
第51簸川丸の前で |

鳥取県境港市 島根県機船底曳網漁業連合会所属
共和水産株式会社 松本 大さん
野球部で鍛えられた心と身体。それが松本大さん(23歳)を支える大きな柱だ。
昨年11月から境港市の共和水産(株)で4カ月に及ぶ研修を経て、今年3月から見習い漁師として沖合底引き網船・第51簸川丸(85d)に乗っている。
漁師言葉は荒く、船上では厳しい言葉を浴びせられることもしばしば。怒るのは可愛がっている証拠なのだが、そもそも普通にしゃべっていても怒っているように聞こえてしまう。
「『おーい』じゃなくて『おら』ですから。でも野球部なんてこれ以上の上下関係だった。もう慣れましたよ」

出港する第51 簸川丸 |
よみがえった漁師への憧れ
鳥取県の中部にある琴浦町で生まれ育った。高校卒業後、工場で機械オペレーターとして5年働いた後に退職。次の道を模索するなかで、高校生の時にアルバイトがてら、知り合いの漁船でトビウオ漁を手伝ったことを思い出した。あの時、船長の姿に漠然としたあこがれを抱いていた。漁師という選択肢が浮かんだ。
全国漁業就業者確保育成センターのホームページを見て、共和水産(株)で研修を受け、機械の種類やロープの結び方、魚種の見分け方など基礎を学んだ。
食べて食べて漁師の体に
沖合底引き網漁は過酷な作業の連続だ。24qほど沖へ出て、2〜3日かけて漁場を巡っていく。漁場に着いたら、昼夜を問わずに仕事に取り掛かる。網を入れては引き揚げるという作業を繰り返す。港へ戻っても、水揚げを終えるとまたすぐに次の漁へと向かう。
松本さんの仕事は、掃除など基本的な作業が主で「一番簡単な力仕事です」。
まずは、なによりも船に慣れること。漁に耐えられる体づくりをするためだ。
野球で鍛えた身体には自信をもっていたが、使う筋肉が違うことを痛感した。
「漁師はあまり理屈では教えてくれない。見て、自分で覚えていかなければ」
睡眠時間として許されるのは1日約6時間。これを作業の合間に断続的にとる。長く寝られても2時間。寝ては起き、作業をしてまた寝る、という繰り返し。
「さすがに体を壊すかと思った」
そんな松本さんを支えたのは「食事」。とにかく食べた。船では朝、昼、晩、夜中の1日4食。
「飯は絶品。刺身とかアンコウの味噌汁とか出てくる。ガツガツ食べてますよ」
船に乗る前と比べて、いまは体重も6s増えた。少しずつ、海の男へと変わっていく自分を感じている。
船上での息抜きはテレビと、友達とのメール。そして「おやつを食べてる時」という若者らしい一面ものぞかせる。
漁期は給料を使う暇もないが、休漁期を迎えればゆとりある日々が待っている。そんなメリハリも、この仕事の特徴だ。
「どんな仕事に就いてもくじけそうになる時は来ると思うけど、いまはこの仕事を選んだことに後悔はありません。精神的にも体力的にも大変な仕事だと思う。これを続けてきた漁師さんたちを尊敬しています」 |