移住がきっかけで働き方が大きく変わる人は多い。だが、新たな環境を求めて「いざ開業だ!」と意気込んでいる人はちょっと待ってほしい。移住先で自営業の道を歩むのか、雇用の道を歩むのかは非常に重要な選択だ。
自営業は自由になんでもやれる一方でリスクも大きい。自然の中で安定した生活を送りたいのであれば、雇用という働き方も視野にいれておくべきだ。理想のライフスタイルを実現するにはどうすればよいか、広い選択肢から比較・判断できるようにしておこう。
今回は、雇用によって移住を成功させた3人の声を聞いてみた。
安定を求めるなら雇用 求人数は増加傾向
自営業と雇用を比べてみると、さまざまな点で対照的だ(表1)。自営業は、自由度が高く、収入も青天井な一方で、あらゆる責任を自分で負わなければならず、相当な覚悟を問われることになる。
雇用は、リスクを抑えて始めることができ、収入や休日を安定して得られることがメリットだ。
どちらも一長一短だが、一次産業に初めて取り組む人や、リスクをとることに抵抗感がある人は、雇用が現実的な選択肢となる。
一次産業のハローワークの求人状況を見てみると、直近10年の有効求人倍率は上昇傾向いにある(表2)。平成24年度は0.82であったが、その後は右肩上がりで、平成30年度には1.58まで上昇した。その後は、新型コロナウイルス禍の影響を受け、求職者数がやや増加し、令和3年度が1.30となっている。
一昔前と比べると、有効求人数は大幅に増えており、全国で一次産業の担い手が不足していることや法人の従業員採用が一般的になってきていること等が読み取れる。
地方移住に関心がある人からすると、こうした状況はチャンスだと言える。仕事探しは移住の最大の課題の一つだが、無理に独立就農しなくでも、雇用によって、移住を成功させる道がより一般的になってきている。
就職までのおおまかな流れ
1 求人やガイダンス等の情報収集
情報収集の手段は、大きく分けてウェブサイトの活用と相談窓口(16~20頁参照)やハローワークなどの訪問の2つ。
まずは手軽にアクセスできるウェブサイト上で、求人情報、ガイダンス、支援情報などを確認してみよう。諸ライ的なビジョンがイメージできてきたら相談窓口やハローワークでより具体的なアドバイスを受けることができる。
▼農業をはじめる.JP
https://www.be-farmer.jp/
▼「緑の雇用」RINGYOU.NET
https://www.ringyou.net/
▼漁師.JP
https://ryoushi.jp/
▼マイナビ農林水産ジョブアス
https://jobearth.mynavi.jp/
2 インターンシップやフェアの参加
「新・農業人フェア」「森林の仕事ガイダンス」「漁業就業支援フェア」などに参加したり、インターンシップで実際に仕事を体験してみよう。フェアやインターンシップの情報は①のウェブサイトや相談窓口から入手できる。より実践的な経験を積みたいのであれば、一次産業の専門学校でノウハウを学んだり、先進的な法人の元で研修を受けるケースもある。
3 応募
求人サイトやハローワークから求人に応募しよう、応募の際は、就業形態や仕事内容をよく確認しておくこと。全国農業図書の「農業の雇用シリーズ」は、「①従業員採用」「②労務管理」「③労働保険・社会保険」「④就業規則」「⑤給与計算」「⑥人事評価制度」の6冊をそろえており、これから就業する人にも参考になる内容となっている。
4 就職
就職後、最初の数カ月は試用期間となる場合もあるので気を抜かないようにしよう。雇用期間中に培った経験を活かして、その後の独立するケースも多い。法人によっては、独立を支援してくれることもあるので、何年か先の独立を見据えてまずは雇用ではたらいてみるのも一つの選択肢だ。
移住の前に支援制度をチェックしよう!
上記で紹介したウェブサイトでは、一次産業に就業する際の支援制度が紹介されているが、移住者に対しての支援もある。事前に移住相談窓口を訪問して、受けられる支援制度を整理しておこう。ここでは、知っておきたい制度の一例を紹介する。
①移住支援金(世帯:最大100万円、単身:60万円)
東京23区に在住または通勤する方が、東京県外へ移住し、企業や就業等を行う方に、都道府県・市町村が共同で交付金を支給。
②企業支援金(企業に要した経費の1/2、最大200万円)
地域の課題に取り組む「社会性」「事業性」「必要性」の観点をもった企業など(社会的事業)を支援、
※移住支援金・企業支援金の詳細は「内閣官房・内閣総合サイト地方創生」を参照。(https://www.chisou.go.jp/sousei/index.html)
③自治体ごとの支援制度
全国の自治体ごとに、移住者への応援金や住宅補助、結婚・子育てに関する支援など、さまざまな制度がある。
JOIN((一社)移住・交流推進機構)ウェブサイトでは、自治体ごとの支援制度を簡単に検索できる。(https://www.iju-join.jp/support_search/index.html)