山や森で働きたいと思ったとき、現実的な選択肢として「林業の職に就く」ことが挙げられる。林業とは木材を採るために苗を植え、育て、伐採して収益をあげる事業だ。そして、貴重な森林資源を次の世代につなげていく仕事でもある。山林をもたない人が一から林業を始めることは、現実的には難しい。ほとんどの場合、森林組合や民間の林業会社で森林作業等に従事することになる。それには一定の技術習得が必要だが、そのための支援は、国や県や地域で用意されている。まずは林業労働力確保支援センターに相談してみよう。
まず、情報収集
- 全国森林組合連合会、都道府県林業労働力確保支援センターのホームページ等を見て、情報を収集する。
- 国や民間で開催する「就職フェア」の林業コーナーで説明を聞く。
- 求人誌やハローワークなどの情報をチェックする。
- 森林組合や民間の林業会社に問い合わせる。
☆都道府県林業労働力確保支援センターでは、随時相談を受け付けている。
行動を起こす
- 各都道府県の林業労働力確保支援センターに相談する。
- 全国森林組合連合会や地方公共団体などが行っている林業体験教室に参加する。
- 希望する地域が絞り込めたら直接森林組合や民間の林業会社に足を運んで話を聞く。
☆林業は、森林組合や民間の林業会社に就職するのが一般的。
いざ、森林作業へ
- 森林組合や民間の林業会社に就職。
- 「緑の雇用」事業を利用し研修生になる。
☆森林組合とは森林の所有者が組織する協同組合のこと。
☆就職後に研修を受けることができたり、研修費用の補助が受けられる都道府県もある。
林業就職活動フロー
緑の雇用とは?
「緑の雇用」とは、林野庁の補助を受けて全国森林組合連合会が実施する「緑の雇用担い手対策事業」のこと。林業の仕事は、苗木の植え付けから木材の伐採まで、多様な技術を身に付ける必要がある。そこで森林組合等の林業事業体に採用された人たちに対し、事業体を通じて支援を行うものだ。支援を受けるには「ハローワーク、林業労働力確保支援センター、学校など公的機関を通じて森林組合などの林業事業体に採用された者」という条件がある。
林業を営む組織とその仕事内容
森林組合
森林組合は森林所有者の協同組織で、現在、全国に約600組合ある。組合員が所有する森林を中心に、地域の森林資源の管理・運営を行うため、造林・育林、伐採の作業を請負う。また、地域特産の林産物販売など、経営の多角化を図っている組合もある。
民間の林業会社
民間の林業経営体は、個人規模の林家を含め全国で約8万ある。このうち、企業は約5千社。こうした企業に就職した場合は、造林や育林、林道などの環境整備、伐採等が仕事となる。また、木材の加工を専門に行う企業も林業に含まれる。
その他
農林水産大臣認定の資格となる森林インストラクターは、森林等に関する知識を広め、ガイドや野外活動の指導を行う。窓口は(社)全国森林レクリエーション協会。また、樹木医は農林水産省が認定した公益法人等が認定する公的資格。地域の樹木や樹林保護の研究や、診断・治療を行う。
森林作業のサイクル
森林作業って実際、どんなことをやるんだろう? 「枝打ち」や「下刈り」などは想像できても「間伐」といわれるとわからない人が多いのでは? ここでは、季節ごとに変わる作業の1年をわかりやすくイラストで紹介しよう。このなかで、植え付けと伐採は毎年行われるわけではなく、木を育てるための作業が森林作業のメインとなる。また、このほかに林道の整備や倒木の処理なども森林作業に含まれる。
①植え付け
苗木を一本一本植え付ける作業。主に苗木の根が活動を始める春に行われる。植林は、将来の森林を育てるという意味でも、公益性の高い作業である。現段階では、すべて手作業によって行われている。
②下刈り
梅雨から夏にかけ、苗木のまわりに生い茂る雑草を取り除く作業。木を健やかに育てるためには欠かせない作業だが、夏の暑いなかで行うため体力を必要とする。主に刈払機を使って行う。
③除伐
秋は除伐作業と枝打ちの季節。除伐とは、植え付けた苗木の生長を妨げるほかの樹木や、雪で曲がったり途中で折れたりして健全に生長しそうにない立木を取り除く作業のこと。
④枝打ち
より質の高い木材を生産するため、不要な枝を切り落とすのが枝打ち。太陽の光を充分に受け取ることができるようにするとともに、雑草を育て表土の流出も防ぐ不可欠な作業。
⑤間伐
木の密生を防ぎ、太陽の光を森林のすみずみまでいきわたらせ、健康な樹木が育つように間引きをする伐採を間伐という。枝打ち同様、長い時間をかけて栄養分を豊富に蓄えた表土が流されないようにするためにも重要だ。
⑥伐採(主伐)
住宅などの材料にする目的で、利用可能な大きさになった樹木を切り倒す作業。主伐ともいう。良質の木材を収穫するために、雨が少なく空気が乾燥している秋から春にかけて行う。
⑦造材・集材・搬出
造材は、間伐・伐採した木の枝を切り落とす「枝払い」と、決められた長さの丸太にする「玉切り」を行う作業を指す。チェーンソーを使って行われるほか、プロセッサなど大型の高性能機械を使うこともある。
間伐・伐採した樹木や造材した丸太を1カ所に集める作業が集材。