
本社・肥育豚舎群の前で─林さん |
林牧場の目指すことを一言でいえば、「養豚業をカッコよくする」ということです。私が養豚業に就いたのも、社長である父・林邦雄のその理念に共感したからです。
当社は現在、本社のある桐生市新里町を拠点に、7カ所の農場を展開し、約6千頭の母豚を飼養、年間14万頭あまりの肉豚出荷を行っています。
畜産経営は、環境問題を避けては通れません。これまでの養豚業は、汚い、臭いといった迷惑産業のイメージでした。林牧場は、環境対策に早くから取り組んできた結果、「においが少ないし、きれい」といっていただけるところまで環境対策をブラッシュアップしてきました。
現在、豚のふんは密閉型の堆肥化装置(コンポスト)で発酵させて堆肥にしています。し尿は大型浄化槽(複合ラグーンシステム)を完備し、放流基準値を十分にクリアできるまで浄化しています。豚舎からの臭気対策は、バチルス菌(納豆菌の一種)や、最新の豚舎はバイオエアフィルターでの消臭を行っています。
畜産経営としては規模が大きいだけに、環境対策にはこれからも、しっかりと力を入れていきたいと思います。

富士見離乳農場 |
農業、そして畜産の役割は、安全で安心できる食料を安定して生産・供給することです。当社は、企業理念のなかで「世界一安全で、最高においしい豚肉を生産し、社会に貢献すること」をうたっています。
繁殖(種付け・分娩)、離乳、肥育の3部門を農場立地ごと分離するスリーサイトシステムをとっています。分娩部門は、子豚が生まれて3週間くらいまで育てます。離乳農場では、生後70日齢、体重にして30sまで育てます。それから肥育農場へ移動し、体重120sまで育てて、と場へ出荷します。繁殖・離乳・肥育の3部門に分けることで、病気の発生・伝播のリスクを抑えることができます。
また、分娩・離乳・肥育の各豚舎は、オールイン・オールアウト方式をとっています。豚を移動・出荷した後の豚舎を洗浄・消毒・乾燥させることにより、病気の連鎖を断ち切るためです。
多くの豚舎は高断熱のウィンドレス豚舎で、コンピュータ制御の空調によって、豚にとって快適な環境をつくり出しています。
種付けはすべて人工授精で行っています。大ヨークシャー種・ランドレース種・デュロック種の三元交配により、日本人の求める「霜降りが多く、柔らかくておいしい豚肉」を安定生産しています。

最先端設備の豚舎 |
養豚、そして農畜産業は、手ごたえのある仕事です。というのは、自分のやった仕事の成果が目で見えるから。手をかければその分の成果が出るし、手を抜けばそれなりの成果しか出ません。そして、体を動かして働き、よく食べて、よく眠るという健康的な生活を送ることができます。当社にはメタボな人間はいません。入社した時には体重が100sほどもありましたが、働いているうちに80s以下まで体重が落ち、「お金がもらえて痩せられるなんて最高!」と喜んでいる社員もいます。
よい仕事環境でやりがいのある仕事をし、楽しい生活を送ることが、社員の幸福につながると考えています。例えば、当社は基本的に残業がありません。朝8時から夕方5時までの勤務で、完全週休2日制。だから、勤務時間内は集中して仕事し、終業時間までにきっちり仕事を終わらせます。あとはプライベートタイムなので、スポーツチームやオーケストラに入っている人、なにかの教室に通っている人など、時間の使い方はさまざまです。しかし、社員は決して遊んでばかりいるわけではありません。当社は多くの部分が機械化されているので、社員は人間がやるべき仕事に集中できるのです。
これからの課題は、人材育成だと考えています。現在、パートも含めて従業員70人。うち6割は、20〜30代の若い人たちです。チームワークを必要とする仕事なので、同僚同士のコミュニケーションや、人の扱い方も重要な要素です。現場での豚の飼養管理技術はどんどん進歩していますので、そういう勉強も欠かせませんが、人材教育もそれと同様に力を入れていくつもりです。

巨大な汚水処理プラント |
農業や牧場で働くということに対して、「のんびりとしたイメージ」をもっている人は少なくないようです。しかし、実際にはもっとリアルというか、シビアというか、時間やコストとの戦いを強いられる。農業に就きたい人は、こうしたビジネス意識も求められます。
林牧場は近年継続して規模拡大を図り、ここ5年くらい大卒新卒者を毎年10名ほど採用しています。新入社員に豚の知識や経験は一切求めません。要望するのは、動物好き、体を動かすことが好き、そして元気な人。入社時に豚のことが全くわからなくても、3〜4年目でチームリーダーに抜擢される人もいます。

ミーティング |
デンマークをはじめとするヨーロッパの国々や、アメリカ・カナダなどの養豚先進国と比べると、日本の養豚業は生産性や疾病対策などで遅れを取っているのが現状です。海外の養豚先進国を見聞してくると、業界全体の意欲、能力、勢いが随分違うなと感じます。養豚はビジネスとして、またサイエンスとして確立されているのです。
そういう意味においては、日本の養豚産業はまだ成熟していないといえます。ということは、まだ伸びる余地と可能性があるということです。日本人は勤勉で優秀ですし、他分野では世界をリードする産業も少なくありません。そうした日本の人的・知的資源ともいうべきものを農業にもいかしていくべきでしょう。
最近の養豚経営を取り巻く環境は、飼料の値上がりなど、厳しい状況にあります。飼料価格そのものについては、養豚生産者として直接どうこうできるものではありません。むしろ、飼料価格の高騰は、貴重な飼料をいかに有効かつ効率的に肉に転換できるかを突き詰める良いチャンスだと考えています。そして、このような情勢の中でも、さらなるコスト低減と生産性の向上、規模拡大を図り、安全で安心できる豚肉を安定して供給していきたいと考えています。 |