島根県飯南町 中野 良介さん
(47歳)農業歴:10年
- 【なかの りょうすけ】兵庫県出身。前職は食品卸の営業。平成23年に妻と2人の子と共に飯南町へ移住。2年間の研修を経て「中野あおぞら農園」として独立就農。主にパプリカの栽培を行う。
田舎で農業は家族の夢
補助を活用して初期費用を抑える
飯南町は広島県との県境に位置し、標高450mの高原地帯だ。手厚い移住支援や子育て支援により、「2024年版 住みたい田舎ベストランキング(宝島社)」の子育て世代部門において全国第1位に輝いている。
平成26年に飯南町で独立就農し、現在は研修生を積極的に受け入れる中野さんに、移住に必要なお金や受けた支援について伺った。
もともと兵庫県神戸市でサラリーマンをしていた中野さん。奥様は早くから田舎で農業をやりたいという気持ちがあったものの、中野さん自身はそこまで田舎暮らしに興味はなかったそう。ところが、30代半ば頃から中野さん自身も田舎暮らしに魅力を感じるようになり、移住を検討し始める。情報収集の手段はもっぱらインターネット。移住支援を調べていくうちに、飯南町と出会った。
手厚い支援が特徴の島根県でも、飯南町の支援は特に際立っている。0歳から18歳までの医療費は無料、住宅取得への支援もある。間取りや内装、外装を選択したセミオーダーの新築住宅を25年間賃貸(家賃4万円/月)すると、土地と建物の所有権が譲渡されるという驚きの制度だ。中野さんもこの制度を活用し、3LDKの平屋を賃貸している。
現在は12棟のハウスをリースし、そのうち10棟でパプリカを栽培している。飯南町には整備された園芸用ハウスをリースする事業があり、中野さんは12棟のハウスを年間約100万円でリースしている。このハウスは、もともとあったものではなく、中野さんの要望に沿って新たに町が建設したものだそう。
「この制度のおかげで、かなり初期費用が抑えられました」とのこと。
移住当初は町の研修制度や国の補助制度を活用して、生活費を賄っていた。住居費や初期費用は補助があったものの、やはり他の部分で出費がかさみ、当初は大変だったようだ。
「農機具の購入にトータルで100万円以上かかりましたね。想定外の出費は光熱費。飯南町は標高が高く、ゲレンデもあるくらい冬は雪が降ります。5月でも朝と夜はストーブが必須です。」
移住を検討している方へのアドバイスは、「ある程度、産地化しているところに就職し、その作目を栽培するのがおすすめ」だそう。販路もしっかりしているため、収入の目途が立てやすくなるそうだ。
飯南町のパプリカを全国へ
中野さんの今後の目標は、飯南町をパプリカの町にすること。「もう達成されつつあるんですけどね」と言うのもそのはずで、大阪市中央卸売市場に
おいて夏秋パプリカは飯南町産が取り扱い量の首位となっている。これは中野さんをはじめとするパプリカ農家が町とJAに積極的な出荷を働きかけてきた結果だ。また、中野さんは研修生の受け入れも行っており、今まで3名が卒業して飯南町でパプリカ農家として独立している。まさに「パプリカの町の立役者」である。
※当時のものです。現在の支援制度はホームページ等でご確認ください。
・農林漁業定住研修制度
支援金を受給しながら農林業の研修を受けられる飯南町の制度。移住~研修修了までに2年間、月18万円を受給。
・青年就農給付金制度(現在は経営開始資金)
次世代を担う農業者となることを志向する49歳以下の方への国の支援策。独立就農から6年間、年間225万円を受給。
・園芸リースハウス事業
・定住促進賃貸住宅(セミオーダー)
移住前に住んでいた家が持ち家だったため、売却した利益を準備資金に充てました。ただ、ガソリン代や光熱費が想定以上にかさみ、最初はカツカツでしたね。
移住当初は町の借り上げ住宅に住んでおり、敷金・礼金はかかりませんでした。
車はもともと1台所有していましたが、夫婦別で動くことも多くなったので、移住2年目に新たに1台購入しました。独立就農時に軽トラも購入したので、現在は計3台保有しています。
飯南町に移住の場合、家族4人の生活費は30万円を想定しておけばいいんじゃないかな。単身の場合は15万円くらいだと思います。
・下見…5万円
【内訳】・交通費(ガソリン代/高速) 4万円
・宿泊費 1万円
(1回は飯南町のお試し住宅、2回目はホテルに宿泊)
・引っ越し代…40万円
合計45万円
・軽トラ購入…75万円
・自動車購入…125万円
・スタッドレス…5万円
・農機具購入…115万円
・仕事着購入、名刺作成等…5万円
・その他諸費用…10万円
合計335万円