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気付いた水を育む山の重要性 農業から林業に転向

山梨県北杜市 佐々木 勇一郎さん
(34歳)林業歴:10ヵ月

28歳まで自衛隊に勤務し、その後は東京都内に飲食店で店長として勤務していた佐々木さん。新型コロナウイルスのパンデミックで飲食業界の将来が見えなくなったことや、子供が産まれたことも重なり、山梨に移住することを決意した。

移住当初は農業に従事
水の重要性を知り林業に転向

子供がうまれたことを機に、食物に関心を抱き始めたという佐々木さん。農業(第一次産業)の大切さを知り、友人の紹介で山梨の野菜農家のもとで2回の研修を受けた後、2022年4月に北杜市に家族全員で移住する。移住に際して活用したのが北杜市の「地域おこし協力隊」による支援制度。単身者は60万円、夫婦での移住となると100万円が支給される。現在は子供も伴う場合は200万円が支給されるという手厚い制度だ。
移住当初、佐々木さんは環境保全型の農業で生計を立てようと考えていたが、食物の質を決めるのは、土はもちろん、水質が大きな要素を占めている事に気付く。奇しくも自宅近くに造林・伐採・フォレストプランナーとして様々な事業を展開する「株式会社 天女山」があることを知り、翌年9月、意を決して天女山の門を叩くことになる。

天女山は自宅から車で約15分。今後は木材加工品の販売も計画。

天女山では18名が勤務しているが、約半数が移住者だ。佐々木さんは3年間の研修期間中で、造林を行う部署に所属。春に苗木を植え、伐採は冬場に行う。ちなみに、今植えた苗木を伐採するのは50~60年先。林業は未来を創る仕事だと佐々木さんは胸を張る。
現在の給料は交通費としてガソリン代を含めた19万5000円(手取り金額)。これに作業内容に応じて手当が追加される。チェーンソーは1人1台が支給され、化学繊維入りの防護服や安全靴も併せて支給される。個人的に用意するものは、アンダーウェア地大容量の水筒ぐらい。勤務時間は7時~16時30分までだが、チェーンソーや草刈機を使うことも多く、体力だけでなく信念や仕事に対する情熱が無ければ続けられないそうだ。

自然に触れて過ごす休日
ただし、車は1人1台が鉄則

都内に住んでいた頃は子供が小さかったこともあり、休日は奥様の実家に行くことがほとんどだったというが、移住後は自然に触れたり、ショッピングモールに出かけるなど、行動範囲が広がったそうだ。都内在住時は車は所有していなかったが、北杜市では1人1台は当たり前。佐々木さんは軽トラを、奥様は佐々木さんが実家に残していたかつての愛車を再活用することで出費を抑えているとのこと。

移住してすぐに購入した軽トラが佐々木さんの移動手段。

移住に際し、最大の課題は家族の同意を得られるかどうかだ。佐々木さんの場合、北杜市は奥様が仕事で何度も訪れており、もともと移住候補の1つだったこともありすぐに快諾が得られた。奥様は転職せず、リモートワークで勤務を続けているという。
移住のための準備金は100万円ほど。決して潤沢ではなかったため、引っ越し費用を抑えるためにレンタカーのトラックで自力で家財道具を搬送。大型家電は引っ越し後に購入したが、ここで北杜市の支援金制度に大いに助けられたと佐々木さんは振り返る。移住の恩恵について伺うと「移住した事で仕事とプライベートの時間がしっかり切り離せるようになりました。また、都内にようにすぐに物が手に入らないので、色々な面で計画的に行動するようになりました」とも。
移住によって、家族との時間や気持ちにゆとりができた佐々木さん。北杜市の生活と林業を、心から楽しんでいる様子が伺えた。

春先から梅雨前は、苗木の植え付けを行う。

綺麗な土をしっかり掘り起こし、苗木を植えたら倒れない様にしっかり踏み固める。

佐々木さんが活用した支援策

移住者向けの地域おこし協力隊を活用

北杜市では、東京圏からの移住者に向けた支援金制度を実施中。単身者の場合は60万円、夫婦の場合は100万円。佐々木さんの時は100万円まで支給されたが、現在では子供がいる世帯には更に100万円が増額される。支援制度などは市のホームページなどで告知されているが、佐々木さんは当初支援のことを知らず、知り合いから教えてもらい支給を手にすることができたという。

準備資金は100万円
都内の家は40㎡でしたが、北杜市では平屋の戸建で110㎡(4LDK)。庭があるので車はそこに停めています。家賃は35,000円/月ですが、その中に2台分の駐車場代が含まれていると思うと格安です。ただし冬の寒さが厳しいため、暖房費などはかなり増えます。自治会費だけでなく神社の清掃などもあり、独自の風習がまだ残っているので、移住する場合はそういった事も心得ておいた方が良いでしょう。

山梨県立小須田牧場では、乗馬体験も可能!

移住前にかかった主な費用
・引っ越し(レンタカー/高速)…7万円
・荷造り用の小物…2万円
・2020年6月の農業体験交通費…1万円
・2020年12月の農業体験交通費…1万円
・自家用車輸送費(秋田→都内)…4万円
合計30万円
移住後にかかった主な費用
・軽トラ購入…25万円
・家電製品購入…25万円
・車の税金、保険代(2台分)…15万円
・暖房費(灯油)…5万円
・スタッドレス(2台分)…8万円
・仕事着やインナー…3万円
・交遊費…4.5万円
合計85.5万円