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夢は一本釣りで独立
漁師の可能性にかける |

活魚として卸すタイやカワハギなどは、手作業で水揚げ。活きのいい魚を傷つけないよう、丁寧に網から活魚用の水槽に移す |

千葉県南房総市 富浦町漁業協同組合定置部所属
矢倉 佳典さん
午前7時、富浦町漁協卸売市場。朝日を受けながら、漁を終えた船が次々と帰港する。水揚げした魚が運び込まれ、セリ場に威勢のいい掛け声が響き渡る。
漁協自営の定置網漁船・新生丸(11トン)が接岸すると、乗組員の一人、矢倉佳典さん(30歳)がひらりと陸に飛び移った。ロープで船をつないだかと思うと、次の瞬間にはフォークリフトで水揚げ用の箱を準備し、再び船に飛び乗り、今度はクレーンを使ってタモ(網)を魚槽に入れる。作業の流れを読み機敏に動く姿は、新人漁師とは思えないほど。まだ、6カ月間の漁業研修を終えたばかりなのだ。

アジやイワシなど大衆魚はクレーンを使って水揚げする |
おれにも漁師の道がある
矢倉さんが「漁師という選択肢」に気付いたのは、一年前の初夏だった。
「前職の電話配線会社を辞め、休養期間中に一級小型船舶免許を取得しようとインターネットで情報検索するうち、漁業研修生の存在を知ったんです」
北海道の漁師町の出身で、釣り好き。漁師へのあこがれはあったが、サラリーマン家庭に育った自分には縁がないとあきらめていた。服飾デザインの専門学校を卒業後、ユニフォーム会社などで働いたが、いつもなにかが違うと感じていた。
そんな時に見つけた「未経験者から漁師になる道」。漁業就業支援フェアに足を運び、「温暖な気候の地域」という希望に合った千葉県富浦町漁協で漁業研修を受けることが決まった。

新生丸の乗組員は31 歳の漁労長を筆頭に7名。今年の正月休みは、漁労長の誘いでスノボ&温泉旅行を楽しんだ |
定置網もおもしろいじゃないか
矢倉さんにとっては、一本釣りのように魚と格闘してこそ漁師。漁業研修生になるまで、定置網漁は物足りないんじゃないかと思っていた。しかし、いざ漁に出てみると、その魅力にどんどん引き込まれていった。
「船の魚槽が満杯になるほど捕れて、大漁旗を翻しながら帰港した時は、なんともいえない充実感がありましたね」
定置網といっても、潮の流れや仕掛ける場所によってさまざまな構造があることを知り、網の設計に興味をもった。だから、先輩漁師や漁網会社の担当者に話を聞きながら、知識を得ていくことがおもしろくて仕方がない。
午前中の水揚げの後、網や道具類の修繕、定期的な網交換など作業が終わるのがだいたい午後3時。そこからは自分の時間となる。「いつか独立して、一本釣りの漁師になるのが夢。そのために、今は漁師として技術を習得し、知識を高めておきたい」と、仕事の後も漁業の研究にいそしむ。そのかいあってか、「仕事の覚えが早い」と周囲の評判も上々。
漁師として、自分の成長を実感できる毎日。まずは、一人前の漁師として認められるのが目標だ。 |
| 【No10(2008年初夏号)掲載】 |
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