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ツー大の参加者とともに宮原町商店街を歩いて回り、ガイドを務める嵩さん |
(財)学びやの里にある木魂館は、北里柴三郎博士の「学習と交流」の精神を次代につなぐことを目的に、1988年に建設された研修宿泊施設。また、宿泊施設に加え、九州ツーリズム大学(以下、ツー大)、おぐに自然学校など、さまざまな地域振興事業の事務局を設けている。
インターン参加がきっかけに
木魂館で研究員を務める嵩和雄さん(35歳)は、東京出身のIターン者。大学では法学部から建築系の大学院へ進み、都市計画・まちづくりを学んだ。
2000年夏、国土交通省が実施する地域づくりインターンに参加。長野県栄村に17日間滞在し、農業体験をはじめ、企業観光課との意見交換会や、村内の若者へのアンケート調査を行った。
これをきっかけに、博士課程4年目を迎えた翌01年、研究室の教授から「(財)阿蘇地域振興デザインセンターへ行ってみないか」と声をかけられる。そこは、阿蘇地域の地域・観光振興と情報発信に取り組むシンクタンク。快諾し、さらなる研究のために熊本へ──。
そこで嵩さんは、小国町の木魂館に居候しながら、阿蘇市内へ40〜50分かけて通い、イベントの事務局を手伝った。
「アルバイトだから週2〜3日でいいといわれていたけど、研究のために毎日通った。バイト料は月8万円くらい」
それに自分の大学などからの研究助成金が入るため、あわせて年間200万円くらいの収入になった。家賃はかからないが、物価は東京とさほど変わらないので食費がかさむ。「木魂館の隣接レストランのおばちゃんたちに気に入られてからは、たまに食事を出してもらっていた」と笑う。

ツー大の講座で開催する宮原商店街散策で、ガイドさんや、立ち寄る商店主と打ち合わせる嵩さん |
町民に支えられ家族4人暮らし
それからも阿蘇地域を調査研究し続けたが、12町村もあるこのエリアは広域すぎて研究がはかどらない。そこで02年、町村合併後でも自立できる地域づくりの手法として「ネットワークビューロー構想」を企画立案。それが小国町に採用され、(財)学びやの里の職員として雇われることになった。この段階で嵩さんは、休学していた大学院を単位取得退学(満期退学)し、小国町に腰を据えることを決心する。
しかし、一軒家の空き家が少ない地域で、新居探しは難航。アパートを探したところ、隣町の南小国町に見つかった。ここで、学生時代からの彼女を呼び寄せ、03年5月から所帯をもった。「毎年、毎年、『来ないか』と誘って、3年目にやっと来てくれた」と顔をほころばせる。

ここ10年くらいの間に、40組くらい移住してきている小国町 |
奥さんの史恵さんは、大学院で一緒に都市計画を学んだ同級生。なので、もともと嵩さんの研究に対して理解は深い。だから、東京でしか暮らしたことのない彼女が小国町に移住し、すぐに「心強いサポート役」になってくれたという。
翌04年に長女の玲衣ちゃん、07年には次女の悠理ちゃんが誕生。最近では、家族ぐるみでの付き合いも増えてきた。
「研究者としてのスタンスを保って地域の人に接しなければならない場面も多いが、家族4人で暮らしていると、いろんな人に支えられていると実感します」

小国の伝統的構法「置き屋根」をヒントに「ボックス梁」という新しい構法の建物で作られた木魂館 |
人材育成が地域振興につながる
現在の主な仕事は、ツー大の事務局業務をはじめ、木魂館の施設管理、そして地域づくりインターン事業の受け入れ。嵩さんの出発点ともいえる国交省のインターン事業では、今度は派遣先のスタッフとして精力的に動き回っている。
そうしたルーティンワークのほかに、自身の研究のためにさまざまな活動も行っている。その一つに、フリーペーパーの発行がある。地域からの情報発信を目的に、20〜30代のUターン者を中心に呼びかけ、04年11月に創刊した。
嵩さんは実際にやるのではなく、企画を立てて道筋を付けるだけ。それがどのように町の活性化につながるか、その経緯を見ていくのが自分の研究だという。
「一回やれば『やり方』を覚えられるし、そこから先は住民の力で町をつくればいい。地域づくりは人材育成が鍵。考える人、動く人をつくることが大事」
このフリーペーパーは、さらに新たな展開を見せる。近隣の宮崎県高千穂町の役場の人が見て、町の若者の手で同様のスタイルのものを創刊させたのだ。いまでは姉妹誌のように、互いの編集スタッフが連絡をとり、刺激し合いながら新たな誌面をつくり続けている。
新しいムーブメントが、さらに新しいムーブメントを起こす。若者が活気づけば、町も活性化する。
「机上の研究ではなく、実践型の研究とでもいうのかな。町の変化、人の変化を間近で見られるのがうれしい」
ツー大やインターンの開催準備にいそしむ嵩さん。自分の働きが、地域振興に小さな灯をともすようにと、毎日、朝に晩にと駆けずり回っている。

小国町のUターン者、穴井喜織さんがデザインしているフリーペーパー「WEG」(左)と、高千穂町で発行する姉妹誌「5(FIVE)」(右) |
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