福井県池田町 吉田 瑛さん
林業歴:5年
- 【よしだ あきら】福井県福井市生まれ。愛知県名古屋市の銘木屋で働き、木材を知っていくうちに林業へ興味を持つようになり、転職を決意する。
「次世代へつなぐ仕事」として
林業の世界に興味を持った
町土の約9割が森林という福井県池田町は、木や森を教材にした新たな価値創造と地域の活力向上を目指す「木望のまちプロジェクト」を進めるなど、林業と密接した地域である。吉田瑛さんはそんな池田町を拠点に活動している(株)木もくレンジャーズに所属し、日々林業に勤しんでいる。
『次世代に引き継がれていく仕事がしたい』という仕事への強い想いがあり、歴史的建造物に使われる木材を取り扱う愛知県名古屋市の銘木屋で働いていた吉田さん。「多種多彩な木材を扱っていたので木の知識を深められ、木って面白いな、と思うようになりましたね」と、銘木屋での経験が林業を志した大きなきっかけであったと振り返る。だが一方で、木材を仕入れて業者へ売るといった卸問屋的な業務に違和感を抱くようにもなっていった。
木に魅力を感じる中で自分のやりたい仕事について考えた時、「木を植え、手入れをし、育った木を切り、また植える」といった自然のサイクルを柱にした林業への興味関心が高まり、林業の世界へ飛び込むことを決断。就業へ向けて情報収集を始める。
就業先として林業の盛んな地域を模索する中、長男である吉田さんは福井県の実家へ戻ることも頭の片隅にあったという。そんな矢先、福井県林業就業相談会があることを知り、相談会に参加。「福井県に対して林業のイメージがなく、情報収集のために行ってみよう、というのが率直な気持ちでした」と話す。説明会で多くのブースで話を聞いて回り、最後に立ち寄ったのが木もくレンジャーズのブースであった。
「説明は長谷川浩代表が対応してくれたのですが、林業への熱い想いをいろいろと聞くうちに『なんか面白いところだな』と、木もくレンジャーズに興味が沸き、見学に行くことにしました」と、長谷川氏の熱意と魅力に感化され、現場へ見学に行くこととなった。現場では様々な作業を見てまわり、「やってみないと分からないな」と気持ちが高ぶると同時に、働いている人たちの雰囲気の良さに触れ、「ここで働きたい」と心が引き込まれていったという。この見学が契機となり、木もくレンジャーズの一員として林業者となった。
地域の手厚い子育て支援もあり
公私ともに環境に恵まれた
林業経験のないゼロからのスタートであった吉田さんにとって始めは苦労の連続であったが、今では “やりがい” の大きさが林業の魅力であると話す。
「林業は職人的なところがあり、経験や勉強した分だけ実力が身に付き、自分の成長が実感できる仕事です。これからもどんどん技術を身に付けていきたいですね。」 林業の魅力を日々感じている吉田さん。これまでの経験から林業を目指す人へ “理想だけで飛び込むのは危険” だと注意をうながす。
「就業前に抱いていた印象と違う部分が必ずあります。『林業をやりたい』という気持ちを一度抑え、しっかりと下調べをし、林業者から話を聞くなど、じっくりと考えて縁のあるところを探してほしいですね。」
現在は戦後に植えた木が伐期を迎え、人工林の手入れが必要となっているため、その伐採作業が主な仕事となっている。
「環境への影響を考慮し、バランスを取りながら伐採作業を進めていきたいです。さらに、将来はこれまでやったことのない植林や育林など、自然のサイクルを意識した林業もやっていきたいですね。また、木もくレンジャーズは地元の小学生に林業について授業をするなど、地域貢献も積極的に行っています。そういった地域貢献などの活動もより広げていきたいです。」
木もくレンジャーズで働き出した当初は福井市の実家から通っていたが、その後、結婚、出産を経て奥さんの実家がある池田町に移住。現在は1歳2か月の子供と家族3人で楽しい日々を過ごしている。
「池田町の魅力は自然に囲まれているところですね。その他にも『ママがんばる手当』など町独自の手当・補助金制度や子育て支援住宅を用意するなど育児支援も充実しています。こういった手厚い町のサポートは、私たちのように子供がいる家族は非常に助かっていますね。」
家族で移住する場合は仕事と同様に生活面の心配も大きく、フォローも重要になる。自治体のサポートにより家族で移住しやすい環境が整えられているのはうれしい。
林業の世界に飛び込み5年という節目を迎えた吉田さん。今後は新たに植林や育林に挑むなど、信念である『次代に引き継がれていく仕事』としてより林業の幅を広げ、さらなる飛躍を目指している。
↑木もくレンジャーズでは1年を通して伐期を迎えた木の伐採、出荷を行っている。伐採した木は月に3回ほど福井市内の市場で競りにかける。