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人と機械、そして馬による「馬搬」
適材適所の林業で次世代につなぐ
宮城県大崎市 田手扶紀さん(32歳)林業歴:3年
Profile:
【たて ふき】宮城県仙台市出身。学生時代の農林漁業体験で馬に触れ、馬と生きる仕事を志す。平成9 年に障がい者向けの乗馬療法のスタッフとなるため宇都宮市に移住したが、東日本大震災を契機に地元で馬とともに生きる道を模索。そこで林業における馬搬を知り、平成26年に宮城県大崎市のNPO法人しんりんのきこりとなって現在に至る。
「NPO法人しんりん」http://shinrin.org/
馬搬 メイン画像

馬をパートナーとして活動する自然派林業女子
  源義経や松尾芭蕉も訪れたという歴史ある湯の里、鳴子(なるこ)温泉郷。その中でも最も古いとされる川渡(かわたび)温泉旅館街のほど近くに、「エコラの森」と呼ばれる山林がある。20年ほど前にリゾート開発の計画が頓挫し、荒れてしまった土地である。ここを拠点とする特定非営利活動法人しんりん(職員数8人)は、エコラの森を始め森林における資源の有効活用や環境保全機能を適切に発揮させることを目的に活動している団体である。そこで唯一の「女性きこり」として働く田手扶紀さんは、かつて日本中で行われていた馬による木材の運搬「馬搬」を現代に復活させることを目標に、林業と馬の世話に情熱を注いでいる。
  「正直に言えば、林業に携わることになるとは思っていませんでした。ですが、今では元気な森を次世代につなげていくという気持ちで取り組んでいます。そして何よりも、馬を仕事のパートナーとしていられることを楽しんでいます」。
  田手さんが馬に初めて触れたのは、大学時代の沖縄での畜産体験であったという。それをきっかけに1年半ほど休学し、沖縄の牧場にファームステイして馬の世話を経験。その際、「馬と一緒だと10qの距離も走れてしまった」などの不思議な力に惹かれて馬に携わる仕事を志すようになった。そして宇都宮市における障がい者向けの乗馬療法のスタッフとして勤務したが、そこでも、例えば順番を待てない子どもが乗馬を通じてルールを守れるようになるなど、様々な変化を目の当たりにしてきたという。
  その後、東日本大震災をきっかけに地元・仙台付近で馬とともに働ける仕事を模索する中で同法人の理事長と出会い、馬搬という林業で活躍する馬の存在を知り、その実現のために林業の世界に飛び込んだのであった。
エコラの家
エコラの森にあるしんりんの休憩所「エコラの家」。

仕事としての馬搬の実現と次世代へつなぐ林業のために
  取材に訪れた6月初旬は、苗木が生い茂る雑草に埋もれてしまわないよう、刈払機で草を刈る「下草刈り」の季節。刃を研ぎガソリンを入れ、広大な土地を黙々と整備していく。
  田手さんにとって、林業は「馬があってこそ」だと言える。ただし、林業に対して中途半端な気持ちで取り組んでいるということは決してない。きこりとなってからは日々の作業を通じて経験を積み、知識と技術を養ってきた。
  「馬と触れ合いたいだけではなく、仕事として馬搬をしていると胸を張って言えるようにしたいんです。そのためにはきこりの技術もしっかりと身につけていかなければなりません」。
  13歳の牝馬「琴姫」が同法人に来たのは今年の4月のことで、まだ日常の作業で馬搬を行うには至っていないという。今は馬が暮らせる森林作業場を整えている段階で、同時に、より力のある大きい馬も探しているところである。
  女性の林業従事者は全国的にも珍しい。男性との力の差は感じるが、それに対しては逆に、女性ならではの丁寧な作業を心がけるなど工夫しているという。そして、少数派である林業女子の交流を目的に「宮城きこり女子会」という団体を立ち上げ、林業への興味・関心を高めるべく不定期でイベントを開催している。
  同法人としてもチェーンソー等の講習会を実施しているほか、機器の資格所有者向けに週末だけ一緒に作業してもらうイベント等も開催している。そして、このボランティアへの参加者には「モリ券」という地域通貨を渡し、地域振興に活かしている。
雑草刈り
回転刃がうなりをあげ、雑草を刈り倒していく。
  「職として林業に就く人を増やす前に、森に関わる人を少しずつ増やしていければと思っています。イベントに家族で参加してくれたならば、子どもが将来の夢として林業を考えてくれるかもしれません。そして、そこにはお馬さんもいて…と思ってくれたらいいなと思います」。
  次世代へつなぐ林業、そして馬との共生。いずれもまずは多くの人に知ってもらうこと、体験してもらうことが大切であり、そのために同法人と田手さんは今日も汗を流している。
馬搬の様子
イベントで実施した馬搬の様子。今後、事業として取り組んでいくことを目指している。
薪用の木材
細かく割り、薪用に仕上げた木材。資源として適切な用途があることも、持続可能性の確保のために不可欠。
清水川 令 さん img
インタビュー2
【No28(2016年夏号)掲載】
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