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練馬区の体験農園から農業を本業に
新天地でレタス農家として奮闘中

長野県御代田町 上村 健一郎さん(46歳)
農業歴:8年

【うえむら けんいちろう】東京都出身。中学校までを中野区ですごし、高校時代から練馬区に引っ越し。農業体験農園を利用するまでは、農業とは無縁の生活を送っていた。

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やると決めたらとことんやる!
体験農園が生き方を変えた

軽井沢駅から、しなの鉄道に乗り14分。雄大な浅間山の南麓に広がる御代田町は、標高800mを超える高原の町だ。
平成25年に同町に開園した上村農園では、冷涼な気候を活かし、レタス栽培に取り組んでいる。農園主の上村さんは東京都出身で、就農したのは38歳の時。その決断の原点には、体験農園があった。
「ラグビー漬けの大学生活を過ごし、卒業後には職を転々として、練馬区で弁当屋を始めたのが27歳の時です」。
その近所に「緑と農の体験塾」(参照)があり、多くの人々で賑わっていた。
「食に関心がありましたし、初心者でもできるという触れ込みでしたので、利用を決めました」。
それまで「農業とは無縁」の上村さんだったが、すぐに馴染むことができた。
「鍬の使い方、畝の立て方、肥料のやり方等の基礎から、作物の状態を見極めるコツまで、加藤さんに教わったことは大きいです。30種類以上の野菜を育てましたが、初めての収穫の夏、トウモロコシを食べた時の感激は忘れられません」。
野菜作りは発見、驚き、喜びの連続だった。1年の利用更新を8回重ね、「農業を仕事にしたい」という想いが大きくなっていた。そんな時、テレビで御代田町の農業法人(有)トップリバーを知ったことが、次の転機となる。
「意欲的な就農者を見て、居ても立ってもいられなくなりました。加藤さんに相談したところ『生半可な気持ちなら止めなさい』と諭され、よく考えて覚悟を決めました」。
説明会時は100名を超えた希望者も、3か月間の研修に進んだのは上村さんを含む8名のみ。
「やはり、体験農園で基礎を身に着けていたことが役立ちました。家族がいたことも大きな支えです」。

浅間山

御代田町から見た浅間山。豊かな自然に上村さんも魅了されたという。

農業だって利益が出せる仕事
御代田町で描く次のステップ

御代田町に家族で引っ越し、「仕事」として農業に取り組む日々が始まった。
「トップリバーでは個人に任される部分、裁量が大きいです。農地を借りるところから出荷まで、作業が膨大でした。畑が終われば日報を書き、収量等の統計を取り、役職が上がれば後輩の指導もあります。体験農園とは大違いでした」。
農作業と事務作業に追われつつ5年。「いつか独立する」という強い気持ちを持って働き続けた。
「今でも加藤さんが様子を見に来てくれます」という上村さんの前には、約4.7haの圃場が広がる。3年前の営農開始時は約2.5haで「当初は農地をなかなか借りられなかった」ものの、道路の草刈り、溝さらい等の地域活動に参加し、野菜を地主に届ける等、地域を大切にして信頼を得てきた。何より、真摯に農業に取り組む姿が認められたことが大きい。
「レタス約3.1haに加え、キャベツや非結球のサニーレタスを作っています。レタスは二毛作で5~6月、9~10月が収穫のピーク。朝4時半からヘッドライトを頼りに作業が始まります」。
社員1人とパート5人を雇い、1日に200ケース・2400玉をトップリバーを通して販売している。

相談相手

近所に住む苗の専門家・長谷川さんは、上村さんにとってトップリバー時代からの先輩で、頼りになる相談相手。

独立にあたっては、農業機械等の設備投資に就農支援資金を利用し、初年度こそ青年就農給付金( 経営開始型)を受給したものの、それは1年間のみ。上村さんが強調するのは「農業は利益が出せる仕事にできる」ということ。
「若い子を雇うと『しんどい、無理』と2週間足らずで辞めてしまうことがあります。確かに農業は過酷な面もありますが、努力をすれば報われる、儲かるということも知ってもらいたいんです」。
今後は「人を育てることに注力したい」という上村さん。東京で育まれた農業への情熱を、この町で次の世代へと繋ぐ。

レタス

レタスは切り口から乳液のような液体(ラクチュコピクリン)が出るため、カゴ詰めの前に洗浄が必要となる。

新車のトラクター

独立就農から3 年、新車のトラクターを納車。「ずっと中古車を使っていたので感慨深いですね」。

加藤義松さん

インタビュー