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農業で2人の夢を追いかけて

兵庫県丹波市
古谷 洋瓶さん 暁子さん

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一冊の本が導いた農業の世界
  古谷洋瓶さん(30歳)が兵庫県丹波市市島町に移住して農業を始めたのは、2004年。きっかけは、交際中だった暁子さん(33歳)が差し出した一冊の本だった。
  2人とも京都市出身。当時、洋瓶さんは24歳で、大阪でタンクローリーの運転手をしていた。毎日見るのは工場が立ち並ぶ風景。子ども時代、裏山で遊んで暮らした洋瓶さんはいつしか、自然あふれるところで暮らしたいと思うようになる。といっても、すぐ農業にたどり着いたわけではなく、もんもんとしていた。そんな時、暁子さんが「これ読んでみる?」と、完全無農薬で野菜を栽培する農家が書いた本を貸してくれた。
  「普段本なんて読まないのに、なぜか自分のなかにすっと入ってきて、『有機農業をやりたい』と思ってしまった」
驚いたのは暁子さん。母親が農家生まれで、農業の大変さを知っていたからだ。
  「悩んでいるみたいだから気分転換にと貸した本で、まさか農業をするといい出すとは思ってもみなかった。サラリーマン家庭で育ち、土にさわったこともないのに、『なにをいうんや』と思った」
  もちろん、両親も大反対。しかし、いい出したらきかない彼の性格を知っている暁子さんは、できるだけいい環境で就農できるよう、協力しようと思い直した。
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暁子さんは、昨年からセット野菜や卸している八百屋のお客さんを招いて、縁側カフェなどのイベントを始めた

充実した支援制度が魅力
  洋瓶さんが働いている間に、暁子さんは京都にある会社に勤める傍ら、インターネットや図書館で情報収集に努めた。そんななかで出合ったのが、市島町(現・丹波市)。「有機の里」と呼ばれ、新規就農を支援するNPO法人「いちじま丹波太郎」がある町だった。新規就農者には1年間、町が月10万円支援する制度があるのも魅力だった。
  そしてなにより、新規就農した先輩が多いのが心強かった。先輩農家を訪ね、「ここだ」と確信。2人とその熱意にほだされた暁子さんの両親4人で、家探しのため不動産屋を訪ねると、偶然、1カ月前までほかの人が借りていたという空き家が見つかった。「皆、家探しに苦労しているのに、うちらはすごいラッキー」と洋瓶さん。喜ぶ暁子さんに、「田舎に行くなら結婚して行け」と両親。11月に家を見に行き、翌年1月に移住、3月に結婚。1年間の研修を経て翌年には独立とスピード就農だった。
研修期間から、NPOが世話してくれた借地で野菜づくりを始めた。「一番つらかったのは、あのころだなあ。これから自分はどんな農業をやっていくのか、生活していけるのだろうか…精神的にきつかった」と洋瓶さんは振り返る。
  暁子さんは、出産前まで元いた会社でアルバイトし、家計を助けた。車に野菜を満載して出勤。職場の人や親戚、友人に買ってもらうためだ。出産でいよいよ通えなくなった時、「じゃあ、定期的に宅配して」という人が現れ、セット野菜の通販を始めるきっかけとなった。さらに借地を拡大してブルーベリーを植え、「奥丹波ブルーベリー農場」と命名。昨年から収穫・摘み取り園も始めた。「ようやく目指す農業像が定まって、気持ちが楽になった」と話す。
  いまだに生活費は貯金を崩して賄っている状態。長女が生まれて家族も増え、経済的にはまだ厳しいが、「きっちりした目標ができ、お客さんとのコミュニケーションもとれてきたし、妻との役割分担もできてきて、気持ちは本当に充実している」と語る洋瓶さんの言葉には自信が感じられる。
  いずれ、自家の施設を持ち、加工品の販売もできればと考えている。いま一番の課題は、「土づくり」という。

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暁子さんのメッセージ
  夫婦で就農したことで、地域の人に受け入れてもらいやすかった面はあると思う。ブルーベリーを導入したことで、彼の夢と、「店を持ちたい」という私自身の長年の夢とが、実現できそうでワクワクしている。農業を共通項に、どっちも主役になれるのがいい。
【No.10(2008年初夏号)掲載】
 
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