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農園歳時記

第19回 無事是迷馬

今年から介護保険料を払う身となった。年額で五万円ちょっと。そうかまた出費が増えるかぁ、という経済意識もあるが、それより、そんなトシになってしまったかぁという思いの方が、役所からの通知を受け取った時には強かった。五反の畑と平屋の小さな家を買ってここに移り住んだのは三十七歳だった。気がついたら介護保険料を納めるトシになっていた。「還暦」は無意識に通り過ぎたが介護保険は妙にインパクトが強い。「介護」の二文字のせいか。
百姓暮らしは健康が必須。スコップと鍬だけで全てを行う前近代的な農法をなす僕の場合はそうである。指一本の怪我とて、たちまちにして作業能率を低下させる。まして、どこか臓器に疾患が生じ、重い物も担げなくなったらアウトだ。

世に「愛車」という言葉がある。告白すれば、免許取得二十五年、僕はまだ洗車やワックス掛けをしたことがない。ホンダの車は仕事場を兼ねる。チャボは出入り自由で卵を産む。時には糞を落とす。よって臭い(らしい)。おなごを駅まで迎えに行くとずっと息を止めている。憤激ならぬ糞激で、助手席では半分腰を浮かせている。うちに到着する頃の彼女はヨレヨレだ。男の僕にヨレヨレなら嬉しいが、ずっと息を止めていたゆえの酸欠状態でヨレヨレ。熱い吐息も聞こえる。
僕には車への愛が欠けている。よって「哀車」か。でも自分のメンテナンスはする。毎朝ランニングする。サイクリングもする。我が体のオイルチェックやタイヤ点検を欠かさない。自己愛? そう人は問う。そうであるならば愛車じゃなく「愛人」ということになりますね?いや、いくらなんでも愛人はない。自己愛と言うより自己責任ですネ……。
この原稿は五月半ばに書いている。その今が、おそらく一年で最も快適である。空気の爽やかさだけなら秋にもある。しかし、萌え盛る青葉に包まれ、果樹も野菜も、燦々たる光に包まれ、これから実りの時に向かうのだという期待感、それが僕の意識の中で五月という月を一年の横綱とする。

「君は五月の薔薇」という恋唄が昔あった。薔薇に限らず、我が五月の風景に僕は熱い恋情を抱く、その恋情が最近、強くなった。トラック競技なら第四コーナーを曲がるところ、マラソンなら三十五キロ地点を過ぎたあたりにオレの人生はある――そんな想いがジワリ生じてきたせいか。そして、咲き誇る薔薇を見てこうも思う。この先、なるべく長く、この風景を楽しめるよう努力しなくちゃ。

介護保険料はどのように算定されるのか。自治体によってかなりの違いがあるのはなぜか。事情は単純らしい。介護施設を利用する要介護者が多ければ保険料は高くなる。ゆえに国は施設入居でなく在宅介護を推奨する。また自治体は「保険に頼らないためにも、いつまでも強い体でいてもらうことが一番」と、高齢者向けの運動教室を開くところもあるらしい。
高齢者はこの先どんどん増える。保険財政は逼迫するという。ならば、せめて、ここらで世のお役に立ちたい。会社員としても農業者としても、僕はずっと駄馬だった。名馬には遠かった。それでも歯科以外で健康保険証を使ったことがないのはほめてもよいか。「悔悟」多きこれまでだったが、介護で人の手を煩わせたくはない。

労働すれば筋肉が出来る、と同時に腹が減る。減った腹は我が作物で満たす。作物で得たエネルギーをまた労働に使う。名付けて「循環型持続可能性型職業」。百姓稼業はもしかしたら介護に一番遠いかもしれないと僕は期待するのである。  最近雑誌の取材があり、インタビューを受けた。僕はこう口にした。有機農法とか自然農法とかの実践者は健康でなくてはいけないと思うのです……健康を売りものにする生産者が健康でなかったら言行不一致だと僕は考えるのである。

●プロフィール
中村顕治【なかむら・けんじ】昭和22年山口県生まれ。33歳で築50年の農家跡に移住。現在は千葉県八街市在住。典型的な多品種少量栽培を実践。チャボを庭に放任飼育する。ブログ「食うために生きる─脱サラ百姓日記」
http://blogs.yahoo.co.jp/tamakenjijibaba

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