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新型コロナウイルス禍における 新規就農のあり方

全国新規就農相談センター 相談員 勝呂 一夫

世は、コロナ禍という長いトンネルに入って久しい。ワクチン接種が進んでいるとはいえ、いまだ感染の恐怖にさらされている。加えて、経済的不況は日増しに深刻になり、時短、休業、廃業、解雇等、身につまされる話題が連日メディアを騒がせている。厚生労働省が随時発表している「コロナ解雇者数」(新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について=6月11日現在集計分=)では、「解雇等見込み労働者数」が累計で10万6715人、そのうち「非正規雇用労働者数」が4万9637人となった。

◆コロナ禍での就農相談の現状

全国新規就農相談センターへの就農相談のきっかけはさまざま。従来からの一般的な動機は、「小さい頃からの農業の夢が膨らんで、いよいよ就農に着手しようと思う」「実家や配偶者の親が高齢化し経営を継承しなければならなくなった」「農地を相続ししばらく放置していたが、そろそろ就農を考えたい」など。
しかし、新型コロナウイルス感染症拡大という予期せぬ事態の出現のなか、突然の休業、リストラ等で再就職先として就農を考えるようになったという直接の動機、あるいはパート・アルバイト等の雇用先の選択肢が狭まり就農を考え始めた等の間接的動機に起因する相談が顕著に増えてきた。
一方、農業の世界を見ると、農業法人等の雇用就農求人状況は相変わらず堅調傾向にある。その要因は、以前からの慢性的な人手不足に加え、コロナ禍により外国人技能実習生が来日出来ていないことなどにもよる。この実習生の来日休止により作付面積を縮小する一大産地も出ているとの報道もあった。
ただ、当センターのホームページに掲載されている求人情報のうち、提示されている給与額はコロナ騒動が始まる前に比べ1割前後は減ったように感じるが、これも国全体のコロナ不況のあおりを受けてのことと思われる。
このコロナ禍に起因する相談件数は増加してきたが、一方で別の問題が出てきた。相談者の中には漠然とした就農希望地があるだけで、地方などの現地を知らない人も少なくない。しかし、生涯の就農の着地場所として選ぶとなると、まず現場を知らなければならない。
普段は、希望地の農業法人や自治体主催等の研修先に赴いて現地の実際を見てもらい、地元の農家等と意見を交わすよう促すのだが、このコロナ禍で状況が変わった。「東京やその他の大都市圏からの見学、来訪はご遠慮願いたい、コロナが落ち着いたらお受けします」というのである。都市部に比べて比較的感染者の少ない地方の人にとってみれば、感染のリスク回避はやむを得ないことである。そのため、コロナ禍の沈静化を待ちながらインターネット等による情報収集に専念するよう、アドバイスすることもしばしばとる。

◆相談形態の変化、オンライン相談など

新型コロナウイルス感染症拡大は、社会全体のこれまでの生活様式あるいはコミュニケーション手段を否応なく大きく変え、対面や三密を避け、リモートワーク、オンライン会議等が急速に普及してきた。
当然、当センターでの相談形態も変化した。通勤の自粛、対面相談の回避等で相談員の在宅勤務が余儀なくされた結果、対面相談を休止し電話相談、メール相談に限るようになったことから、昨年10月に新しい方式としてZoomアプリを活用したオンライン相談を試験的に実施した。最初の相談者はオーストラリア在住の日本人女性。近く帰国するので日本での就農のノウハウが知りたいとのことだった。良好な通信状態で、通常の対面相談同様なんの支障もなく相談を行えた。このオンライン相談、互いの表情もわかり画面に参考資料を映すことも可能で、工夫をすれば困難を乗り越えられることを学んだ。
翌11月からは当センターホームページ「農業をはじめる・JP」を更新し、オンライン相談の本格開始の周知と併せ、これまでの電話による相談申し込みに加え、同ページから希望者が24時間いつでも申し込めるようにした。また、都道府県新規就農相談センターや市町村でもオンライン就農相談に対応するケースが増えてきている。

◆オンライン相談の事前準備など

オンライン相談について事前の準備はというと、まず受信できる機材を用意する必要がある。それがパソコンであれスマートフォンであれ、事前にZoomアプリをダウンロードして相互通信に備えなければならない。また、カメラ機能、マイク機能がないパソコンはそれらの機能を果たす機材を追加設置することになる。
また、対面相談と違って少々不便なのは、関連資料や冊子を直接手渡しできないこと。当センターでの対面相談の際には約50ページの「就農案内読本」を提供し、当冊子に盛り込まれた内容に即して就農の説明、相談に応じているので、オンライン相談予約者には事前に当冊子を郵送するか、当センターホームページ「農業をはじめる・JP」の画面から当冊子のデータを事前にダウンロードして用意してもらうことをお願いしている。

◆新規就農者に向けた支援策、アドバイス

当センターが調査した「新規就農者の就農実態調査結果(2016年)」によると、「就農時に苦労したこと」の第1位は「農地の確保」で7割を超え、ほぼ同じ割合で「資金の確保」が並ぶ。やはり農業に適した優良な農地の確保の困難さ、初期投資を含めた運営資金の確保は切実な問題である(下のグラフは「就農案内読本2020」18ページに紹介している「新規就農者が就農時に苦労したこと」(グラフ)。
農地の取得には、全国農業会議所が運営する「全国農地ナビ」からの情報収集や自治体の農政所管課、農業委員会等の農地情報を活用するとよい。また、資金の確保については、認定新規就農者に対して「青年等就農資金」や「農業近代化資金」、「経営体育成強化資金」等の有利な融資制度があるので、返済計画をきちんと立てたうえで活用することが望ましい。
同「読本」では、「就農時の資金借り入れの状況」表の調査結果なども紹介している(同ページ)。
近頃、「少量多品目の野菜栽培がやりたい」と、インターネット等での情報をもとに希望を持ち込む相談者も増えてきた。昨今の多様な消費動向からすれば、たしかに一つの経営モデルではあるが、現実はそう簡単ではない。
一つの品目の習熟度を最高の状態に高めようとすると、かなりの年月を要する。栽培品目が増えれば、当然その労力は倍加していく。また、種類が多いと袋詰めなどが何通りにもなり、それに費やす労働時間は増大していき過重労働になりかねない。よって、相談者へは「はじめは数品目ぐらいから始めて、栽培技術も確立し販路が十分に確保できるようになってから品目を増やしていったらいかが」などとアドバイスしている。

◆新規就農相談センターのご案内

当センターの相談場所は以下の2カ所。このうち、「全国新規就農相談センター」は平日の午前10時から午後5時までで、2時間単位の予約が可能。申込み方法は、当センターホームページ「農業をはじめる・JP」から、電話相談、対面相談、オンライン相談等の種類を随時選択できる。また、メール相談も随時受け付けている。
一方、「移住・交流情報ガーデン」の受け付けは随時で、直接、当施設への来訪が原則となる。
これから就農を考える方、すでに就農に向けて行動を起こしている方など、さまざまな場面で判断に迷うことが少なからずあるだろう。そんなときはぜひ、当センターや最寄りの都道府県農業会議(同農業公社)、市町村農業委員会などに、それぞれの都合に合わせた方法で気軽に相談していただきたい。

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