり前というものでしょう。そういった意味で理解を得やすかったということがあります。
もう一つの理由は、防災面です。昔からこの地域は、市を貫く一級河川の矢作川により、多くの恵みを与えられてきました。川を守ってきたのは水源涵養機能(水を蓄える機能)をもつ森林、そして森林を整備してきたのが、「田舎」の主産業だった林業です。ところがこの林業が、外材の輸入増や山間部の過疎・高齢化により低迷してしまいました。結果として森林の荒廃が進んだわけです。
森林が水源涵養機能などを保てなくなれば、河川の氾濫や土砂災害など、さまざまな自然災害が起こり、「都市」も甚大な被害につながります。もはや「田舎」だけに森林を守る役目を負わせるわけにはいかない、矢作川の上流と下流にいる両者が一つになって森林を守り、再生させていく枠組みが必要だろう…という状況になりました。我がまち、豊田の市町村合併には、このような背景があったんですよ。

最近伐採した180年生の杉 |
合併後、市では「市森づくり条例」を制定し、その理念の実現のために「市100年の森づくり構想」を策定しました。
愛知県の2割近くを占める広さとなった新生・豊田の市域は9万2000ヘクタールで、この実に3分の2にあたる6万ヘクタールが森林。うち半分が人工林です。市では、人工林の3分の2の2万ヘクタールを「健全な森」にしようと定めました。森林組合でもこの目標に向け、積極的に色々な事業に携わっていくことになっています。
一方、いま、森林組合が力を入れているのは業務の改善です。なにしろ組合員8千人を抱える大所帯になりましたから、業務の効率化が急がれました。そこで導入したのが「団地化」と、我々が呼んでいる森林管理の手法です。
以前は、山林所有者ごとに森林の管理を行っていました。極端にいえば、同じ集落でもAさんの山では今年間伐、Bさんの山では来年、Cさんの山は再来年といった具合です。「団地化」とは、このように個別の森林管理を行うのではなく、集落ごとにまとめての森林管理を行う方法です。集落に一つ、山林所有者のグループをつくり、森林組合からの説明はこのグループに対して実施するほか、森林の施業もまとめて実施します。
点ではなく面での森林管理を可能にすることで、飛躍的な業務効率化につながると期待しているところです。
また、二次的な効果としては、個別に施業の説明をするより、グループ単位のほうが理解を得やすいといったこともあります。それと、あまり「山に興味がない」山林所有者でも、同じ集落の同じ立場の人とつながりができることで、多くの情報が入ってきて山に対する愛着がわくことも考えられる。山林所有者の意識変化により少しでも放置林が減れば、それだけ早く「健全な森」を増やすことにつながるでしょう。
地道な方法だと思います。しかし、現場を担う森林組合が内側から変わっていかなければ、例え行政と一体になった枠組みが計画され、税金が投入されたとしても、地域林業の将来へとつながっていかないと考えています。

180年生の木が残る森林。山が大切に守られてきた証だ |
林業を取り巻く課題は数多くありますが、「iju info」は就業情報誌ということですから、もう一つ、知ってほしいことがあります。作業班の待遇の問題です。
例えば、当森林組合ですと常時400人近い労働力を必要としており、森林整備という点では足りない状態が続いています。ただ、いくら人材を確保したくてもネックとなるのが優遇面です。いまの作業班の平均的な給料だけで家族を養っていくのは大変だろうと思います。といって、木材価格の低迷による森林組合の苦しい台所事情が、突然よくなるという見込みはありません。
それなりの経験を積み、高度な技術をもっている人なら、個人で森林組合から仕事を請け負い、かなり高額な報酬を得ることも可能なんですよ。そういう人もいます。しかし、そのレベルになるには時間が必要…。森林組合としても痛いところです。
解決策となるかはわかりませんが、雇用状況の変化として最近、見受けられるのが、林業現場に女性が登場してきたことです。「iju info」でも以前、豊田森林組合の作業班で働く女性を取り上げています。
昔は体力を必要とした現場でしたが、最近は高性能機械が導入されるようになりましたから、機械のオペレーターなど、女性も活躍できる職場へと状況が変化しています。現在の豊田森林組合でも作業班などで働く女性が結構います。こういったところから、林業に新しい風が吹いてくれることを期待したいですね。 |