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シェアハウス生活で牡蠣養殖に挑戦!
将来の独立を目指し奮闘する日々

宮城県石巻市 大野 立貴 さん
漁業歴:1年3か月

【おおの りつき】滋賀県大津市出身。高校卒業後に地元ホテルの厨房に勤務。23歳の時に北海道にわたり畜産業に従事した後、漁師を志し平成28年4月に石巻へ。シェアハウスに暮らしながら牡蠣養殖を学ぶ。結婚を機にシェアハウスを離れた。

畜産を経て漁業の世界へ
石巻の名産・牡蠣の養殖に挑戦

石巻市の東部、牡鹿半島にて漁業の世界に飛び込んだ大野立貴さん。平成28年4月から地元のベテラン漁師の下で牡蠣養殖の指南を受けており、将来的な独立を目指して奮闘している。
以前はホテルで調理の仕事をしていたという大野さんは、もともと一次産業に興味を持っていたこともあり、23歳から4年間は北海道で畜産業を経験。その後、漁業に関心を移し、縁あって石巻にたどり着いた。事前に「養殖業に就きたい」というイメージは持っていたが、具体的な魚種については石巻の漁業について学んだ上で決めたという。
「銀鮭とかホヤとかいろいろ見ましたけど、牡蠣が一番好きなんで牡蠣の養殖に決めました。いろんなところの牡蠣を食べましたが、石巻の牡蠣が一番おいしいです」。
大野さんの就業は、漁業の担い手育成を事業とする一般社団法人フィッシャーマン・ジャパンが支援した。平成26年に設立された同法人は研修プログラムを用意しており、大野さんも研修をとおして石巻における漁業の基礎を学んだ。
牡蠣養殖は、牡蠣の種(稚貝)を付着させたホタテ貝の殻を海に沈めて行う。石巻では、プラスチックの樽を海に浮かべ、牡蠣を連ねたロープを海中に垂らす「垂下式」と呼ばれる手法が主流だ。大野さんの現在の目標は、船の操縦技術を上達させること。海に浮かぶ大きな樽と大量の牡蠣を効率よく安全に取扱うには、適切な操船技術が不可欠である。

大量の樽

海に浮かぶ大量の樽。その下にロープが張られており、牡蠣がぶら下がっている。

「船はまだまだ思うように操縦できてないけど、一人でできるようにならないと独立も何もない。基本だから頑張って身につけたい」。

水揚げした牡蠣と大野さん

水揚げした牡蠣を作業台に広げる大野さん。この後は一個一個手作業でむき身にし、出荷する。

牡蠣養殖を学んで1年と3ヵ月が経過し、一通りの作業を体験した大野さん。
「技術と知識を学び、経験を積んで早く一人前となりたい」。
その姿勢は意欲的だ。

仕事と暮らしの基礎を築いたシェアハウスでの生活

石巻に移住してから約半年間、大野さんは漁業の担い手育成を目的に設けられたシェアハウスに暮らしていた。これはフィッシャーマン・ジャパンのシェアハウス事業「TRITON BASE」の一つで、事業に賛同する地元住民から同法人が借り受け、リノベーションして新規就業者に住まいとして提供するという仕組みになっている。
「移住し、漁業に就業していただくには、仕事と住まい、そしてコミュニティを構築する場が必要です。シェアハウスを作ることで、同じ境遇の若者同士が自分の経験を話しながら仲良くやっていけたらいいと考え、運営に取り組んでいます」(フィッシャーマン・ジャパンの島本幸奈さん)。
大野さんが暮らしたシェアハウスは、3つの個室のほかにゲストルームと事務所スペースを構える作り。共用部には洗濯機や冷蔵庫、ガスコンロ等が備えられており、家賃は1月当たり3万円である。移住時には仕事と生活環境が一変するだけに、経済的負担の軽減は当事者にとってありがたい。そして、言うまでもなく仕事場と住居は近い方がいい。漁業は始業が早い場合が多いためなおさらだ。石巻ではもともとは浜の近くには賃貸物件がなかったが、シェアハウスがあることで、移住者は遠方に住居を構えずにすむ。

TRITON OSHIKA

大野さんが暮らした、牡鹿地区のシェアハウス「TRITON OSHIKA」。古民家を改装している。

結婚を機にシェアハウスを出た大野さん。30歳前後の若手漁師3人が一つ屋根の下で暮らした生活を振り返ってもらうと、「家の中は新しくて、特に風呂がきれいなのはうれしい」と設備面について好評価をつけた。「一人ひとり生活スタイルが違うのでもめたこともありました」ともいうが、取材中に現在の入居者と会話する様子は楽しげである。
他人の生活が否応なしに見えてしまうシェアハウスだからこそ、周囲を気づかう必要があり、赤の他人と深く交流するチャンスもある。地元を離れ一人で見知らぬ世界に挑戦する者が移住生活の基礎を築く上で、シェアハウスは恵まれた環境といえそうだ。

きれいな浴槽

大野さんも太鼓判を押す、きれいな浴槽。

島本幸奈さん

インタビュー