ここから始まるI・J・Uターン
山への切符は一冊の本

奈良県川上村 有限会社ヤマツ産業
福田 弘樹さん
吉岡 冬青さん

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「日々勉強です」と吉岡さん
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「楽しい職場ですよ」と福田さん
 ヤマツ産業は、現・会長である辻谷達雄さんが興した会社だ。森林の管理育成のみならず、林業周辺の仕事も幅広くこなし、業績を伸ばしてきた。この日も、現場は吉野の山里を離れた住宅街。危険木処理だった。
  陣頭指揮をとるのは、達雄さんから後を任された二代目社長、三男の辻谷公さん。「一番下は、子どものころから山が好きで仕事を手伝ってきた」と達雄さんがいうだけあり、公さんのキャリアは長い。
  一方、ヤマツ産業の従業員は、I・J・Uターン者が多い。達雄さんが出版した山の本を読み、その人となりにひかれて「働きたい」と訪ねてくる若者が多いからだ。福田弘樹さん(39歳)と吉岡冬青さん(30歳)も本を読み、吉野にやって来た。

数字の世界から山へ
  福田さんは奈良県出身の元銀行マン。希望して入った会社だったが、30歳に近づくころ、空調の効いたオフィスで数字とにらみ合う毎日に違和感を感じ、自然とかかわる仕事がしたいと思い始めた。
  「林業」の二文字が浮かんだのは友人が林業に携わっていたから。話で聞いて知ってはいたが、さらに詳しく調べるため、本に情報を求めた。手に取ったのが親父さん(達雄さん)の書いた本だった。
  「読み進むうちにこの人のもとで働きたいという気持ちが募ってきた」という福田さん。すぐに達雄さんに電話をかけた。「とりあえず吉野に来い。体験してから決めたらええ」といわれた。
  初めての現場体験は金剛山。ノコギリを使って枝打ちなどを手伝った。「今でも鮮明に覚えています。気持ちがよかった…」と、下を向いて照れた。
  達雄さんにいわせれば「なんぼ言葉で説明したって実際にやってみなければ合うかどうかわからない。体験してもらうのが一番ええ」のだという。
  それから9年。福田さんもいまや中堅に。最近、親父さんがいった「体験が一番」という言葉の重さを改めて感じている。
  「木をどう倒すか、倒した木をどう処理するかなど、斜面や周囲の状況によって毎回やり方が違います。それに伴ってどんな道具を使うかも変わってくるでしょ。林業は道具の種類が多いんですが、なんでも使いこなせないと仕事にならない」
  だからどれだけ場数をこなしたかが重要になってくる。「小さい時から山に携わってきた親父さんや社長の知識にはかないません。学びきるのは難しい。まだまだです」と謙虚だ。

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懐の深さに感謝
  吉岡さんは、元郵便局員。もともとアウトドア好きだったが、それは趣味の世界と郵便局へ就職。
  「でもやっぱり体を動かす仕事に就きたくなっちゃって」ハローワークで求人検索をしていたら、ヤマツ産業の求人が目に飛び込んだ。すぐに「『あの本』の人の会社だ」と思い出し、興味をひかれて面接。同社の一員となった。
  ところが1年後、両親が病気に。
  「考えた末、大阪に帰ることにしました。また郵便局に就職です」
  吉野に戻ってきたのはそれから8年後、いまから1年前のことだ。
  「再び受け入れてくれるってわかった時はうれしかったですね。この会社の人たちは、いつも周囲の人間を気にかけてくれる…そんなところがあるんです」
  吉岡さんは、尊敬できる先輩に囲まれている。いまは少しでも早く一人前になることで皆の力になりたいと考えている。

吉岡さん
I・J・U+一人暮らし
+林業に就く人へ

家事、とくに「料理ができるか」ということがとても重要です! 実家暮らしだった僕には盲点でした。
仕事に体が慣れるまでの数カ月は、家に帰ったらなにもやる気が起きないほど。でも腹は減る。田舎はコンビニも弁当屋もないし、給料面からいって毎日外食もできません。さっと自分でつくって食べるしかないけれど、料理の心得があるかないかで大きく違ってきます。ドロドロに疲れた体を引きずって「肉食いてえ」なんて思いながら「あれ? コメって研ぐんだっけ…」。一人暮らしのノウハウぐらい身に付けておけばよかったと、当時思ったものです。なにからなにまで「初めて」というのは、ちょっとつらいですよ!
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@この日は吉野地方から車で1時間かけ町に。住宅街の危険木処理を行う
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A小高い丘の上から住宅に覆いかぶさるように何本もの木が生えている
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B先に危険木の上部を伐採。チェーンソーを担いで木に登り、角度を見定めてカットする
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C木の半分までチェーンソーで切り込みを入れ、ワイヤーで牽引して倒すことに
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D辻谷社長の指示のもと、角度を付けて2〜3カ所から牽引
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E引いては止め、また引く。会長の達雄さん(左)も作業に参加
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F大声で指示を出す現場監督の辻谷社長
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G倒された危険木。このようにして何本も倒していく
【No.10(2008年初夏号)掲載】
 
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